あの味噌汁の温かさ、焼き魚の香り、醤油を使った味付け——異世界で故郷の味をもとめてつきすすむ!

ねむたん

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旅立ち

第五話: 「馬車での旅」

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数日間の旅を経て、私たちはようやく小さな村に到着した。砂漠の真ん中にひっそりと佇むこの村は、驚くほど静かで、どこか懐かしさを感じさせる場所だった。馬車を停め、村の広場に足を踏み入れると、村人たちは温かく私たちを迎えてくれた。

「ようこそ、旅人たち。」一人の中年の男性が声をかけてきた。「どこから来たんだい?」

「南の方から来ました。」私は笑顔で答えた。「ちょうど通りかかって、少し休憩しようと思って。」

「休憩もいいが、何か欲しい物があれば言ってくれ。」その男性はにっこりと微笑んで、村の広場を指し示した。「村には色んな物がある。必要なものがあれば、物々交換でもしてみたらどうだ?」

「物々交換?」私は少し驚いた。「ここではお金ではなく、物で交換するんですか?」

「そうだよ。昔からそうしてきたんだ。」男性は頷きながら言った。「物を持ち寄って、みんなで交換するんだ。食料や道具、時には情報もね。」

カリムが興味津々に言った。「それは面白いね!何か必要な物があれば、交換してもらえるのかな?」

「おそらく。」私は考えながら言った。「確か、今は食料が足りないし、少し道具を補充したいな。」

「じゃあ、ちょっと村の人たちと話してみようか。」カリムはにっこりと笑い、私と一緒に村の広場を歩き始めた。

広場には、色んなものが並べられていた。乾燥した果物や野菜、手作りの道具、布製の品々、さらには香辛料や珍しい香りがする香油など、目を引くものばかりだ。村の人々はそれぞれの品物を広げて、誰かが交換し、誰かがそれを手に取っている。

「すごい…こんなにも色んな物が。」私は驚きながらも、カリムと共に品々をじっくりと見て回った。

「なあ、アリアス、あの香辛料、見てみろよ。」カリムが指さした先には、色とりどりの香辛料が並べられていた。その色合いや香りが、すぐにでも試してみたいような気にさせる。

「いいね。あれを少し手に入れて、あのカレールーをさらに美味しくできるかもしれない。」私は言いながら、香辛料の入った袋を手に取った。

その時、一人の村人が近づいてきた。「それを欲しいのか?もしそうなら、何か交換できるものがあるか?」

私は少し考えた後、馬車から取り出した乾燥した肉の塊を見せた。「この乾燥肉と、何か交換できないでしょうか?」

村人は肉をじっと見つめると、うなずいて言った。「これはいい肉だ。じゃあ、この香辛料と交換しよう。」

「ありがとうございます。」私は香辛料を受け取り、満足げに微笑んだ。「これでさらに料理が楽しみになりそう。」

カリムも興奮気味に言った。「俺も、少し食料を調達しておきたいな。」そう言うと、彼は村のほかの品物を見て回った。

その後、カリムは木製の簡易な器や水を運ぶ袋を見つけ、村人と交換していた。「これで水をもっと運びやすくなるし、長旅には助かるな。」

私も他の村人と話をして、少し布を交換することにした。これで馬車の中がもっと快適になるかもしれない。

「これでまた少し旅が楽になるな。」カリムが満足げに言った。

「うん、物々交換って面白いね。思っていたよりも、交換する物の価値が色々あるんだな。」私は笑顔で答えた。

村での短い休息を終え、私たちは新たな物を手に入れて再び馬車に乗り込んだ。広場で交わされた交換の品々が、今後の旅路で役立つことを楽しみにしながら、私たちは再び道を進んだ。

「次はどんな場所が待っているんだろう。」カリムが前を見据えて言った。

「海の国が待ってるよ。」私は微笑みながら答えた。

馬車が再び動き出し、村の景色が遠ざかっていく。物々交換で得たものを大事にしながら、私たちは次の目的地へと向かって進んでいった。





馬車を進めるうちに、私たちは次第に人々の姿を見かけるようになった。小さな村々を抜け、道を歩いていると、前方に歩いている二人の人物が目に入った。彼らは、私たちと同じように旅をしているように見えた。

「こんにちは!」カリムが元気よく声をかけた。

二人組が振り返り、少し驚いたようにこちらを見た。目が合ったのは私達より少し年上くらいの男女だった。彼はすっと背筋を伸ばし、穏やかな笑顔を浮かべた。

「こんにちは。」彼はしっかりとした口調で答えると、女の子が尋ねた。「あなたたちも旅人?」

「はい、南の方から来ました。」私は答えながら馬車を停めた。

「そうか。俺たちも同じだ。」男の子が少し考えながら言った。「俺はザイド、こっちはレイラだ。」

「アリアス、こっちはカリム。」私は自己紹介をして、カリムと一緒に軽く頭を下げた。「こちらも、少し休憩をしようと思って立ち寄ったんです。」

レイラが笑顔を見せながら話しかけてきた。「私はレイラ、よろしくね。旅はどうだい?」

「楽しいけど、思ったよりも過酷だね。」カリムが笑いながら答えた。「でも、こうして出会う人たちと話すのはいいことだよね。」

「確かに。」ザイドが頷き、馬車の近くに歩み寄った。「じゃあ、一緒に休憩しようか?ここら辺は、食料や水も手に入る場所だし、少しでも助けになるかもしれない。」

レイラがにっこりと笑った。「ちょうど少し休みたかったところなの。あなたたちも歩き疲れてるでしょう?」

「うん、歩くのは意外と大変だね。」私は苦笑いしながら言った。

ザイドとレイラは、私たちに軽く挨拶すると、荷物を降ろして馬車の近くで食事を始めた。食料を分け合う中で、私たちはお互いに少しずつ話をしながら、自然と仲良くなっていった。

「それにしても、こんなに遠くまで一緒に旅をしている兄妹って、すごいね。」私は興味津々で聞いた。

「うん、昔から一緒に色んなことを乗り越えてきたから。」ザイドは少し照れくさそうに言った。「家族を守るっていうのが、俺の役目だからな。」

「でも、私たちだけではどうにもならないことも多い。」レイラが真剣な表情で続けた。「だから、色んな人に助けてもらいながら、ここまで来たんだよ。」

「そうか…」私はふと考え込んだ。この旅を続けていく中で、私も誰かを守ることを考えるようになるのだろうか。そんな思いが頭をよぎった。

「今度はどこに行くんだ?」カリムが尋ねると、ザイドは少し考え込み、ゆっくりと答えた。

「海の方に向かっているんだ。あそこには、俺たちが探している物がある。」

「海…」私は驚きの声を漏らした。「私たちも、海の国を目指しているんだ。」

レイラが目を輝かせて言った。「本当に?それなら、途中まで一緒に行けるかもしれないね。」

「そうだな。」ザイドがうなずいて言った。「一緒に旅をしていると、色んな話を聞けるし、お互い助け合えることが増える。そうすれば、もっと楽しくなるだろう。」

私たちはその後、少しの間、食事を共にしながらお互いの旅について話した。共通の目的を持つ者同士、どこか心が通じ合ったような気がした。

「それじゃあ、今夜はここで一緒に過ごそうか。」レイラが言った。「明日、また一緒に旅を続けることができたらいいね。」

「うん、よろしくお願いします。」私は笑顔で答えた。

こうして、私たちはザイドとレイラ兄妹と一緒に過ごすことになった。




次の日の朝、私たちは馬車を出発させる準備を整えた。ザイドとレイラも旅の途中で馬車に乗ることに決めた。彼らはもともと馬で旅をしていたが、長旅の疲れが溜まってきていたのだろう。私たちの馬車に乗せて一緒に進むことになったのだ。

「じゃあ、よろしく頼むよ。」ザイドが馬車の後ろに乗り込むと、レイラが微笑みながら手を振った。「今日はずっと一緒に行くんだね。」

「うん、一緒に進むのが楽しみだ。」私は笑顔で答え、馬を引きながら進み始めた。

カリムが馬車の前方に立ち、道を見守る。「すごいな、これだけの人数と荷物を一緒に運べるんだから、馬車って便利だな。」

「うん、これなら道中で買った物や食料も運びやすいし、歩くより楽だね。」私は馬車を進めながら言った。「でも、馬車はまだまだ慣れないから、ゆっくり進まないと。」

「それでも馬よりはずっと楽だよ。」レイラが後ろから声をかけてきた。「馬に乗っていると、足元が辛い時もあるけど、馬車だと安定しているからね。」

「確かに。」私は頷きながら進む。「それに、皆で一緒に乗ると、会話もしやすくていいね。」

ザイドが肩をすくめて笑った。「まあ、こうして何人かで旅をしていると、少しでも孤独じゃなくていいな。」

私たちはのんびりと進んでいった。時折、馬車が砂道を滑る音が響く。その中で、カリムが話し出した。

「ねえ、ザイド、レイラ、どこから来たの?」

「僕たちは、ずっと西の方からだよ。」ザイドが軽く答えた。「家族が農業をしていて、少しだけ町にも住んでたけど、最近はずっと旅をしているんだ。」

「へえ、農業か。」カリムが興味津々で続けた。「何を育ててるんだ?」

「いろいろだよ。小麦やオリーブ、果物なんかも。けど、最近は干ばつのせいでうまくいっていない。」ザイドが少し表情を曇らせる。「だから、色んなところを回って、新しい土地を探しているんだ。」

「そうだったんだ。」カリムは少し考え込みながら言った。「でも、今はこんなふうにみんなで一緒に旅をしていると、少しでも気分転換になるよね。」

「うん、確かに。」レイラが明るく言った。「馬車でゆっくり進むのも楽しいし、みんなと話しながら旅を続けるのが心地よいよ。」

私は彼らと話しながら進んでいたが、ふと気づくと、空が少しずつ薄暗くなり始めていた。長時間歩いてきた疲れもあって、みんなが少し静かになったころ、ザイドが言った。

「今日はもう少しでキャンプ地に着くから、そこで一緒に泊まろう。馬車で寝るのも楽だろうけど、たまには外で寝るのも悪くないよ。」

「それもいいかもしれないね。」私は思わず笑顔になった。「みんなで火を囲んで、少しだけ夜を楽しむのもいいかも。」

レイラが賛成した。「そうだね!星空の下でご飯を食べるのって、なんだか特別な感じがする。」

その言葉にみんなが頷きながら、ゆっくりと馬車を進めていった。道中の風景を楽しみながら、みんなの話を聞き、心地よい時間が流れていく。

「海の国まであとどれくらいだろう?」私はふと思って口に出した。

「もう少しだと思う。」ザイドがうなずきながら答えた。「ここから海まで行くには、あと数日かかるけど、きっとすぐに着くだろう。」

私たちは、馬車の中で過ごす時間を楽しみながら、少しずつ目的地へと近づいていた。
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