180 / 209
エリュディオンのひまつぶし
しおりを挟む
空飛ぶ絨毯をふわりと浮かせ、雲海に向けて飛び立ったリディアたち。その横には、ひとり遊びに飽きたと突撃してきたエリュディオンが優雅に並走している。漆黒の髪が風に揺れ、気まぐれな微笑みを浮かべながらリディアを見下ろしてくる。
「それで、どこに向かうつもりなんだ?」
エリュディオンが軽く腕を組み、余裕たっぷりの態度で尋ねる。
「うーん、まだ決めてないけど、新しい浮島を探すんだ!」
リディアは鼻歌混じりに答え、魔法の地図を広げる。地図はくるりと巻き戻り、矢印を浮かび上がらせて目指す先を示した。
「おお、いいじゃないか。退屈しのぎにはちょうどよさそうだ。」
エリュディオンはひらりと宙で一回転し、絨毯の周囲を悠々と飛び回りながら付いてくる。
メリーちゃんは「メェ!」と元気よく鳴いて毛をふわふわさせ、タフィーちゃんも絨毯の端で「ぷるぷるん!」と弾んでいる。リディアは楽しそうな二人を見て、改めて冒険心を膨らませた。
雲海の上を進むうち、地平線の先にちらりと見えたのは、白と金色の光を反射する美しい浮島だった。その輝きに引き寄せられるように、リディアたちは浮島に向けて絨毯の速度を上げた。
島に降り立つと、目の前には滑らかな大理石の地面が広がり、点々と配された噴水から水が煌めきながら溢れ出している。島の中央には壮大なアーチ型の橋が掛かり、その奥に続く階段の上には謎めいた彫刻が立っていた。
「なんだか、ここ……すごく立派な場所だね!」
リディアは目を輝かせながら噴水に近づき、手を水に差し入れて冷たさを感じ取る。
「ん? この彫刻、ただの飾りじゃなさそうだな。」
エリュディオンが軽く宙に浮きながら彫刻を指差した。その彫刻は、まるで古代の守護者を模したかのような姿で、不思議な輝きを放っている。
「どうする? 触ってみる?」
リディアは興味津々でエリュディオンを見上げた。
「ふむ、試してみるのも悪くないな。ただし、何か出てきても私は責任を取らんぞ?」
エリュディオンは肩をすくめてにやりと笑う。その軽薄な態度にリディアは少し呆れつつも、好奇心に勝てず彫刻へと近づいていった。
リディアは彫刻の足元にそっと手を触れた。ひんやりとした感触が伝わってくる。彫刻の表面には、細かな文字のようなものが刻まれているが、見慣れない模様だ。
「これ、読めそう?」
リディアは上を向いてエリュディオンに尋ねた。
彼は軽く眉を上げて彫刻に近づき、模様を一瞥した。
「ふん、これは古代語の一種だな。“試練を乗り越えし者、真実の輝きに至る”と書いてある。」
「試練……? なんだかワクワクしてきた!」
リディアはその言葉にすっかり興奮してしまい、彫刻の模様をさらに触りながら周囲を見回す。
すると、彫刻がほのかな光を放ち始め、足元の大理石の床に模様が浮かび上がった。それは、島全体に広がる複雑な幾何学模様のようで、少しずつ光が線を描きながら広がっていく。
「おい、何かが動き出したぞ。」
エリュディオンが少し後ろに下がり、興味深げに島の様子を見つめた。
「すごい……何が起きるの?」
リディアは光に導かれるように足を進め、階段の上へと向かった。タフィーちゃんとメリーちゃんも後ろからついてくる。タフィーちゃんは「ぷるぷるん!」と興奮気味に弾み、メリーちゃんも「メェ!」と声を上げてリディアに続く。
階段を登り切ると、大きな円形の広場が現れた。中央には透明な水晶の玉が浮かび、まるで命を宿しているかのように脈打っている。
「この水晶……ただの飾りじゃなさそうだね。」
リディアはそっと近づき、水晶の表面に指先を触れた。
その瞬間、水晶の中から柔らかな光が溢れ出し、空中に映像が浮かび上がった。そこには、美しい森や輝く星空、そして壮大な山々の景色が映し出されている。
「なんだこれ……? ただの景色?」
リディアが呟くと、エリュディオンが肩越しに映像を覗き込んだ。
「いや、これは記憶の映像だろう。恐らく、この島がかつて見ていた世界の断片だ。」
彼の声には珍しく真剣さが含まれていた。
「島が見ていた世界……?」
リディアは首を傾げたが、その言葉の響きに不思議なロマンを感じた。
「で、どうする? この試練とやらを本気で受けるつもりか?」
エリュディオンがニヤリと笑い、リディアを挑発するように言った。
「もちろん! こんな面白そうなもの、逃すわけにはいかないよ!」
リディアは自信たっぷりに胸を張り、水晶の前に立つと明るく宣言した。
その言葉に反応したのか、広場の光がさらに強くなり、足元の模様が再び動き始めた。次の瞬間、リディアたちの周囲に光の壁が現れ、景色が一変した。
「えっ、ここって……どこ?」
リディアが驚きながら辺りを見回すと、目の前には大きな迷路のような空間が広がっていた。大理石の壁が行く手を阻み、その上にはキラキラと輝く宝石のような光が浮かんでいる。
「迷路、か……面白くなってきたじゃないか。」
エリュディオンは薄く笑い、リディアの横に並んだ。
「みんな、準備はいい? 行こう!」
リディアは振り返り、メリーちゃんとタフィーちゃんに声をかける。二人(と一人)は頷き、光の迷路に足を踏み入れた。
「それで、どこに向かうつもりなんだ?」
エリュディオンが軽く腕を組み、余裕たっぷりの態度で尋ねる。
「うーん、まだ決めてないけど、新しい浮島を探すんだ!」
リディアは鼻歌混じりに答え、魔法の地図を広げる。地図はくるりと巻き戻り、矢印を浮かび上がらせて目指す先を示した。
「おお、いいじゃないか。退屈しのぎにはちょうどよさそうだ。」
エリュディオンはひらりと宙で一回転し、絨毯の周囲を悠々と飛び回りながら付いてくる。
メリーちゃんは「メェ!」と元気よく鳴いて毛をふわふわさせ、タフィーちゃんも絨毯の端で「ぷるぷるん!」と弾んでいる。リディアは楽しそうな二人を見て、改めて冒険心を膨らませた。
雲海の上を進むうち、地平線の先にちらりと見えたのは、白と金色の光を反射する美しい浮島だった。その輝きに引き寄せられるように、リディアたちは浮島に向けて絨毯の速度を上げた。
島に降り立つと、目の前には滑らかな大理石の地面が広がり、点々と配された噴水から水が煌めきながら溢れ出している。島の中央には壮大なアーチ型の橋が掛かり、その奥に続く階段の上には謎めいた彫刻が立っていた。
「なんだか、ここ……すごく立派な場所だね!」
リディアは目を輝かせながら噴水に近づき、手を水に差し入れて冷たさを感じ取る。
「ん? この彫刻、ただの飾りじゃなさそうだな。」
エリュディオンが軽く宙に浮きながら彫刻を指差した。その彫刻は、まるで古代の守護者を模したかのような姿で、不思議な輝きを放っている。
「どうする? 触ってみる?」
リディアは興味津々でエリュディオンを見上げた。
「ふむ、試してみるのも悪くないな。ただし、何か出てきても私は責任を取らんぞ?」
エリュディオンは肩をすくめてにやりと笑う。その軽薄な態度にリディアは少し呆れつつも、好奇心に勝てず彫刻へと近づいていった。
リディアは彫刻の足元にそっと手を触れた。ひんやりとした感触が伝わってくる。彫刻の表面には、細かな文字のようなものが刻まれているが、見慣れない模様だ。
「これ、読めそう?」
リディアは上を向いてエリュディオンに尋ねた。
彼は軽く眉を上げて彫刻に近づき、模様を一瞥した。
「ふん、これは古代語の一種だな。“試練を乗り越えし者、真実の輝きに至る”と書いてある。」
「試練……? なんだかワクワクしてきた!」
リディアはその言葉にすっかり興奮してしまい、彫刻の模様をさらに触りながら周囲を見回す。
すると、彫刻がほのかな光を放ち始め、足元の大理石の床に模様が浮かび上がった。それは、島全体に広がる複雑な幾何学模様のようで、少しずつ光が線を描きながら広がっていく。
「おい、何かが動き出したぞ。」
エリュディオンが少し後ろに下がり、興味深げに島の様子を見つめた。
「すごい……何が起きるの?」
リディアは光に導かれるように足を進め、階段の上へと向かった。タフィーちゃんとメリーちゃんも後ろからついてくる。タフィーちゃんは「ぷるぷるん!」と興奮気味に弾み、メリーちゃんも「メェ!」と声を上げてリディアに続く。
階段を登り切ると、大きな円形の広場が現れた。中央には透明な水晶の玉が浮かび、まるで命を宿しているかのように脈打っている。
「この水晶……ただの飾りじゃなさそうだね。」
リディアはそっと近づき、水晶の表面に指先を触れた。
その瞬間、水晶の中から柔らかな光が溢れ出し、空中に映像が浮かび上がった。そこには、美しい森や輝く星空、そして壮大な山々の景色が映し出されている。
「なんだこれ……? ただの景色?」
リディアが呟くと、エリュディオンが肩越しに映像を覗き込んだ。
「いや、これは記憶の映像だろう。恐らく、この島がかつて見ていた世界の断片だ。」
彼の声には珍しく真剣さが含まれていた。
「島が見ていた世界……?」
リディアは首を傾げたが、その言葉の響きに不思議なロマンを感じた。
「で、どうする? この試練とやらを本気で受けるつもりか?」
エリュディオンがニヤリと笑い、リディアを挑発するように言った。
「もちろん! こんな面白そうなもの、逃すわけにはいかないよ!」
リディアは自信たっぷりに胸を張り、水晶の前に立つと明るく宣言した。
その言葉に反応したのか、広場の光がさらに強くなり、足元の模様が再び動き始めた。次の瞬間、リディアたちの周囲に光の壁が現れ、景色が一変した。
「えっ、ここって……どこ?」
リディアが驚きながら辺りを見回すと、目の前には大きな迷路のような空間が広がっていた。大理石の壁が行く手を阻み、その上にはキラキラと輝く宝石のような光が浮かんでいる。
「迷路、か……面白くなってきたじゃないか。」
エリュディオンは薄く笑い、リディアの横に並んだ。
「みんな、準備はいい? 行こう!」
リディアは振り返り、メリーちゃんとタフィーちゃんに声をかける。二人(と一人)は頷き、光の迷路に足を踏み入れた。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流
犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。
しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。
遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。
彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。
転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。
そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。
人は、娯楽で癒されます。
動物や従魔たちには、何もありません。
私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。
和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。
黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。
私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと!
薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。
そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。
目指すは平和で平凡なハッピーライフ!
連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。
この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。
*他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。
私は、聖女っていう柄じゃない
波間柏
恋愛
夜勤明け、お風呂上がりに愚痴れば床が抜けた。
いや、マンションでそれはない。聖女様とか寒気がはしる呼ばれ方も気になるけど、とりあえず一番の鳥肌の元を消したい。私は、弦も矢もない弓を掴んだ。
20〜番外編としてその後が続きます。気に入って頂けましたら幸いです。
読んで下さり、ありがとうございました(*^^*)
若返ったオバさんは異世界でもうどん職人になりました
mabu
ファンタジー
聖女召喚に巻き込まれた普通のオバさんが無能なスキルと判断され追放されるが国から貰ったお金と隠されたスキルでお店を開き気ままにのんびりお気楽生活をしていくお話。
なるべく1日1話進めていたのですが仕事で不規則な時間になったり投稿も不規則になり週1や月1になるかもしれません。
不定期投稿になりますが宜しくお願いします🙇
感想、ご指摘もありがとうございます。
なるべく修正など対応していきたいと思っていますが皆様の広い心でスルーして頂きたくお願い致します。
読み進めて不快になる場合は履歴削除をして頂けると有り難いです。
お返事は何方様に対しても控えさせて頂きますのでご了承下さいます様、お願い致します。
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる