お前との婚約は、ここで破棄する!

ねむたん

文字の大きさ
9 / 42

9

しおりを挟む

「……お前は今日から俺の隣の部屋で寝る」

ヴァルター公爵のその言葉に、私は全身を硬直させた。

「え?」

一瞬、自分の耳を疑う。
でも、目の前の公爵は至って真剣だ。冗談の欠片もない。

「い、今なんて言いました?」

「お前の部屋は俺の寝室の隣に移したと言った」

「そ、それは……どうして?」

「夜に何かあった時、すぐにお前を守れるようにするためだ」

「…………」

いや、理由としては正しいのかもしれないけど!!!

「護衛がいれば問題ないですよね!? わざわざ隣にしなくても!!!」

「俺が直接守る」

「いやいやいや!!!」

私は全力で抵抗したが、公爵は微動だにしない。

「それに、これもお前を俺に慣れさせるためだ」

「慣れさせるって、だから!!!」

「毎晩、俺の存在を身近に感じていれば、徐々に落ち着くだろう」

「そういう問題じゃないんですよ!!!???」

私は頭を抱えた。
この人、マジで「慣れさせる」ことに全力すぎる。
それでいて、本人に悪気がないのが一番厄介だ。

「もういい……とにかく、部屋は別にしてください!」

私が必死に抵抗すると、公爵はしばらく考え込んだ。

そして、次に口を開いた瞬間——

「では、いっそ俺の部屋で一緒に寝るか」

「選択肢が増えるどころか、後退してません!!?」

私は全力で叫んだ。

公爵は平然と続ける。

「俺の寝室は広い。ベッドも十分な大きさだ」

「いやいや、問題はそこじゃなくて!!」

「お前が俺に早く慣れるためには、直接隣にいたほうが効果的だ」

「そんな即効性のある治療みたいな話じゃないですよね!!?」

私は必死に抵抗するが、公爵はまるで意に介さない。
むしろ、微かに満足そうな顔をしている気がする。

——この人、絶対わざとやってる。

「とにかく! 私は別の部屋で寝ます!! これ以上は絶対に譲りません!!!」

私が精一杯の拒絶を示すと、公爵は少しだけ眉をひそめた。

「……ならば、今夜はお前の部屋に俺が行く」

「いや、だから、選択肢が後退してるんですよ!!!!」

もうダメだ、この人に常識は通用しない。
私は天を仰いで深くため息をついた。

すると、公爵は静かに立ち上がり、私に一歩近づいた。

「……まあいい。とりあえず今夜は、お前の好きにしろ」

「本当ですか!?」

私は思わず顔を輝かせた。

——が、その直後、公爵は淡々と付け加えた。

「ただし、お前が夜中に少しでも不安になったら、俺の部屋に来い」

「……来ません!!!!」

私は全力で拒否したが、公爵は不敵に笑うだけだった。

この屋敷から逃げるのは、本当に難しそうだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

未来の記憶を手に入れて~婚約破棄された瞬間に未来を知った私は、受け入れて逃げ出したのだが~

キョウキョウ
恋愛
リムピンゼル公爵家の令嬢であるコルネリアはある日突然、ヘルベルト王子から婚約を破棄すると告げられた。 その瞬間にコルネリアは、処刑されてしまった数々の未来を見る。 絶対に死にたくないと思った彼女は、婚約破棄を快く受け入れた。 今後は彼らに目をつけられないよう、田舎に引きこもって地味に暮らすことを決意する。 それなのに、王子の周りに居た人達が次々と私に求婚してきた!? ※カクヨムにも掲載中の作品です。

【完結】その溺愛は聞いてない! ~やり直しの二度目の人生は悪役令嬢なんてごめんです~

Rohdea
恋愛
私が最期に聞いた言葉、それは……「お前のような奴はまさに悪役令嬢だ!」でした。 第1王子、スチュアート殿下の婚約者として過ごしていた、 公爵令嬢のリーツェはある日、スチュアートから突然婚約破棄を告げられる。 その傍らには、最近スチュアートとの距離を縮めて彼と噂になっていた平民、ミリアンヌの姿が…… そして身に覚えのあるような無いような罪で投獄されたリーツェに待っていたのは、まさかの処刑処分で── そうして死んだはずのリーツェが目を覚ますと1年前に時が戻っていた! 理由は分からないけれど、やり直せるというのなら…… 同じ道を歩まず“悪役令嬢”と呼ばれる存在にならなければいい! そう決意し、過去の記憶を頼りに以前とは違う行動を取ろうとするリーツェ。 だけど、何故か過去と違う行動をする人が他にもいて─── あれ? 知らないわよ、こんなの……聞いてない!

婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします

タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。 悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。

婚約破棄、承りました!悪役令嬢は面倒なので認めます。

パリパリかぷちーの
恋愛
「ミイーシヤ! 貴様との婚約を破棄する!」 王城の夜会で、バカ王子アレクセイから婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢ミイーシヤ。 周囲は彼女が泣き崩れると思ったが――彼女は「承知いたしました(ガッツポーズ)」と即答!

悪役令嬢の私、計画通り追放されました ~無能な婚約者と傾国の未来を捨てて、隣国で大商人になります~

希羽
恋愛
​「ええ、喜んで国を去りましょう。――全て、私の計算通りですわ」 ​才色兼備と謳われた公爵令嬢セラフィーナは、卒業パーティーの場で、婚約者である王子から婚約破棄を突きつけられる。聖女を虐げた「悪役令嬢」として、満座の中で断罪される彼女。 ​しかし、その顔に悲壮感はない。むしろ、彼女は内心でほくそ笑んでいた――『計画通り』と。 ​無能な婚約者と、沈みゆく国の未来をとうに見限っていた彼女にとって、自ら悪役の汚名を着て国を追われることこそが、完璧なシナリオだったのだ。 ​莫大な手切れ金を手に、自由都市で商人『セーラ』として第二の人生を歩み始めた彼女。その類まれなる才覚は、やがて大陸の経済を揺るがすほどの渦を巻き起こしていく。 ​一方、有能な彼女を失った祖国は坂道を転がるように没落。愚かな元婚約者たちが、彼女の真価に気づき後悔した時、物語は最高のカタルシスを迎える――。

【完結】姉に婚約者を奪われ、役立たずと言われ家からも追放されたので、隣国で幸せに生きます

よどら文鳥
恋愛
「リリーナ、俺はお前の姉と結婚することにした。だからお前との婚約は取り消しにさせろ」  婚約者だったザグローム様は婚約破棄が当然のように言ってきました。 「ようやくお前でも家のために役立つ日がきたかと思ったが、所詮は役立たずだったか……」 「リリーナは伯爵家にとって必要ない子なの」  両親からもゴミのように扱われています。そして役に立たないと、家から追放されることが決まりました。  お姉様からは用が済んだからと捨てられます。 「あなたの手柄は全部私が貰ってきたから、今回の婚約も私のもの。当然の流れよね。だから謝罪するつもりはないわよ」 「平民になっても公爵婦人になる私からは何の援助もしないけど、立派に生きて頂戴ね」  ですが、これでようやく理不尽な家からも解放されて自由になれました。  唯一の味方になってくれた執事の助言と支援によって、隣国の公爵家へ向かうことになりました。  ここから私の人生が大きく変わっていきます。

たいした苦悩じゃないのよね?

ぽんぽこ狸
恋愛
 シェリルは、朝の日課である魔力の奉納をおこなった。    潤沢に満ちていた魔力はあっという間に吸い出され、すっからかんになって体が酷く重たくなり、足元はふらつき気分も悪い。  それでもこれはとても重要な役目であり、体にどれだけ負担がかかろうとも唯一無二の人々を守ることができる仕事だった。  けれども婚約者であるアルバートは、体が自由に動かない苦痛もシェリルの気持ちも理解せずに、幼いころからやっているという事実を盾にして「たいしたことない癖に、大袈裟だ」と罵る。  彼の友人は、シェリルの仕事に理解を示してアルバートを窘めようとするが怒鳴り散らして聞く耳を持たない。その様子を見てやっとシェリルは彼の真意に気がついたのだった。

婚約破棄!ついでに王子をどん底に突き落とす。

鏡おもち
恋愛
公爵令嬢パルメは、王立学院のパーティーで第一王子リュントから公開婚約破棄を突きつけられる。しかし、周囲の同情をよそにパルメは歓喜した。

処理中です...