ルミエール・ヴェールの輝き―キャンディ職人と彫刻家の物語―

ねむたん

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エトワールの広場にて

第10話:時計職人の頼み

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第10話:時計職人の頼み

その朝、メリーの工房「ラ・ドゥース」は甘い香りで満たされていた。鮮やかな飴細工の花々が作業台を彩り、窓越しに差し込む光が飴に反射してきらめいている。メリーは新しいアイデアに取り組んでいたが、控えめなノックの音で顔を上げた。扉を開けると、背の高い初老の男性が立っていた。

「すみません、メリーさんですよね?」
その声に少し緊張が混じる。男性は厚手の作業用エプロンを身に着けており、手には微かに油の香りが残る。

「はい、そうです。どうぞお入りください」
メリーが笑顔で促すと、男性は少し遠慮がちに中へ入った。

「私はアルノーと申します。広場の時計塔の修理や調整を任されている時計職人です。でも今日は、修理の話ではなくて……」
彼は帽子を手で弄びながら続けた。

「実は、新しいカラクリ時計を作る依頼を受けたのですが、その外観や装飾のデザインに関してどうにもアイデアが浮かばなくて。そこで、メリーさんとセシルさんのお力を借りたいのです」

「セシルさん?」
メリーが問い返すと、アルノーは頷いた。

「ええ。あなたとセシルさんなら、きっと街の人々に愛される美しい時計を作れるだろうと、広場の委員会の方が推薦してくれたんです」

メリーは少し驚いたが、同時に心が躍った。広場に飾られる大きなカラクリ時計――それは、街全体の象徴になる作品だ。その一部を手掛けられる機会を思うと、自然と胸が高鳴る。

「面白そうなお話ですね。詳しく聞かせてもらえますか?」

アルノーはホッとしたように息をつき、メリーの隣に腰を下ろした。彼の顔に少しだけ緊張が解け、温かみが戻ってくる。

「この時計はただ時を刻むだけではなく、動きの中に物語を持たせるものにしたいんです。でも私はどうしても実用性にばかり目が行ってしまって……。そこで、お二人のような芸術的な感性が必要だと思ったんです」

メリーは少し考え込んだ後、頷いた。

「そのお話、ぜひセシルさんにも伝えたほうがいいですね。あの人なら、きっと素晴らしいアイデアを出してくれるはずです」

翌日、セシルの工房「ル・クリエール」で三人が顔を合わせた。セシルは最初、アルノーの話を聞きながら静かに頷いていたが、やがて目を輝かせた。

「街の中心に置かれる時計となれば、その装飾だけでなく、動きにも意味を持たせる必要がありますね。例えば、カラクリの動きに光と影のテーマを組み合わせるのはどうでしょう?」

メリーもすぐに反応した。

「いいですね!光る飴細工を組み込んだら、時計の一部が時間ごとにきらめきを放つようにできますよ」

セシルはその提案に興味を引かれたようで、顎に手を当てながら言った。

「それなら、光る部分を四季の移ろいと連動させてもいいかもしれませんね。春は桜、夏は太陽、秋は紅葉、冬は雪の結晶。動きの中でその情景が浮かび上がるようにして――どう思います?」

アルノーは目を丸くして二人のアイデアを聞いていたが、やがて笑顔を浮かべた。

「やっぱり、お願いしてよかった。これなら、ただの時計じゃなくて、街の人たちの心に残る作品が作れそうです」

こうして、三人で大きなカラクリ時計の構想が動き出した。街の広場にまた新しい魅力が加わる日が、少しずつ近づいている。
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