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おっさん、革命を支援する
新国家樹立
しおりを挟む翌日、帝都の教会では、内戦の犠牲者の追悼式が行われた。圧政に逆らい処刑されたもの、内戦によって命を落としたもの、飢えに苦しみ、死に絶えた村のもの。そして市民運動の犠牲者タングの弔いも行われた。
「すべての御霊がアテナ様の身元に、安らかに導かれんことを祈ります。」
(ええ、承りましたわ、カイト君。)
アテナ神様より、そう告げられたような気がした。
僕たちはサルタンとともに王城の謁見室に呼ばれた。そこには王の亡骸とともに、皇族一同が揃っていた。
「僕にも弔いをさせてください。」と言うと、王妃は深々と頭を下げて、
「なんと慈悲に満ちた行い、感謝いたします。」
「魂よ、安らかにアテナ様の身元に導かれんことを祈ります。」
僕がそう言うと、王の亡骸から光の粒が舞い、宙に消えて行った。
サルタンたちの要件とは、皇族の処遇についてだった。
「まずこの国の王は、カイト様にやっていただくとして……。」
「ちょっと、待った。どうしてそうなっちゃうかな。」
僕は慌ててそう言ったので、口調が変になってしまった。
「ラダット解放軍の総意であります。ちょうどお妃様もいらっしゃいますので。」
「やだぁ、お妃様だなんて。」と言って僕の背中を叩いて照れていた。
「ちょっとそれはまだ保留ね、今日は何の話し合いだろうなぁ。」
「そうでした。元皇族たちの処遇についてですが、いかがいたしましょうか?」
「って、それも僕が決めるのかい?」
「ええ、是非にお知恵を拝借したい。正直処刑を求める者もおりますので、困っているのですよ。」
王妃たちは、僕の言葉一つでどうにかなってしまうと心配そうに見ていた。
「いいんじゃない、この国で暮らしても。」
「はい?」
「もう帝国はないんだし、元皇族も気にしなければいいんだよ。」
「申し上げます、これでは我らは許されないでしょう。」とアウグストが言った。
「君は懺悔室で反省したんだろう?反省したからそこから出されたわけだ。」
「ええ、そうですが。」
「ならよし、それで君の身体には皇族だとでも書いてあるのかい?」
「いいえ。」
「それじゃ誰にもわからない。それでいいじゃないのか。」
「……本当に、俺は生きていてもいいのか?」
アウグストは、帝国のため、国家の存続のため、一時は非常にも国民を手にかけたこともあった。だから当然処刑されて死ぬ覚悟はしていた。
しかし生きろ……と?
「君がどう生きるかは君が決めるんだ。君はただの『人』だ。皇族ではない。」
「……ふっ、なんだか奇妙だな。今までそんなこと、考えたこともなかった。」
リネットがクスッと笑いだした。
「そうね、一人の国民として暮らすなら、それで構わないってことね。」
「そうだね。僕は王様がいなくなったことで、今までの政治は行われないと思うんだ。ただ、このお城は使わせてもらいたいから、どこかに移り住んでもらうとしてだね……。」
「それならばわたくしは故郷に帰りたいと思います。そして息子は地方の領主として、今後は過ごしたいと思います。」
「奥様のご実家は?」
「アクレ男爵は、私の兄でした。」
「!!」
夫の圧政により処刑された兄。このご婦人の苦しみは計り知れないものだったろう。
「わかりました。ではそのように。」とサルタンが言った。
「アウグスト君と、アリスちゃん、私の国に来ない?」
「え?」
「だって、このままこの国に居ても、非難の目は浴びるでしょう?それなら神殿に留学すればいいのよ。そうしてアテナ様のために働く神官になるってのはどう?この国にもいずれ必要になるのだし、身の安全にもなるから。」
「うん、いいね。そうしようか。」
「なんと有難い。二人をよろしくお願いいたします。」
こうして元皇族たちは解放された。
そのあと僕たちは、王城の前の広場に出て、市民たちに王族たちのことを話した。要するに一人の国民として受け入れたということだ。
その話のあと、サルタンが僕に王様になるように勧めてきた。
「カイト様が王なら、俺たちの声を聞いてくれる!」
「カイト様、どうか私たちを導いてください!」
「俺たちで作る国だからこそ、最初の王はあなたがいい!」
「カイト様、万歳!」
市民たちの期待の声が、あちこちから聞かれ、やがて大きなうねりとなった。
「まぁ、『仮』だからね。政治に空白はよくないから。」
と、しぶしぶ引き受けた。
「それでは王よ、最初の仕事をお願いします。国の名を決め、国家の樹立を宣言してください。」
「ラダック解放軍が戦ったのだから、ラダック共和国はどう?」
「共和制ね、うん、いいんじゃない?」
僕はこの時はまだわかっていなかった。国を興すということがどんなに大変なのか。
「決まりね。ラダック共和国。いいね。」
「私、カイトはアテナ神の聖名の元に宣言する。ここにラダット共和国を樹立する。そして私が王である。だが、この国の真の王は、ここにいる市民たちだ!ラダットはこれから、すべての人のための国となる!」
王城の前の広場に集まった多くの市民たちの前で宣言した。
空には無数の光が舞い、市民たちは歌い、踊り、涙を流して歓喜に沸いた。
リネットがそっと僕の腕を取った。
「カイト様、私たちは……本当に新しい時代を作ったのですね。」
「ああ、でも、ここからが始まりだよ。」
上空を見上げると、ドラゴンたちが祝福するように舞い、リリーが母と共に空を駆けていた。その姿は、まるで「自由」を象徴しているようだった。
僕は大空にラダット解放軍の旗をちょっと変えた、ラダット共和国の旗を映し出した。
お祝いはまだ終わりそうにないな。
リネットとそう話をして、いつまでも笑っていた。
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