終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん

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ダム管理施設での生活は、数ヶ月が経とうとしていた。最初は荒削りだった日々も、今ではすっかり落ち着いている。村との物々交換も安定し、ダムの電力と水のおかげで最低限の生活は維持できていた。

ローカルネットワークも少しずつ広がりを見せている。最初は限られた範囲でのやりとりだったが、発電所や通信設備が復旧する地域が増えるにつれ、新たな接続拠点が増えてきた。

「……これ、もう全国のどこかで、ネットワークの維持を専門でやってるやつがいるな」

安田が端末を眺めながらぼそりと呟く。

「それだけの設備と技術が残ってるってことだな」

藤木が画面を覗き込みながら言った。

ネットワークの掲示板には、新たに接続された地域の一覧が投稿されている。東北、関西、四国、九州──。次第に広がりつつあるこの繋がりは、俺たちが思っていたよりも速いペースで成長していた。

「ほら、見てみろよ。政府の復興活動についての報告も入ってる」

安田がログをスクロールする。

「都市部の一部が再開発されてるみたいだな。どうやら政府も本格的に復興に乗り出したらしい」

「……すげぇな」

斉藤が腕を組んで画面を覗き込む。

「これが本当なら、いずれまともなインフラも戻ってくるかもしれねぇな」

「でも、それが俺たちにとっての正解かどうかは別の話だけどな」

藤木が静かに言った。

確かに、政府が復興を進めることは悪いことじゃない。むしろ、日本が再び機能するなら、それに越したことはない。

だけど、だからといって、俺たちがそこに入る必要はあるのか?

「……これさ、今のままでも生きていけるなら、わざわざ移動する必要ねぇんじゃね?」

安田が呟く。

「まぁ、そうなるな」

藤木も頷く。「結局のところ、政府の保護下に入るのか、今のままでやっていくのかって話だが……」

「政府の復興が本格化したら、ここも管理対象になるのかねぇ?」

田辺さんが手を組んで考え込む。

「可能性はあるが、当分は大丈夫だろうな。まずは都市部のインフラが優先されるはずだし、山間部の拠点なんて後回しになるだろ」

「ってことは、しばらくはこのままでいいってことだ」

俺たちは、互いに顔を見合わせた。

「結局、俺たちがどう生きていくかって話なんだよな」

斉藤がぼそりと呟く。

「今のままでも生きられる。ネットワークがあれば、各地の人間と繋がれる。わざわざどこかに集まる必要はないってことだ」

「そうだな」

俺は静かに頷く。

「それぞれが、それぞれの場所で生きていけるように、この繋がりを守る。それが、今の俺たちにできることなんじゃないか?」

しばらく、誰も言葉を発さなかった。

遠くで風が吹く音が聞こえる。

田辺さんが、にっこりと笑った。「まぁ、ここでの暮らしも気に入ってるし、私はどっちでもいいよ。あんたたちが決めたことなら、それが正解さ」

佐川さんはゆっくりと頷いた。「ここは水も電気もある。わざわざ移動する必要はねぇべ」

「んじゃ、決まりだな」

安田が伸びをしながら言う。「政府がどう動こうが、俺たちはここでやっていく」

「必要になったら手を貸す。でも、無理に従う必要はないってことだ」

「俺たちは俺たちのやり方で生きる。それでいいんじゃね?」

***

夜。

掲示板を覗くと、新しい投稿が増えていた。

「海外との接触に成功した」

そのタイトルを見て、俺は思わず目を見開いた。

「……マジかよ」

藤木が画面を覗き込む。

「ついに、世界と繋がったってことか」

俺たちは、画面の文字をじっと見つめる。

「……日本だけじゃない。生き延びてるのは、俺たちだけじゃなかったんだ」

「これから先、もっと広がっていくのかもな」

「そうかもな」

俺は小さく笑いながら、画面を閉じた。

──終焉列島、ここに生きる者たちの物語は続いていく。
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