告発のメヌエット ~ 貴族社会に挑む母と娘の物語 ~

竹笛パンダ

文字の大きさ
46 / 96
偽りの舞台

第45話 証拠(1)

しおりを挟む
 エリックは帝都の運送業組合に預けられていた「かわいそうな馬」とビックスの荷台を引き取った。
 ケイトの手続きが終わり、新たな主人を得た馬と、組合の倉庫に眠っていた荷台を運ぶためだ。

「あんちゃん、俺が面倒を見ていたんだ。」

 組合で馬の世話をしている小姓がエリックに駄賃をせびった。

「いいだろう、ハイマー商会の大旦那様がお前には特別に駄賃を預かってきているからな。」

 そう言って小銀貨5枚を手渡した。

「すげえよあんちゃん、俺、こんなにもらっていいのか?」

「ああ、大旦那様が『優しい子もいるものだ。』と褒めていたからな。
 遠慮なくもらっておけ。」

「うん、ありがとう。
 今度商会の馬が来た時には俺がちゃんと面倒を見てやるよ。」

「ああ、頼んだぞ。
 そうだ、ついでに聞いてもいいか?」

「うん、俺の知っていることならなんでも話すぜ。」

「この荷馬車なんだが、ここに預けられた経緯を知っているか?
 例えば誰に頼まれたとか、どこから引き取ったとか。」

「それなら、巡回警備の隊長さんって親方が言ってたぞ。
 ダイス先生のところに空の荷馬車があるから組合で預かってくれって。
 荷物を帝都まで運んで、そこから依頼人にところへ運ぶときに、荷物の入れ替えが大変だから、荷馬車ごと借りて運ぶときもあるぜ。
 そんときゃ空の荷馬車を引きとっておけば、
後で持ち主が取りに来て、手間賃をもらえるんだ。」

「ほう、それじゃこの荷馬車は持ち主が現れなかったんだな。」

「そうさ、荷台をつなぎっぱなしじゃ馬がかわいそうだから、荷台から外して馬の面倒を見ていたんだ。
 ビッグスという親方が帝都にいるから取りに行くはずだって。」

「でも結局取りに来なかった。」

「どうせ飲んだくれて忘れちまったんだろうと思ったけどよ、ずっと取りに来ないんだよ。
 こいつが捨てられちまったかと思って、かわいそうになってな。
 おいらが面倒を見ていたんだ。」

「そうか、それはいいことをしたな。
 それじゃこいつは引き取っていくぜ。」

「ああ、元気でな。
 ちゃんと飯食うんだぞ。」
 
 小姓は馬の鼻先を軽く撫でてそう言った。

 商会に戻ったエリックは、早速荷馬車を点検した。

「馬の健康は良し、特に変わったところもないな。
 今日からここがお前の家だ。安心していいぞ。」

 馬を荷馬車から解放して厩に連れて行き、十分に水と飼葉を与えて休ませた。

「お次はこれだな。」

 そう言って荷馬車に不具合がないか点検していると、
 ダッシュボードの隙間に何かが挟まっているを見つけた。

「なんだ、これ。」

 注意深く見ると、封筒が差し込まれていた。
 今にもちぎれそうだったので、注意深く引き出し、そのまま執務室へ持って行くことにした。

 私は父とコレットブランドの販売方法について父と打ち合わせをしていた。
 そこへトーマスとエリックが入ってきた。

「旦那様、荷馬車の引き受けをしてまいりました。
 先ほど荷馬車を点検していた時に、この封筒を見つけました。
 ダッシュボードの隙間に挟まっていたのですが。」
 
 そう言って白い紙に乗せられた封筒をテーブルの上に置いた。
 その封筒には封がされておらず、手で簡単に開けることが出来た。
 中には折りたたまれた紙が1枚入っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

後宮の偽花妃 国を追われた巫女見習いは宦官になる

gari@七柚カリン
キャラ文芸
旧題:国を追われた巫女見習いは、隣国の後宮で二重に花開く ☆4月上旬に書籍発売です。たくさんの応援をありがとうございました!☆ 植物を慈しむ巫女見習いの凛月には、二つの秘密がある。それは、『植物の心がわかること』『見目が変化すること』。  そんな凛月は、次期巫女を侮辱した罪を着せられ国外追放されてしまう。  心機一転、紹介状を手に向かったのは隣国の都。そこで偶然知り合ったのは、高官の峰風だった。  峰風の取次ぎで紹介先の人物との対面を果たすが、提案されたのは後宮内での二つの仕事。ある時は引きこもり後宮妃(欣怡)として巫女の務めを果たし、またある時は、少年宦官(子墨)として庭園管理の仕事をする、忙しくも楽しい二重生活が始まった。  仕事中に秘密の能力を活かし活躍したことで、子墨は女嫌いの峰風の助手に抜擢される。女であること・巫女であることを隠しつつ助手の仕事に邁進するが、これがきっかけとなり、宮廷内の様々な騒動に巻き込まれていく。

処理中です...