世にもおかしな物語ショートショート集

チャイ

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永遠のハロウィン、ブラックモールでグルメ王

秋の北海道大物産展グルメ開発記

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「次の目標は、秋の北海道大物産展!あれは国民大人気の一大イベントだからな。全部ハロウィンでいくぞ!」
ついに始動、北海道展全ハロウィン化計画。
かぼちゃ親方の命令で、ボクは厨房にて黒い魔女の帽子を白いコック帽にかえ、毎日かぼちゃ料理を試作している。

料理経験はないが、バイト仲間たちからグルメ王と呼ばれただけあって舌は確かなようだ。

まずは、北海道のおいしい栗かぼちゃと乳製品を使ったスイーツを試作。
ボクはかぼちゃ先輩たちと、ひたすら、かぼちゃを蒸してはつぶしまくってスイーツ生地に混ぜこんでいった。

「なまらどでかいかぼちゃのシュークリーム」これはパステルオレンジのクリームの色もキュート。

おなじみのスイートポテトではなく「スイートパンプキン」仕上げに卵黄を塗ってこんがり焼くと美味そうな焦げ目がつく。もちろんかぼちゃの形に成形だ。

「かぼちゃの友達」これ分かるかな?あの〇〇恋人をイメージしたものだよ。チョコレートをサンドしたラング・ド・シャクッキーだ。

そして、ボクの好きな北海道名物の「いももち」。もちっとして、おいしいよね。
じゃがいものかわりに、「かぼちゃもち」はどうだろ?
さっそく試作。

つぶしたかぼちゃに片栗粉を入れてこねる。
塩少々。手でまとめて、棒状に伸ばして切っていった。
丸めて、平らにして、フライパンへ。
熱したバターがじゅわーと溶ける。ああ、罪深い匂い!
焼いて、焼いて、両面こんがり。色もきれい。

パクリっとつまみ食い。
ほんのり甘くて、ちょっともっちり。このままでもおいしい。
バターの風味がいいね。
でも売り場では、みたらし団子の甘辛醤油ダレをかけたほうが、客受けいいかな。
「焼きもちかぼちゃ」いい名前だ。

お次は、かぼちゃラーメン。クラムチャウダーをもっと濃厚にしたかんじ。縮れ麺にからんで美味いんだ。スープは貝の出汁からとっている。
女子かぼちゃさんのアドバイスで、他の角切り野菜もたっぷり。女子受け狙えるね。

パスタならこれがボクの自信作。「かぼちゃのクリームスパゲッティ」
まったりとろ~り、チーズとかぼちゃペーストが溶け込んでる。
いわゆるみんなの好きな、濃厚クリームパスタ系だよ。

実はこれ、生クリームは使ってない。牛乳とピザ用のチーズでOKだ。
え?作り方が気になる?簡単だから作ってみてよ。

玉ねぎ、にんにくを炒め、つぶしたかぼちゃも加えて木べらでざっとつぶそう。牛乳を加え、かぼちゃがなじむように混ぜながら、スープの素、チーズ、ハムを加える。
とろみがつけば、ゆでたスパゲッティを入れて全体をあえる。
器に盛って、あらびき黒こしょう、パルメザンチーズも好きなだけかけたまえ。これで完成。

これもにんにくとベーコン、黒コショウが決め手。
つまり、甘いかぼちゃにはちょっとしたスパイシーさと塩気が合うんだな。あとは濃厚なうま味。つまりチーズ、ベーコンやハムが合うんだ。

「いっぱい作ったね、ゴースト君って才能あるね」
隣のかぼちゃさんがニコニコと話しかけてきた。
そんなことを言われたのは初めてでボクは照れて、うまくお礼が言えない。死ぬ前の職場では、褒められたことなんてなかったなぁ。一応、モテはしたけどさ。

「えっと、材料残り、大丈夫ですかねぇ。ずいぶん試作したから」
あれだけあった北海道栗かぼちゃが残り少ない。
「届きましたよー」
厨房に段ボールが運びこまれ、ドドドドドドドドドっと積み上げられた。北海道の乳製品も冷蔵庫に詰められてパンパンだ。

背の高いかぼちゃさんが、作業の手を休めることなく言った。
「発注しなくてもなぜか届くんだよ。便利だろ?
どうせなら、食材の管理も原価の計算も自動でやって欲しいよ」
彼は正社員なんだ。僕らバイトより大変らしい。

それにしても、北海道かぁ。いいなぁ行ってみたい。
ボクは段ボールの北海道マークや時計台やら、牛さんのイラストを見て、ふと心を飛ばした。

「やっぱり、もう少しスイーツメニューを開発しとこうか?」
「そうですね先輩」
夕張メロンソフトクリーム、色こそ同じだが、味はかぼちゃ味のかぼちゃソフト。

ついでにボクは、かぼちゃまん、かぼちゃの大判焼き、鯛焼きに挑戦。
かぼちゃ親方はそれを見て言った。
「ほぉ、鯛焼きに大判焼き。いいじゃねぇか、かぼちゃあん。いいできだ」
満足げにうなずいたが、すぐに首をふった。
「形が気に入らねぇな、かぼちゃ型にしろや」

そうだ、次はかぼちゃと台湾スイーツのコラボはどうだろう?
最近台湾グルメが流行ってるらしいんだ。
『月間ハロウィーン』、『栄養とかぼちゃ』、『かぼちゃ王国』
休憩室にこんな雑誌が置いてあって、ボクも最近詳しいんだよ、トレンドに。

生前のブラック職場の時は、仕事が苦しかったから、仕事のことなんて家でも考えたくなかった。
でも今は違うんだよねぇ。

ガヤガヤとなまはげさん達が入ってきた。
「よぉ、楽しそうに何読どるだ?かぼちゃ王国?」
「うん、この本、流行のかぼちゃ料理がいっぱいで、勉強になるんだ」
「さすがグルメ王、開発熱心なゴースト君だべ。おかげで、うまいランチが食える!」
「まぁ、坊や、熱心ね!食品部天職じゃない!」
魔女さんにほめられて、くすぐったい。
そう言われると、生前の職場じゃいつも死んでたもんなボク。死んでから生き生きするなんて、な・ん・て皮肉!



なんとか秋の北海道大物産展が終わった。次はクリスマスだ。このショッピングモール、時間の感覚がないわりに季節イベントだけは進むんだよね。きっと次から次に終わりなく。

そして気がつくと、ボクは、また太った。そして大きくなった。かなりのマシュマロボディなゴーストだ。かわいいかつ、貫禄が出た気がする。
ちなみにボクはもともと子供の頃からぽっちゃり気味。運動が嫌いでさ。親も親でいつも家にはあんパンがちゃぶ台に置いてあったよ。

そんなボクでも、死ぬ前は会社勤めが厳しく、やせてしまった。と言ってもようやく人並みだけど。
それを目にした二人の職場の女性が社内で争ったんだ。

「あんたのせいで、彼、こんなやせちゃったじゃん、責任取ってよ、お局女!」
「真夜中にあなたが電話攻撃するから、やせ細ったのよ、このヤンデレ女!」
「や、やめてよ、ボクのために争わないで!!」
お局様は僕の先輩で怖いところもあるけど、しっかりしててそれでいておちゃめなところもある女性だ。
ヤンデレちゃんは、たしかに病み系だけど、寂しがりやで、なんだかほおっておけないところがある。
二人ともいつもボクにあんパンを差し入れてくれる優しい人だ。

「ぽっちゃりしたところが、かわいかったのに!!、あんたのせいよ!!」二人がユニゾンした。
取っ組み合いの激しいけんかが始まった。
隠し持っていたナイフを振り回すの危ないってば!
周りの人、逃げてー、殺されちゃうからー
二人を止めようとしたボク。

チジョウノモツレ、で死んじゃった。痴情のもつれって、なんなのさ。
以上これがボクの死因です。



おまけに、もう一つボクの体に変化が起こった。なんと!体に色がついた。いつの間にかオレンジ色になったんだ。しかも発光する。ぼんやりと温かみのある光がボクの体から発せられてあたりを照らす。

「そりゃ、柑皮症だな」
「柑皮症?ってなんですか?」
かぼちゃさん達によると、なんでもこれは、かぼちゃの食べ過ぎによる、柑皮症らしい。
みかんを食べ過ぎてもなるあれだよ、掌が黄色くなるあの現象。
みかんやかぼちゃのビタミンAの色素の色が原因なんだ。

かぼちゃさん達の手のひらも黄色い。

「ゴースト君、やっぱ、才能あるよ、オレンジ色に光るなんて」
かぼちゃさんがボクを眺めてうらやましそうな顔をした。
「せっかくだから、発光体業務従事者証、取ったらどうかな?」
「なんですかそれ?」
「かぼちゃ色に光りだしたら、取れる証明書だよ。いつか役に立つと思うよ、あ、登録料は無料だったはず」

「いつか役に立つ」ああ、心くすぐられるいい響き!
それは人生堅実派のボクの座右の銘だった。

でもさ、今のボクはこう思ってる。
人生、いつかが来るかどうかなんて、わからないよ?
明日死んじゃうかもしれないんだからさ。



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