あの味噌汁の温かさ、焼き魚の香り、醤油を使った味付け——異世界で故郷の味をもとめてつきすすむ!

ねむたん

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海の向こうへ

第一話 旅立ちの時

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ついに、長い時間をかけて貯めた路銀とともに、私たちの旅の準備が整った。宿で過ごした日々、商売をしながら培った人とのつながりが、少しずつ形になり、ようやく次のステップに進む準備が整ったのだ。私たちが乗るのは、ヴェリオスを出発する客船。あらかじめ船の手配も済ませて、荷物と共に馬車を載せる手続きを終えた。

「いよいよだな。」カリムが馬車をじっと見つめ、感慨深そうに言う。

「うん。」私も同じように見つめ返す。「ここで学んだことを活かして、もっと遠くの世界に行こう。」

私たちの荷物は、馬車とともにしっかりと船に積み込まれ、準備は整った。海の向こうに広がる新しい世界への冒険が、今まさに始まろうとしている。

街の港には、私たちが商売をしていた露店で知り合った多くの人々が集まってくれた。最初は慣れない場所で緊張していたけれど、いまではすっかり顔馴染みになった。おばさんたちや商人の皆さんが、私たちに声をかけてくれた。

「アリアスさん、元気でね。お店、戻ったらまたやってね。」と、よく来てくれていたおばさんが笑顔で手を振りながら言う。

「もちろんです!」私は笑顔で応える。「また帰ってきたら、もっと美味しい料理をたくさん作りますから!」

カリムも一緒に頷きながら、何度もお世話になった店主にお礼を言っている。

「これからも、元気でね。ヴェリオスに戻ったら、またお店を開くから、待っててくれ。」と、ザイドが言うと、レイラもニコニコしながら「またね!」と手を振っている。

私たちはみんなに手を振りながら、ゆっくりと船に向かって歩き出した。町の人々が声をかけ、私たちを見送ってくれる。その中には、私たちの料理に興味を持ってくれた人々もいて、少し寂しい気持ちもあるけれど、同時に新たな冒険への期待が高まっていた。

「私たちの次の目的地は、どんな場所だろうね。」カリムが少しだけ前を歩きながら言う。

「きっと、新しい発見がたくさん待ってるよ。」私はカリムの後ろを歩きながら、うなずいた。「今度はもっと広い世界を見て、色々なことを学んでいこう。」

船の甲板に乗り込むと、乗組員たちが忙しそうに準備を進めている中、私たちは最後の荷物を積み込んだ。船が出発する準備が整い、港に別れを告げる時間が近づいていた。

「それじゃあ、行こう。」カリムが私に言う。

「うん、いよいよ出発だね。」私はしっかりと胸を張って答えると、最後にヴェリオスの町を振り返った。

そして、船の帆が揺れ始め、ゆっくりと海の上を進み始めた。私たちの冒険が、ついにまた新しい一歩を踏み出した瞬間だった。

船が港を離れると、町の景色はだんだんと遠ざかり、海の広がる景色が広がっていった。私たちの新しい冒険が、これから始まるのだ。



船が港を離れ、ヴェリオスの町が徐々に小さくなっていく。その広がる海の景色に心が躍る一方で、少し寂しさも感じる。港で見送ってくれた人々の顔が、名残惜しく私の胸に残っていたけれど、新しい冒険が待っていると思うと、気持ちは前を向いていた。

「とうとう、出発したね。」カリムが甲板でぼんやりと遠くを見つめながら言った。

「うん。」私は横に立ちながら答える。「これから先、どんなことが待っているんだろう。ワクワクするね。」

海の上を進む船は、風を受けてゆっくりと進み始めた。広がる水平線を見ていると、なんだか広い世界が待っているような気がして、胸がいっぱいになる。

船内では、乗客たちがそれぞれの席に散らばっている。客室は広く、個室に近いような静かな空間が広がっているが、私たち四人は甲板の近くにある広めの共有スペースに集まり、これからの旅のことを話し合った。

「ここからは、もう海しか見えないんだろうな。」ザイドが言うと、レイラがうんうんと頷く。

「うん。でも、船旅って面白そう。新しい出会いや発見がたくさんあるって聞いたことがあるから、楽しみだな。」私はニコッと笑って言った。

その後、私たちは船内を少し探検してみることにした。乗組員たちが忙しそうに仕事をしている中、私たちも見学がてら甲板の端まで歩いてみたり、船の中をうろうろしたりして、過ごした。

昼食は船内で出される食事を取ることになったけれど、どうしても味に慣れなかった。私たちが日本の食文化に慣れているからだろうか、ちょっと物足りない感じがした。

「やっぱり、私たちの料理が一番だね。」私は少し苦笑いを浮かべながら言う。

「うん、でもここでは船内の食事を楽しむしかないね。」カリムが少し肩をすくめる。「でも、きっと色んな食材も手に入るだろうし、それに合わせた新しいレシピを考えるのも楽しみだよ。」

その後は、レイラとザイドがカードを持ち出して、私たち四人で楽しく遊んだり、海の景色を眺めたりしながら過ごした。時々、船員たちが通り過ぎて「何か手伝えることがあれば言ってくれ」と声をかけてくれたが、私たちはまったりとした船内の時間を楽しんでいた。

「でも、長い旅になるだろうから、飽きないように何か考えないとね。」ザイドが少しふざけたように言うと、レイラも笑いながら頷く。

「それこそ、新しい料理を考えてみようか。」私は提案して、みんなの顔を見た。

「いいね!新しい食材を使って、みんなで試してみよう!」カリムが目を輝かせて答える。

船の旅は、穏やかで落ち着いた時間が流れながらも、私たちの心を少しずつ次の冒険へと導いてくれているようだった。

そして、しばらくは海と船の音だけが私たちを包み込み、遠くの地に思いを馳せることができた。



船の揺れに合わせて、客室の中は静かな時間が流れていた。窓の外には暗く沈んだ海が広がり、月の光がほんのりと水面を照らしている。外の世界はまだまだ静かで、私たちは日常の喧騒から少し解放され、船内での静かなひとときを楽しんでいた。

「ねぇ、次はカードゲームをしない?」私はカードを手に取り言った。

「いいんじゃない?」レイラが笑顔で答える。

「そうだな、こんな時間も大切だよ。」ザイドも頷きながら、カードを手に取った。

私たちは船の客室で、しばしカードゲームに興じていた。無理に何かを決めなければならないわけでもなく、ただ時間を楽しんでいるだけの穏やかな瞬間だ。最初は少し緊張していたけれど、すぐにみんなの顔もほぐれて、いつものように冗談を言ったり笑ったりして過ごしていた。

「よし、今度は私の番だ!」私はカードを引きながら、ちょっと得意気に言った。

「おっと、どうだ?勝てるかな?」カリムがからかうように言う。

「油断しないでよ。これから逆転するから!」私はにっこりと微笑む。

「おいおい、そんなこと言って本当に逆転するのか?」ザイドが少し笑いながら言った。

「どうなるか分からないけど、私、結構勝負事には自信があるんだから。」私は笑いながらカードを切った。

部屋の中に響くのは、カードが重なり合う音と、みんなの楽しげな笑い声だけ。船の揺れに合わせて、私たちの会話もゆったりと流れていく。

「それにしても、船の旅も結構いいものだね。普段なら、こんなふうにゆっくりできる時間なんてなかったけど。」レイラがカードを切りながら言った。

「確かに。仕事に追われていた時は、こんなひとときがどれほど贅沢に感じるか分からなかった。」カリムが静かに答える。

「そうだね。私たちも少しゆっくりして、次に向けての準備をしておかないと。」ザイドが少し真剣な表情を見せる。

その言葉に、少しだけ空気が変わるけれど、すぐにまた笑いが戻ってくる。私たち四人は、普段の忙しさから解放され、ただ「今」を楽しむことができる幸せを感じていた。

「それじゃ、私はここで逆転するよ!」私はカードを出しながら宣言した。

「うわっ、やっぱり本当に逆転した!」レイラが驚きの声をあげる。

「おお、これは予想外だな。」カリムが感心したように言う。

「ふふ、やったでしょ!」私は得意げに笑う。

それから、勝負はどんどん白熱して、次第に誰もが真剣にカードを見つめている。けれど、その真剣さの中にも、どこかお互いの楽しさを感じ取っていることが、心地よく伝わってきた。

「でも、やっぱりこれもいいよね。あの頃みたいに、ただ楽しい時間を過ごすのも。」私はふと、みんなに話しかけた。

「うん、そうだね。」カリムが少しうなずきながら言う。「こうやって、みんなで集まって、あの頃みたいに笑ってる時間が一番楽しい。」

「まさにそうだよね。」レイラが続ける。「どんなに冒険をしても、結局はこういう時間が一番大切なんだと思う。」

「またこんな時間を過ごせるように、頑張らないとな。」ザイドが少し真面目な顔で言った。

私たちはそれぞれ、心の中で何かを感じながらカードを並べ直した。だんだんと、カードゲームの結果に関係なく、この時間がとても貴重で、ありがたいものだと感じ始めていた。

「さて、最後に誰が勝つかな?」私は笑いながら言った。

「じゃあ、決着をつけよう!」カリムがカードを握りしめて、勝負の続きを始める。

その後、どんなに小さな勝負でも、私たちはお互いの勝ち負けを気にすることなく、ただ楽しい時間を共有していた。船上でのカードゲームは、私たちの心に温かい光を灯し、しばらくはその静かな夜の中で続いていった。
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