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しおりを挟む「……覚悟しておけ。これからじっくり、お前を俺の妻にする」
その言葉が、まるで呪いのように私の脳内でリフレインする。
いや、違う。これは呪いなんかじゃない。
宣告だ。
そして、それはこの屋敷での生活が始まることを意味していた——。
強制同居、一日目
翌朝、私は目を覚ますと、見知らぬ天蓋付きのベッドに寝かされていた。
金色の刺繍が施された豪華なカーテン。ふかふかのシーツ。
これは……間違いなく、公爵邸の一室。
……本当に攫われたんだわ、私。
昨日はあまりにも怒涛の展開すぎて、気がついたら公爵の執事に部屋まで案内され、
「お休みなさいませ、お嬢様」とか言われて、気絶するように寝てしまったのだった。
——で、今に至る。
「はぁ……」
ため息をつきながらベッドから抜け出し、ドアを開けた瞬間。
「お目覚めですか、レティシア様」
「ひっ!?」
執事のルドルフが、すでにドアの前で待ち構えていた。
まるで私が起きる時間を完璧に予測していたかのように。
「公爵様がお待ちです。朝食の準備が整っております」
「え……えっと、待ってください。私はまだ——」
「公爵様が、『レティシアが寝坊したら俺が迎えに行く』と仰っておりましたので」
「行きます!! 今すぐ行きます!!!」
あの公爵が迎えに来るなんて、考えただけで恐ろしい。
私は慌てて部屋を飛び出した。
広大なダイニングルーム。
長すぎるテーブルの向こうには、すでにヴァルター公爵が座っていた。
朝日が差し込む中、彼はコーヒーカップを傾け、静かに私を見ている。
「おはよう、レティシア」
「……お、おはようございます」
昨日の強引な発言を思い出し、気まずさが込み上げる。
私はそっと席につき、目の前に並べられた朝食に手をつけた。
ふわふわのパン、香ばしいベーコン、たっぷりの果物。
すべて最高級の食材で作られているのが分かる。
でも……
——食べづらい!!!
だって、この公爵、ずっとこっちを見てるんだけど!?
「……何か?」
勇気を出して聞いてみる。
すると公爵は、まるで当たり前のことのように答えた。
「お前の食事の仕方を見ている」
「……どういう意味ですか?」
「婚約者の癖を知るのは当然のことだ」
「いやいや、普通はもうちょっと距離を置くべきじゃ——」
「それなら、今からお前の口に運んでやるか?」
「けっこうです!!!!」
私は必死にフォークを握りしめ、無理やりパンを口に押し込んだ。
……もう、絶対に気を抜いたらダメだ。
この男は、本当にやりかねない。
「さて、今日からお前は俺と過ごすことになる」
「……え?」
「まず、屋敷内を案内する。その後、俺の仕事を見学しろ」
「ちょ、ちょっと待ってください! どうして私が——」
「お前は俺の妻になるのだから、当然だ」
「まだ婚約すら正式に認めたわけじゃ——」
「認めるも何も、お前はもう俺のものだろう?」
「……」
理屈が通じない!!!
でも、何を言っても押し切られるのは目に見えている。
私は半ば諦めながら、今日の予定を受け入れることにした。
「まずはこの屋敷の中庭からだ」
公爵に連れられて向かったのは、驚くほど広大な庭園だった。
色とりどりの花が咲き誇り、噴水が美しく輝いている。
……が、そこにいたのは、明らかに庭師ではない男たち。
「ここで何を?」
「戦闘訓練だ」
「……え?」
「この屋敷は、王宮に次ぐ規模の軍拠点でもある。
貴族の中でも、俺は王家直属の戦力を持つことが許されている」
「…………」
ちょっと待って。
私、貴族令嬢だったはずなんですけど!?
「公爵夫人になるのだから、お前も戦い方を学んでおけ」
「いや、戦いませんよね!?」
「有事の際、俺が守る。だが、最低限の護身術は身につけるべきだ」
「いやいや、護身術ってレベルじゃないですよね、この人たち!!!」
私の目の前で、屈強な騎士たちが次々と剣を振るい、魔法を繰り出している。
これ、貴族夫人の学ぶものじゃない!!!
「さて、訓練開始だ」
「待って!!!」
こうして、私の公爵邸での強制同居&強制鍛錬生活が始まったのだった——。
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