【三章完結しました】チートは無いけどAIがある!社畜OLの異世界立身出世録

星 見人

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第15話 【夜明けの誓い】

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 重厚な扉が軋み、石造りの広間に低いざわめきが走った。
 ラインハルト王城の謁見の間。燭台に灯る炎が揺らぎ、長い影を床に落としている。

 その中央に、若き王子リュウコクが立っていた。豪奢なマントを翻し、背筋を伸ばして、集う重臣たちを見回す。
 その横に控えるのは剛腕の将、カリオス。壁際には各地の領主や軍司、そして父王に仕え続けてきた古参の家臣たちが並んでいた。

「……諸君、、急な呼びかけに答えて頂きありがとう。単刀直入に言う。アルガスとの戦いは、もはや避けられぬ」
 リュウコクの声は若さを帯びながらも、広間に響き渡る確かさを持っていた。

 しかし、すぐに反論が飛ぶ。
「アルガスは海を制するゴロツキ共が集まる商業国家。我らが軍船を持たぬ以上、正面から勝てるはずがないだろう!」
「そうだ!奴らに挑むなど無謀。今まで通り商売をしていれば衝突などあり得なかろう!!まして湯ノ花のような辺境の寄せ集めに力を借りるなど、国の恥ではないか!」
「商人どもは利で動く。税と剣で縛らねば、いずれ裏切る!ならば言われた税率で取引するのが賢明だ!」

 次々と声が上がり、空気が張りつめる。
 カリオスが剣に手をかけかけたが、リュウコクが軽く手を挙げて制した。

「ははは、、こうやって君達に話しが通らないのも分かっている。だが、僕は父上のように力で君たちをねじ伏せるつもりはない」
 その一言に、重臣たちはざわめきを止めた。

 リュウコクは一歩前に出る。瞳は冴え冴えと輝いていた。
「だからこそ、今、君たちに問いたい。この状況で僕以上の打開策を出して僕を納得させてくれ。君たちの言葉と考えで、この僕の道が間違いだと示してみせてくれないか?」

 広間に沈黙が訪れた。
 挑むようでありながら、同時に誠実な響きを持つ言葉だった。

 やがて、杖を突いた老人の臣下が低く言う。
「……殿下。商業同盟など脆いもの。利が尽きれば瓦解する。文献に書いてある商業の都市が北欧の王国に従わざるを得なかったように……。湯ノ花の里との力なき同盟は砂上の楼閣にございます。今一度お考え直しを…」

 別の武将がそれに続けた。
「そうです。湯ノ花など小国の寄せ集めにすぎぬ。アルガスの財力と傭兵の軍勢に耐えられるわけがない。逆にアルガスと組み、先に湯ノ花の里を落とすのはどうでしょうか?」

 広間の空気は、次第に「拒絶」に傾きつつあった。

 そのとき、、、

 重厚な扉が再び開いた。
 ゆっくりと歩み入ったのは、この国の王、リュウコクの父だった。

 銀髪に刻まれた皺は深く、だが眼光は鋭い。リュウコクに敗れても未だ圧倒的な存在感に、全員が膝を折った。

「……ふむ。やはり甘いな、リュウコクよ」
 低い声が広間を震わせる。
「アルガスのような成金国家は、力で叩き潰してこそ従う。貴様の祖父も、我もそうしてきた。剣と血で地を染めねば、王威は立たぬのだ……。多少の犠牲は仕方なかろう…」

 リュウコクは父を見据えた。

「父上。僕も、力でねじ伏せて終わりなら、とっくにやっていますよ」
 静かながらも断固とした声だった。
「だがそれでは本当にアルガスを“得た”ことにはならないでしょう?ただの廃墟と廃人を残すだけです」

 彼は深く息を吸い、言葉を重ねる。
「僕が欲しいのは、、アルガス丸ごとだ。人も、富も、交易も、港も。すべてをこの手に抱き込む。そのためには、剣よりも策を。恐怖よりも利を。“僕たちはその道を選ぶ”」

 父王の眉がわずかに動いた。
 広間に沈黙が落ち、古参の家臣たちも口を噤む。

 その夜、、、。

 リュウコクは臣下たちと語り続けた。
 補給線をどう断つか。交易路をいかに掌握するか。海賊の扱い、都市の自治をどのように利用するか。
 剣を振るう代わりに、言葉と理で交わされる駆け引きは、戦場以上に熾烈であった。

 夜が更け、燭台の炎が小さく揺れるころ。
 誰かが言った。「王のお考え、確かに一理ございます」
 別の声が続く。「……我らの思う“弱さ”は、新王にとって“強さ”なのかもしれぬ」

 議論は一晩中続き、、、
 そして、窓の外に朝日が射した。
 差し込む光が広間を照らし出したとき、重臣たちは誰もが疲労しつつも、不思議な清々しさを覚えていた。

 リュウコクは立ち上がり、豪奢なマントを翻した。
「はははっ!!……よし。道は見えたな」

 リュウコクは微笑み、呟く。
「さてと。やっと、ミサトに相談しに行けるな!」

 湯ノ花の女王。
 異世界から来た社畜OL。
 リュウコクにとって何より信頼できる女性のもとへ。

 リュウコクは朝日を背に受け、馬を用意させた。
 その瞳には、勝利を掴む確信と、どこか少年のような輝きが宿っていた。

◇◇◇

  、、馬が用意される。
 その背に乗ろうとしたリュウコクを、カリオスが呼び止めた。

「おいっ!リュウコク!」
 振り返ると、歴戦の将の顔に珍しく熱が宿っている。
「……俺はずっと、力こそすべてと信じてきた。これからもそうだ!剣を振るい、血を流し、それでこの国を支える者だと」

 リュウコクは微笑する。
「はははっ!どうした?熱くなって??少しキモいぞ? でもな…カリオス。お前と言う存在がいなければ、この国はとっくに他の国に潰されていただろう……。この国の剣は確かに国の柱だ。けれど、、柱だけじゃ家は建たない」

 カリオスは一瞬、目を見開き、そして豪快に笑った。
「あははっ!……なるほど。リュウコクの策と我が剣、両方あれば家も城も建つわけだ!」

「ああ。だから僕は君を誘った。僕が道を示す。だが進むための力は、カリオス、、お前にしか任せられない」

「ははは!承知!」
 カリオスは拳を胸に叩きつける。
「この命、王の策を守るために振るいましょう」
「ふふ!あんまり気を張りすぎるな…。だが今回必ずお前の出番が来る…。その時まで少し休んでろ。それじゃ、僕はミサトに会いに行って来るね~♪」
 その言葉に、カリオスは苦笑いしながらも力強く頷いた。
 朝日が二人を照らし、希望に燃える戦の旅立ちを告げていた。


          続
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