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25_俺を好きだと言ってくれた人間について②(レヴィウス視点)
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「シルフィアちゃんがいなくなってから少し経ったね。レヴィウスくんは元気かなって思って見に来ちゃった」
城を訪れたのはミロワールだった。
魔族の領主を公的にもてなすときは、前もって準備が必要だ。
今回は何も聞いておらず、使用人たちも城を留守にしていた。だから追い返そうと考えたが、「今日はプライベートで来たようなものだから」とミロワールが主張したため、特例で個人的に城に入れることに決めた。
丁度ミロワールに聞きたいこともあったから、俺にとっては好都合だった。
応接用の間にミロワールを通して茶を出す。
一通りの挨拶を交わした後、ミロワールは「人間の記録がある部屋を見たい」と言い出した。
「アドラー家がかつて人間と交流していたなら、その頃に受け取った人間の道具とか、人間との交流の記録とかあるんじゃない? それを見せて欲しい。生の記録を見れるなんて貴重だからね」
「断る」
「え、駄目なの? なんだ。これに協力してくれたら、僕もレヴィウスくんと同じく、人間と魔族との融和について本腰を入れて調べようと思ってたんだけどな」
「……わかった。その部屋から必要な記録を取ってくる。貸し出しをしても構わない」
「え、いいの? やったー。でも、そこまでするのに部屋には入れてくれないんだ?」
「あの部屋は……シルフィアと共に過ごした部屋なんだ。他の者を入れようとは思わない」
人間にまつわるものを仕舞った部屋……父ゴルディウスの部屋は、なるべく以前シルフィアが入ったままの状態にしてある。そうすれば彼女の様子を克明に思い出せるから。
そう言うと、ミロワールは肩を竦めて言った。
「レヴィウスくん、元気になった訳じゃなさそうだ。ずっとシルフィアちゃんのことを引きずっているんだね」
「引きずる……? 完全に交流が途切れた者相手ならともかく、これからも付き合いが続く相手に対してその言葉を使うのは適当ではないな」
「え、そうなの? シルフィアちゃん側から何か連絡がきたってこと?」
「そうではない。だが……ミロワール。考えてもみろ」
「なに?」
「魔族会議で決まったことは、【人間を魔族の住処に住まわせない】ことだ。【魔族が人間界に行く】こと自体は問題とされない。そうだろう?」
俺の言葉に、ミロワールは少し沈黙してから頷いた。
「……確かにそうだね。魔族と人間が接すること自体はあの会議で禁止しなかった。人間界で騒ぎを起こさないように、魔族としての姿を隠すとかそういう対応は必要だろうだけど、それさえクリアしていれば自由に会いに行けるのか」
「俺は変装魔術に心当たりがある。もう少し練習すれば、人間と相違ない姿に出来るはず。そうすれば、シルフィアに会いに行ける」
「いいなー。僕も変装魔術を練習してシルフィアちゃんの住んでるとこに遊びに行きたいな」
「お前は駄目だ。人間界は今、気温が下がる季節だからだ」
「……あぁそうか。僕には適さない季節か……」
蛇の魔族は気温の低下に弱い。ストレイウス家の領地は温暖な土地故に蛇にとっては過ごしやすい気候になっているが、人間界の寒さは蛇の活動能力を奪うのだ。
ミロワールは悔しそうにうめき声を出しながら言った。
「魔族会議が終わった後もなんやかんやとやらないといけない作業が出てきて、領地から暫く出なかったけど、こんなことならさっさと人間界に遊びに行けば良かったよ」
「残念だったな。まあ……蛇に適した季節だとしても、お前をシルフィアに会わせようとは思わないが。シルフィアが怯えてしまうかもしれない」
「えー? でもさ、それはレヴィウスくんも同じじゃない? 今は人間界で暮らしてるのに、急に会いに行ったらシルフィアちゃんはびっくりするでしょう」
「驚くだろうが、喜んでもくれるはずだ。シルフィアは俺のことを好いているからな」
「え、そうなの? シルフィアちゃんはレヴィウスくんのことが好きだったってこと?」
驚いた様子のミロワールに、俺は頷く。
――こういうことを言うのは少々気恥ずかしいような気もするが、ミロワールがシルフィアにちょっかいを出さないようにある程度牽制しておきたかった。だから言うことにした。
「ああ、そうだ……。初めて会ったときから俺を気に入ったらしく、城で働きたいと言われた。そして、城で一緒に過ごしているともっと好きになったと――シルフィアはそう言っていたな」
「ははあ。生贄にされた立場なのにレヴィウスくんのことを好きになっちゃったんだなあ。ひと目で気に入られるなんて、やるねえ。そういえば魔族会議の日もレヴィウスくんのことを遠巻きに見てる魔族もいたな。魔族間でも見た目から入ることはあるんだから、人間が魔族に一目惚れするというのもありうるのかもね」
そうなのか。
――だが、他の魔族に気に入られるのは俺にとってはあまり意味の無いことだ。
シルフィアが俺を好いてくれるのならばそれで良かった。
魔族が俺に対して良い印象を持ってくれているなら、俺が提案する人間と魔族の融和案についても賛成する可能性が高く、それは好都合ではあるが。
そう伝えると、ミロワールは興味深そうに言った。
「魔族会議でも言ってたね。シルフィアちゃんを高い地位で城に迎えてあげたいって。つまり婚姻に近いことをするつもりなのかい。人間をペットとして迎えるだけなら、今の状況でも城に住まわせることは出来たかもしれないのに?」
「シルフィアは俺を一身に慕ってくれた。俺は彼女の気持ちに応えたい。そのためには正式な作法でアドラー家に迎えるのが一番だろう」
「はあ……」
「シルフィアにはまだ伝えられていないが、会いに行っておいおい伝えるようにする。まだ魔族は人間を認めていないようだが……奴らに無事に認めさせることが出来たら、改めて婚姻の儀を挙げよう」
「――ねえ、レヴィウスくん」
思案げに言葉を聞いていたミロワールが、目を細めて俺に言葉をかける。
「レヴィウスくんのやりたいことは大体わかった。で――これは僕のちょっとした好奇心で聞きたいんだけどさ」
「何だ?」
「シルフィアちゃんの方からレヴィウスくんに話しかけてきたことって、今までどれくらいあったの?」
城を訪れたのはミロワールだった。
魔族の領主を公的にもてなすときは、前もって準備が必要だ。
今回は何も聞いておらず、使用人たちも城を留守にしていた。だから追い返そうと考えたが、「今日はプライベートで来たようなものだから」とミロワールが主張したため、特例で個人的に城に入れることに決めた。
丁度ミロワールに聞きたいこともあったから、俺にとっては好都合だった。
応接用の間にミロワールを通して茶を出す。
一通りの挨拶を交わした後、ミロワールは「人間の記録がある部屋を見たい」と言い出した。
「アドラー家がかつて人間と交流していたなら、その頃に受け取った人間の道具とか、人間との交流の記録とかあるんじゃない? それを見せて欲しい。生の記録を見れるなんて貴重だからね」
「断る」
「え、駄目なの? なんだ。これに協力してくれたら、僕もレヴィウスくんと同じく、人間と魔族との融和について本腰を入れて調べようと思ってたんだけどな」
「……わかった。その部屋から必要な記録を取ってくる。貸し出しをしても構わない」
「え、いいの? やったー。でも、そこまでするのに部屋には入れてくれないんだ?」
「あの部屋は……シルフィアと共に過ごした部屋なんだ。他の者を入れようとは思わない」
人間にまつわるものを仕舞った部屋……父ゴルディウスの部屋は、なるべく以前シルフィアが入ったままの状態にしてある。そうすれば彼女の様子を克明に思い出せるから。
そう言うと、ミロワールは肩を竦めて言った。
「レヴィウスくん、元気になった訳じゃなさそうだ。ずっとシルフィアちゃんのことを引きずっているんだね」
「引きずる……? 完全に交流が途切れた者相手ならともかく、これからも付き合いが続く相手に対してその言葉を使うのは適当ではないな」
「え、そうなの? シルフィアちゃん側から何か連絡がきたってこと?」
「そうではない。だが……ミロワール。考えてもみろ」
「なに?」
「魔族会議で決まったことは、【人間を魔族の住処に住まわせない】ことだ。【魔族が人間界に行く】こと自体は問題とされない。そうだろう?」
俺の言葉に、ミロワールは少し沈黙してから頷いた。
「……確かにそうだね。魔族と人間が接すること自体はあの会議で禁止しなかった。人間界で騒ぎを起こさないように、魔族としての姿を隠すとかそういう対応は必要だろうだけど、それさえクリアしていれば自由に会いに行けるのか」
「俺は変装魔術に心当たりがある。もう少し練習すれば、人間と相違ない姿に出来るはず。そうすれば、シルフィアに会いに行ける」
「いいなー。僕も変装魔術を練習してシルフィアちゃんの住んでるとこに遊びに行きたいな」
「お前は駄目だ。人間界は今、気温が下がる季節だからだ」
「……あぁそうか。僕には適さない季節か……」
蛇の魔族は気温の低下に弱い。ストレイウス家の領地は温暖な土地故に蛇にとっては過ごしやすい気候になっているが、人間界の寒さは蛇の活動能力を奪うのだ。
ミロワールは悔しそうにうめき声を出しながら言った。
「魔族会議が終わった後もなんやかんやとやらないといけない作業が出てきて、領地から暫く出なかったけど、こんなことならさっさと人間界に遊びに行けば良かったよ」
「残念だったな。まあ……蛇に適した季節だとしても、お前をシルフィアに会わせようとは思わないが。シルフィアが怯えてしまうかもしれない」
「えー? でもさ、それはレヴィウスくんも同じじゃない? 今は人間界で暮らしてるのに、急に会いに行ったらシルフィアちゃんはびっくりするでしょう」
「驚くだろうが、喜んでもくれるはずだ。シルフィアは俺のことを好いているからな」
「え、そうなの? シルフィアちゃんはレヴィウスくんのことが好きだったってこと?」
驚いた様子のミロワールに、俺は頷く。
――こういうことを言うのは少々気恥ずかしいような気もするが、ミロワールがシルフィアにちょっかいを出さないようにある程度牽制しておきたかった。だから言うことにした。
「ああ、そうだ……。初めて会ったときから俺を気に入ったらしく、城で働きたいと言われた。そして、城で一緒に過ごしているともっと好きになったと――シルフィアはそう言っていたな」
「ははあ。生贄にされた立場なのにレヴィウスくんのことを好きになっちゃったんだなあ。ひと目で気に入られるなんて、やるねえ。そういえば魔族会議の日もレヴィウスくんのことを遠巻きに見てる魔族もいたな。魔族間でも見た目から入ることはあるんだから、人間が魔族に一目惚れするというのもありうるのかもね」
そうなのか。
――だが、他の魔族に気に入られるのは俺にとってはあまり意味の無いことだ。
シルフィアが俺を好いてくれるのならばそれで良かった。
魔族が俺に対して良い印象を持ってくれているなら、俺が提案する人間と魔族の融和案についても賛成する可能性が高く、それは好都合ではあるが。
そう伝えると、ミロワールは興味深そうに言った。
「魔族会議でも言ってたね。シルフィアちゃんを高い地位で城に迎えてあげたいって。つまり婚姻に近いことをするつもりなのかい。人間をペットとして迎えるだけなら、今の状況でも城に住まわせることは出来たかもしれないのに?」
「シルフィアは俺を一身に慕ってくれた。俺は彼女の気持ちに応えたい。そのためには正式な作法でアドラー家に迎えるのが一番だろう」
「はあ……」
「シルフィアにはまだ伝えられていないが、会いに行っておいおい伝えるようにする。まだ魔族は人間を認めていないようだが……奴らに無事に認めさせることが出来たら、改めて婚姻の儀を挙げよう」
「――ねえ、レヴィウスくん」
思案げに言葉を聞いていたミロワールが、目を細めて俺に言葉をかける。
「レヴィウスくんのやりたいことは大体わかった。で――これは僕のちょっとした好奇心で聞きたいんだけどさ」
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「シルフィアちゃんの方からレヴィウスくんに話しかけてきたことって、今までどれくらいあったの?」
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