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1章
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しおりを挟む陽菜の奇妙な出来事から数日が経った。
海斗たちはそれぞれに気にしながらも、陽菜の様子が特に変わった様子もなく、普段通りに過ごしていることに胸を撫で下ろしていた。
「やっぱり鼻血のせいでぼーっとしただけなんじゃない?」
七海が机に頬杖をつきながら言った。
「夢でも見たのかもな。あれだけ鼻血出たら気持ち悪くもなるだろうし」
海斗がそう言って笑うと、颯太も頷いて「でも、ひなちゃん怖いこと言ってたよね。もう言わないよね?」と尋ねる。
「覚えてないんだから、そりゃ言わないだろ」
悠人が淡々と答えたが、スケッチブックに描いていたのは滝壺とそこに落ちる光の筋。どこか不思議な空気を漂わせる絵に、七海がちらりと目をやった。
「それ、何の絵?」
「この前の川のイメージだよ。ちょっとかっこよく描きたくて」
悠人はさらりと言いながら鉛筆を走らせる。
その横で、陽菜は気にする様子もなく、折り紙で動物を作っていた。
「ほら、見て。うさぎ!」と颯太に見せると、颯太が目を輝かせた。
「かわいい!これ僕にちょうだい!」
「しょうがないなぁ。でもちゃんと大事にしてね!」
陽菜が微笑んで渡すと、颯太は「ありがとう!」と満面の笑みを浮かべた。
教室の中はすっかり普段通りのにぎやかさを取り戻していた。
放課後、5人はいつものように学校を出て、島のどこかで遊ぶことにした。今日は七海の提案で「大きな木を探しに行こう」という話になった。
「森の奥に、すっごい大きな木があるんだって!お父さんが教えてくれたの!」
七海が勢いよく話すと、海斗が苦笑いしながら肩をすくめた。
「またそういうのかよ。でも、面白そうだから行ってみるか」
「迷子にならないよね?」
陽菜が少し心配そうに言うと、七海が「迷子なんかなるわけないでしょ!」と胸を張る。
「じゃあ、行こう行こう!」
颯太が元気よく手を挙げ、悠人も「大きな木って、どんな形なんだろうな」と興味深げについていく。
道中、七海が先頭に立って小さな小道をずんずん進む。颯太は道端の草むらを蹴ったり、バッタを見つけては追いかけたりして大騒ぎだ。
「颯太、置いていくよー!」
陽菜が振り返って声をかけると、颯太が慌てて駆け寄ってくる。
「待ってよー!」
森の奥へと進むにつれ、木々が生い茂り、日差しが柔らかくなってきた。そこで、悠人がふと立ち止まった。
「あれ、あそこじゃない?」
彼が指さした先には、まるで空に届くかのような大きなガジュマルの木がそびえていた。木の根は地面に広がり、複雑に絡まり合っている。
「すごい!めっちゃ大きい!」
七海が目を輝かせて木に駆け寄ると、颯太も後を追った。
「この木、登れるかな?」
「やめとけよ。落ちたら大怪我だぞ」
海斗が釘を刺すと、陽菜も「そうだよ。遊ぶだけならいいけど、危ないことはだめ!」と真面目に注意した。
「でも、この木、探検できそうじゃない?」
悠人が根元を見ながら呟くと、七海がすぐに反応した。
「いいね!この木の下、隠れんぼしたら絶対面白いよ!」
「やるやる!」
颯太が手を挙げ、結局5人で木を中心に隠れんぼが始まった。
夕方になり、5人は森を抜けて学校へ戻る道を歩いていた。夕焼けに染まる空を見上げながら、陽菜がふと口を開く。
「なんか最近、毎日がすごく楽しいね」
「当たり前だろ!俺たち、最高のチームだからな!」
海斗が笑うと、七海が「その通り!」と元気よく手を挙げた。
颯太は手に持った折り紙のうさぎをじっと見つめながら、小さく笑っていた。悠人は空の雲を見上げながら「またみんなであの木に行こうな」と呟いた。
島の空気に包まれた夕暮れの道には、子どもたちの笑い声が響いていた。奇妙な出来事も、鼻血も、まるで夢だったかのように薄れていき、またいつものにぎやかな日常がそこに戻っていた。
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