脱走聖女は異世界で羽をのばす

ねむたん

文字の大きさ
141 / 209

リディアの休日

しおりを挟む

静かな時間が流れる秘密基地で、リディアはメリーちゃんのふわふわの毛に埋もれていた。ピンク色の柔らかなもふもふは、まるで綿菓子の中にいるような感触で、リディアは目を閉じながらほっとした息をつく。

「メリーちゃん、ほんとに癒されるね……」
リディアがそう呟くと、メリーちゃんは「メェ」と満足げに鳴いた。その隣ではタフィーちゃんが「ぷるぷるん!」と甘い香りを漂わせながら、小さく弾んでいる。

「タフィーちゃんのチョコの香りも最高だよ! 甘い匂いでお腹が空いちゃいそう……」
リディアは笑いながら、膝の上に広げた編み物の糸に目を落とした。今日はリリアンで何か作ろうと、カラフルな糸を使って小さな飾りを編んでいる。

「この色、秘密基地に飾ったら可愛いかな?」
小さな糸玉を転がしながら、リディアはリビングの飾りつけを想像して、楽しそうに糸を指先で操っていた。

編み物をひと休みすると、リディアはお風呂エリアに向かった。溶岩フロアの熱気が漂う中、魔法の噴水から湯船にお湯が流れ込み、ぽかぽかと湯気が立ち上っている。

「今日もアヒルさん、浮かべちゃおう!」
リディアはお気に入りの黄色いアヒルを湯船に浮かべ、そっと手で押しながら「ぷかぷか」と遊んでいた。アヒルが軽やかに揺れるのを見て、リディアは思わず笑顔になる。

その後、サウナテントに移動してリラックス。心地よい温かさに包まれながら、リディアは「ふぅ……これ、最高の癒しだね」と呟いた。

お風呂を楽しんだ後、リディアは変身ステッキを取り出し、くるっと回して振った。次の瞬間、マーメイド風のキラキラした衣装に変身! 湯上がりのリディアをさらに引き立てる装いに、思わず鏡の前でくるりと回ってしまう。

「かわいい! このステッキ、本当に便利だなぁ!」
リディアは大満足の表情で部屋に戻ることにした。

部屋に戻ると、メリーちゃんがふわふわの毛から食事を取り出してくれていた。湯気の立つオムライス、スープ、そしてフルーツサラダがきちんと並べられ、リディアの顔がぱっと明るくなった。

「わぁ! メリーちゃん、ありがとう! 美味しそう!」
リディアはスプーンを手に取り、オムライスに描かれたケチャップのハートを眺めながら一口食べた。

「んー、おいしい! メリーちゃんの収納力、ほんとすごいね!」
メリーちゃんは「メェ!」と得意げに鳴き、タフィーちゃんも「ぷるぷるん!」と弾んでその場を盛り上げた。

温かい食事と甘いフルーツサラダで満たされたリディアは、椅子に座ったまま「次は何しようかな……」と幸せそうに呟いた。秘密基地ののんびりした時間は、リディアたちにとって何よりの贅沢なひとときだった。


その日の午後、リディアはポーションバッグからまたたびポーションを取り出し、しっかりと握りしめて秘密基地を後にした。向かう先は、森の奥にある猫の集会所。
以前訪れたときの、猫たちに囲まれる夢のような体験を思い出しながら、リディアは足取り軽く進んでいった。

「また猫たちに会えるかな……今日はどんな子がいるかな?」
期待で胸を膨らませながら、リディアは静かな森を抜けて小さな広場に辿り着いた。

広場にはすでに数匹の猫たちが集まっていて、木陰や草むらで気ままにくつろいでいた。リディアはその中心にしゃがみ込み、またたびポーションの瓶をそっと開ける。

「さぁ、みんな、おいで!」
リディアが地面に数滴たらすと、猫たちが次々に目を覚まし、ポーションの香りに誘われてリディアの元へ集まってきた。三毛猫、黒猫、トラ猫――さまざまな毛色の猫たちが彼女の周りを取り囲み、ゴロゴロと喉を鳴らしながらすり寄ってくる。

「わぁ、かわいい! みんな、ありがとうね!」
リディアは目を細めながら猫たちの背中を優しく撫で、そのふわふわの感触に癒されていた。

その時、どこからか忙しそうな足音が聞こえてきた。リディアが目を向けると、一匹の白猫が小さなお手紙をくわえて広場を横切ろうとしている。

「あれ、どこかにお手紙を届けるのかな?」
リディアはその様子に興味を惹かれたが、またたびポーションの香りが広場に漂っていたため、白猫は立ち止まり、耳をぴくりと動かした。そして次の瞬間――

「ごろにゃん……!」
白猫は足元に崩れ落ちて、地面にゴロゴロと転がり始めた。くわえていたお手紙は、ポトリと草むらに落ちてしまう。

「あっ! お手紙が!」
リディアは急いで草むらに駆け寄り、落ちた手紙を拾い上げた。封筒には達筆な文字で「森の住人へ」と書かれている。

「これって……大事な手紙なんじゃないかな?」
リディアが封筒を見つめていると、白猫はゴロゴロと喉を鳴らしながら彼女の足元に擦り寄ってきた。まるで「すまない」と謝るように、つぶらな瞳でリディアを見上げている。

「いいよ、ちゃんと届けてあげるね!」
リディアは微笑んで白猫を撫でると、手紙をしっかりと手に持ち、森のどこに届けるべきか考え始めた。

「この手紙が誰宛てなのか、探してみよう! 猫の集会所なら、きっと何かわかるはずだよね!」
再び猫たちの視線を感じながら、リディアは手紙を握りしめて、集会所での手がかりを探し始めた。果たして、この手紙の送り先はどこなのだろうか――。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません

との
恋愛
第17回恋愛大賞、12位ありがとうございました。そして、奨励賞まで⋯⋯応援してくださった方々皆様に心からの感謝を🤗 「貴様とは婚約破棄だ!」⋯⋯な〜んて、聞き飽きたぁぁ! あちこちでよく見かける『使い古された感のある婚約破棄』騒動が、目の前ではじまったけど、勘違いも甚だしい王子に笑いが止まらない。 断罪劇? いや、珍喜劇だね。 魔力持ちが産まれなくて危機感を募らせた王国から、多くの魔法士が産まれ続ける聖王国にお願いレターが届いて⋯⋯。 留学生として王国にやって来た『婚約者候補』チームのリーダーをしているのは、私ロクサーナ・バーラム。 私はただの引率者で、本当の任務は別だからね。婚約者でも候補でもないのに、珍喜劇の中心人物になってるのは何で? 治癒魔法の使える女性を婚約者にしたい? 隣にいるレベッカはささくれを治せればラッキーな治癒魔法しか使えないけど良いのかな? 聖女に聖女見習い、魔法士に魔法士見習い。私達は国内だけでなく、魔法で外貨も稼いでいる⋯⋯国でも稼ぎ頭の集団です。 我が国で言う聖女って職種だからね、清廉潔白、献身⋯⋯いやいや、ないわ〜。だって魔物の討伐とか行くし? 殺るし? 面倒事はお断りして、さっさと帰るぞぉぉ。 訳あって、『期間限定銭ゲバ聖女⋯⋯ちょくちょく戦闘狂』やってます。いつもそばにいる子達をモフモフ出来るまで頑張りま〜す。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結まで予約投稿済み R15は念の為・・

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

処理中です...