終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん

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俺たちは、幽霊の部屋の前まで来ていた。

ふすまの前で足を止め、じっと飴玉を供えた場所を見つめる。

「……誰が確認する?」

俺が小声で尋ねると、安田がサッと一歩引いた。

「俺、ちょっとカメラ係やるわ」

「いやいや、誰も撮影しろなんて言ってねぇだろ」

藤木が呆れた顔をする。

「ほら、怖がってないで開けちまいな!」

田辺さんは豪快に安田の背中をバン!と叩く。

「ぐっ……お、おばちゃん……容赦ねぇ……」

「何言ってんだい、あんたたち男だろ?」

「いやもう、そういう問題じゃ……」

ぶつぶつ文句を言いながら、安田が震える手でふすまを開ける。

ス……

全員が息を飲んだ。

「……あれ?」

そこには、飴玉が綺麗になくなっていた。

「……え、マジで?」

安田が目を丸くする。

「いや、待てよ……虫とか、小動物が持ってった可能性も……」

藤木が現実的な線を考えようとするが、田辺さんは「いやいや、そりゃないよ」と笑う。

「だって、ほら」

俺たちが視線を向けると、飴玉を供えた場所のすぐ近くの畳に、うっすらと小さな手形が残っていた。

「……うわあああああ!!!」

安田が飛び退く。

「マジかよ……」

斉藤が目を細める。

「飴玉、食べたってことか?」

高橋が冷静に言う。

「いや、マジでどういうことなんだよ……」

安田が頭を抱える。「……もう、無視できねぇじゃん」

「まぁ、いいことなんじゃないの?」

田辺さんは愉快そうに笑う。「受け取ってもらえたってことは、少なくとも怒ってるわけじゃないし」

「……そう、なのか?」

「そうさ。お供えを受け取るってことは、あんたたちを認めたってことだろ?」

「認めた……?」

「これからもよろしくってことかもしれないよ?」

「いや、ちょっと待って、それはそれで嫌なんだけど……!」

「まぁまぁ、幽霊がいても暮らしていけるでしょ!」

「そんな前向きな……」

俺たちは苦笑しながら、飴玉の消えた部屋を見つめた。

これでこの幽霊が満足してくれたならいいんだが……。

ただ、この旅館での生活は、ますます奇妙なものになりそうだった。

「……で、問題はコイツらをどうするかだな」

旅館の窓から外を覗くと、ゾンビたちは未だにうろついていた。幸い、数はそれほど多くないが、それでも放置しておけばじわじわと増えていく可能性がある。

「このままにしといたら、他のゾンビも引き寄せるかもしれねぇな」

藤木が腕を組んで言う。

「だな。旅館の場所がバレるのは避けたい。ここは静かで安全なのが強みなんだから」

「うーん……どうやって処理するかだな」

安田が頭をかく。「まともに戦ったらリスク高いし、なるべく安全にやりたいよな」

「俺たち、ゾンビに関しては近接戦闘向いてないからな……。政府の推奨してた方法、つまり“押さえ込み”と“閉じ込め”を活用するのが良さそうだな」

「罠にかけるとか?」

「あるいは、地形を利用して転倒させるとか」

「なら、山道を利用するのはどうだ?」

高橋が提案した。「この辺りの地形を考えると、坂道に誘導して転ばせるってのが現実的かもしれん」

「確かに、ゾンビはバランス感覚が悪いし、急斜面に誘導すれば勝手に転がってくれるかもしれないな」

「ちょっとちょっと、あんたたち、そんな面白そうなことやるなら私も手伝うよ!」

田辺さんが腕をまくる。

「いやいや、おばちゃん、今回は夕飯作りをお願いしたいんですよ」

「え~? せっかくの戦力なのに~」

「おばちゃんの料理の方が戦力ですって!」

「まぁ、そう言われると悪い気はしないけどさ……しょうがないねぇ、今日はたっぷり旨いもん作ってやるから、しっかりゾンビ退治してきな!」

田辺さんは満足そうに台所へ向かっていった。

「さて、じゃあ作戦開始だな」

俺たちは旅館の外にいるゾンビたちを、なるべく安全に処理するための作戦を練り始めた。
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