気まぐれ令嬢と微笑みの調停役〜お兄様もいるよ!

ねむたん

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おてんばな日々

王様とガイウス

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王様の間に足を踏み入れたガイウスは、少し驚いた顔をした。まさか、こんな理由で呼びつけられるとは思っていなかったからだ。

「おお、ガイウス!ようこそ!」王様は、いつものように豪快にガイウスを迎え入れた。だが、その後に続いた一言に、ガイウスはさらに目を丸くした。

「ところで、最近の面白い話を一つ聞かせてくれ。」

「え?」ガイウスは思わず声を上げた。「そんなことで呼んだのか?」

王様は、椅子に座りながらぷくっと頬を膨らませ、「だって、ガイウス、お前最近全然遊びに来てくれないだろう?たまにはこうやって話がしたいんだよ」とむくれる。

ガイウスは肩をすくめ、「そんなことで俺を呼びつけるな。全く面倒くさいな」と笑いながら座った。王様は、それでも満足げにガイウスを見つめ、「まあ、今はどうでもいいけど。さ、面白い話を頼むよ。」と言った。

ガイウスはひとまず深いため息をつき、腰を下ろして話し始めた。

「うーん、最近のことか……そうだな、まずはクラリスがカボチャの馬車をもらった話からだな。」

王様の顔がぱっと明るくなり、「カボチャの馬車?それは興味深い!」と声を弾ませる。

「そうだろ?」ガイウスは楽しそうに話を続けた。「あの馬車、大きすぎて庭のどこに置くかで揉めてな。結局、俺が力でどうにかしようとしたんだが、全然うまくいかなくて、最終的にはルシアンがうまく収めてくれたんだ。」

王様は笑い、「それは面白いな。だが、結局はルシアンが頼りになるのか?」と問いかけた。

「まあ、そういうことだ。あいつがいなければ、うまくおさまってなかったな。」ガイウスは肩をすくめて笑った。

「で、そのあと俺が馬がわりに馬車をひいた。クラリスはその中で優雅にティータイムだ。」

王様はぶふぉ、と吹き出した。

「で、次は?」王様が急かすと、ガイウスは少し考えてから答えた。

「それから、クラリスが最近部屋に飾ったものがあるんだ。あの熊の皮をクッションみたいに被せて、まるでティディベアみたいにしてるんだよ。」

王様は目を見開き、「ティディベア?それはすごい!」と感心しきり。

「お前も見たらきっと笑っちまうぞ。クラリスがその上にティアラを乗せて、まるで本物のぬいぐるみみたいにしてるんだ。なんであんなことを思いつくのか、俺にもわからんが、まあ可愛らしいといえば可愛らしいな。」

王様は腹をかかえて笑い、「クラリスは本当にお前を振り回すな。それにしても、熊の皮をどうしてそんなふうに使うんだ?」と言った。

ガイウスは得意げに笑いながら、「あれはまあ、完全にクラリスの気まぐれだ。だが、見ていると面白いし、あいつの自由な発想に感心するわ。」

「次は?」王様が尋ねると、ガイウスは少し間を置いてから言った。

「それから、あれだ、クラリスがルシアンに美少女ポーズの指導をしたんだ。」

王様は目を丸くして、「美少女ポーズ?」と不思議そうな顔をした。「ルシアンに?男だろ?」

「そうだよ。」ガイウスは肩をすくめながら、「クラリスがいきなり、『私が一番似合うポーズを教えてあげるわ!』って言い出してな。ルシアンは最初は戸惑ってたんだが、結局クラリスに無理やりポーズを取らされて、最後には俺も巻き込まれて、みんなでポーズを決める羽目になったんだ。」

王様は大笑いし、「それは想像できないな。ルシアンが美少女ポーズなんて、まったく見当がつかない!」と言いながら、テーブルを叩いた。

「まあ、ルシアンがどうしてあんなポーズを取らされたのかは知らんが、あの場の雰囲気は悪くなかったな。」ガイウスはそう言って、また肩をすくめた。

王様はすっかりリラックスし、ガイウスの話に耳を傾けながら、「あいかわらずクラリスに振り回されてばかりで大変だな。でも、話を聞いてると楽しそうだな。」と笑顔で言った。

ガイウスはやや照れくさそうに、「まあ、俺が楽しんでるからいいんだ。妹がああいう風に自由で面白いことをしてくれるのは、案外嬉しいんだよ。」と語った。

王様は満足そうに頷き、「そうか、それなら良かった。それにしても、君たちの話はいつも面白いな。」と微笑んだ。ガイウスは笑って、言った。

「そうだな、たぶん次もまた何か面白いことが起きるだろう。」
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