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偽りの舞台
第43話 行方
しおりを挟む今日はとても忙しい一日になった。
子供たちが学校から帰宅して、一緒に昼食をとった後、ケイトが子供たちにお菓子を持って来てくれた。
子供たちにはお茶の時間を一緒に過ごす約束をし、わたしとケイトは父の執務室で話をした。
「すまないね、忙しいときに呼び出してしまって。」
「いえ、荷下ろしは済みましたので、あとは帰るだけでしたから。」
「実はね、ケイト、お願いがあるのよ。ここの運送組合に『かわいそうな馬』がいるって話、知ってる?」
「ええ、それがどうかしたの?」
「どうやらそれがビッグスの荷馬車らしいの。ふつうは帰りに荷物を積んでエダマに帰るのだけれども、全くそれがないようで、ずっと小姓が世話をしているって話よ。」
「それは馬にもかわいそうなことをしたな。知っていれば引き取ってあげたのに。」
「それでね、その馬をケイトのところで引き取ってほしいのよ。そしてその荷馬車をうちの商会専属にしてしまえば、ここでお世話ができるでしょう?」
「ああ、なるほどね。
それで……肝心のビッグスの行方は分かったのかい?」
「噂では、収容所へ送られたとか言われているけれども、確かめようがないもの。
それにあの日のことを話してくれるかどうかわからないわ。」
「よし、わかった。エダマに戻って引き取りの手続きをしておくよ。」
「ありがとうケイト。
あの日の荷馬車がそのまま置いてあるって言うから、何かわかるかもね。」
「……しょうのない娘だね。十分注意するんだよ。いいね。」
「ケイト、助かるよ。我々には少しでも証拠が欲しいのでな。
それで、いくらかかるんだ?」
「いえ、お代は結構です。専属の荷馬車を持っていただいたということは、仕事を専属で回していただけるということですよね。
こちらにとってもありがたいお話なのですよ。
しっかりと稼がせていただきますので。」
父は苦笑いでケイトを送った。
ケイトは父に礼を言って、その後は子どもたちとおやつの時間を楽しんでいた。
そこでアリスがピアノを学校で披露したことを聞き、
「いいかいアリス、女は度胸って言うんだよ。
いざという時に肝が据わるのは女なんだよ。
その調子でドカンとやっちまいな。
度肝を抜く演奏を頼むよ。」
その話を聞いて、アリスもカイルも大声で笑っていた。
子供たちの元気な笑い声を聞いたのは久しぶりだった。私も胸がすっとする心地だった。
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