気まぐれ令嬢と微笑みの調停役〜お兄様もいるよ！

おてんばな日々

山でのピクニック

澄んだ空気が広がる秋の朝、クラリスはピクニックに出かけることを心待ちにしていた。バスケットにはサンドイッチ、スコーン、りんご、そして温かい紅茶がきちんと詰め込まれている。クラリスはすでにその日の計画を立てており、心はウキウキしていた。

「今日は山へ行くわよ！」とクラリスは嬉しそうに言った。

「うん、いいな。」ルシアンは静かに頷き、クラリスの喜びに微笑む。

「でも、せっかくなら、カボチャの馬車で行きたいわ！」クラリスは一番乗りたいものを口にした。小さな目が輝き、夢見心地の表情を浮かべる。

「カボチャの馬車はちょっと大きすぎるし、山道には不向きだよ。」ルシアンは落ち着いた声で答え、少し笑みを浮かべながら提案した。「普通の馬車の方が、道もスムーズに進めるし、おみやげも屋根に積んで帰れるよ。」

クラリスは少しだけ不満そうに眉をひそめたが、すぐに考えを変えて頷いた。「まあ、そうね。おみやげがいっぱいになるから、確かに普通の馬車のほうがいいかも。」

ルシアンはにっこりと微笑んだ。「それに、素敵なピクニックが待ってるんだ。楽しもう。」

クラリスは再び顔を輝かせた。「お兄様、おみやげをたくさん獲ってね！」と、ガイウスを見つめながら言った。

ガイウスはその声を聞いて顔を上げ、「任せとけ！いっぱい獲ってくるからな！」と豪快に答える。

ピクニック用のバスケットをしっかりと持ち、クラリス、ルシアン、ガイウスの三人は出発した。山道に足を踏み入れると、周囲の木々が色づき、風が心地よく吹き抜けていた。穏やかな日差しの下、何もかもが完璧だった。

途中、途中で見かける野生の花や小道を散策しながら、クラリスはすっかりリラックスした様子だった。ガイウスは狩りをしながら、「おい、クラリス、これだ！お前が欲しがったおみやげだぞ！」と、手に持った鳥を見せた。

「わあ、素敵！お兄様、ありがとう！」クラリスは喜びの声を上げると、さらにおみやげを要求する。

ルシアンは、二人のやり取りを微笑ましく見守りながら、時折道を確認し、のんびりとした雰囲気を楽しんでいた。「おみやげも良いけれど、ピクニックを楽しむのも大切だよ。」と、穏やかな言葉で二人を見守りながら言う。



青空の下、花畑の中にバスケットを広げた一行は、穏やかな午後を楽しんでいた。黄色やピンクの花々が風に揺れ、どこまでも続く青い空が広がる中、クラリスは嬉しそうにサンドイッチを頬張った。

「おいしい！」と満面の笑みを浮かべながら、クラリスは言った。「こんなに綺麗な場所で食べると、なおさら美味しく感じるわ。」

ルシアンは紅茶を注ぎながら、静かに頷いた。「景色も良いし、心も落ち着くね。」彼の目は穏やかで、まるで世界が優しく包み込むかのように感じられた。

ガイウスはスコーンを食べおえ、リンゴを手に取るとがぶりとかじった。大きな音を立てて、皮を食いちぎると、口の中いっぱいに果汁が広がった。

「お前は口がちいさいからな。」と、ガイウスは笑いながら妹にリンゴを差し出した。「ほら、これくらいの大きさじゃないとうまく食べられないだろ？」と、ガイウスはリンゴを手でくだき、食べやすいサイズのかけらをクラリスに渡す。

クラリスは少し驚いたが、喜んでそのリンゴを受け取った。「さすが、お兄様！」と、嬉しそうにかぶりつく。

一方、ルシアンはその光景に目を見開き、驚愕の表情を浮かべた。「…それは、少し乱暴じゃないか？」と、引き気味に言うが、すぐに自分のリンゴをナイフで慎重に剥きながら、「僕はこれがいい。」と小さく呟いた。

食後のひととき、みんなでゆっくりと散策に出た。道端に咲く野花を見ながら歩くうちに、ガイウスが目を輝かせた。

「おお、これだ！」ガイウスは近くの茂みにしゃがみ込むと、地面から何かを引っこ抜く。「これが山菜だな。街では手に入らない食材だぞ。」

ルシアンはガイウスの野生児ぶりを見守っていたが、ガイウスの指示に従ってその辺の木の枝を拾って、山菜を集め始めた。「それにしても、ガイウス様は本当に山のことに詳しいな。」と、感心したように言った。

ガイウスは満足そうにうなずき、「まぁ、クラリスの兄だからな。」と得意げに答えると、すぐに次の収穫を見つけるべく茂みを覗き込んだ。

その間に、クラリスは手に取った花を髪に飾りながら、「お兄様たち、そんなに集めてどうするの？」と尋ねる。「山菜もきのこも、馬車に載せるにはちょっと多すぎるわよ？」

「心配するな。」とガイウスは軽く笑った。「あの馬車、前後にも荷物をくくりつけることもできるからな。」彼はあっという間に山の恵みを収穫していく。

ルシアンはやっぱり冷静で、「帰りに馬車が重すぎて、進まなくならないといいけど。」と、苦笑しながらも、しっかりとガイウスのうしろについて手伝った。

結果、馬車は山菜やきのこで溢れ、ガイウスの狩の成果も屋根に山積みになっていた。