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1章
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しおりを挟む医師が持ち帰った川の水の瓶と、滝へ現れた子どもたちの話を受けて、大人たちはただならぬ表情を浮かべて駆けつけてきた。それぞれの家族が子どもたちを迎えに来て、滝のそばで緊張感の漂う対面が始まった。
「海斗、七海!」
父親が険しい顔で叫ぶ。後ろには心配そうな母親もいる。
「陽菜!」
陽菜の母も駆け寄ってきた。颯太の両親と悠人の祖父母も、それぞれ子どもたちを見つけ、安堵と怒りが入り混じった表情をしている。
「あなたたち、なんでこんなところにいるの!」
陽菜の母が問い詰めると、陽菜は怯えながらも口を開いた。
「だって、先生もお母さんも変だったから…何が起きてるのか知りたかったの…」
「言い訳はいい!危ないことをするんじゃない!」
母親の声は強いが、その中には明らかに動揺が混じっていた。
「でも…川の水が関係してるんだよ!」
七海が勇気を出して声を張り上げる。
「みんな変になるのって、この水が原因じゃないの?」
その言葉に、大人たちは一瞬息を呑んだ。
「川の水が…?」
悠人の祖父が深い皺を刻んだ顔で呟く。
「祭りの禊のとき、みんなでこの川に入ったんだ」
悠人が静かに説明する。
「それから先生も、お母さんも、変なことを言い始めた。それに、僕たちもおかしくなりそうなときがあった…」
「鼻血を出して、妄言を吐くような…そんなことが続いてるんだ」
海斗が付け加えると、大人たちは顔を見合わせた。
「そんなことが…」
陽菜の母は驚いたように口元を押さえた。
「じゃあ、この川の水が原因で…みんなおかしくなってるってことなのか?」
颯太の父親が混乱した様子で言うと、医師が前に出てきた。
「まだ調査段階です。確証はありませんが、滝の水に何かしらの異常がある可能性は高い。現時点では、この水に触れないことをお勧めします」
その言葉に、大人たちの顔がさらに険しくなった。
「でも!」
七海が声を上げる。
「私たち、知りたいの!だって、お父さんたちも何も教えてくれないし、先生だって隠してる。だったら、私たちで調べるしかないじゃん!」
「そうだよ!」陽菜も加わる。「大人たちが何も言わないから、私たちが勝手に動いちゃったんだよ!」
「勝手に動くのが正しいって言うのか!」
海斗の父が怒鳴ったが、その声にはどこか不安と戸惑いが滲んでいた。
「そうじゃないけど!」海斗も声を荒げる。「俺たちだって、この島で生きてるんだ。何が起きてるか知る権利くらいあるだろ!」
その言葉に、大人たちは何も言い返せなかった。ただ、目を伏せ、しばらくの沈黙が続いた。
医師の促しで、子どもたちはそれぞれの家族に連れられて帰宅することになった。
「今日はもう疲れてるだろう。家でゆっくり休みなさい」
医師は静かに言ったが、その声には何か含みがあった。
帰り道、七海は父に尋ねた。
「本当に何も知らないの?大人たちも、私たちと同じなの?」
父は答えず、ただ七海の手を強く握るだけだった。
陽菜も、母の横顔をじっと見つめながら歩いた。
「お母さん、本当は知ってるんじゃないの?」
「…知らないわ。ただ、何かおかしいことが起きているのは確かよ。でも、あなたを守りたい。それだけよ」
母の声は震えていた。
その夜、島は不思議なほど静かだった。川の水が原因かもしれない――子どもたちの言葉によって、大人たちの間にも動揺が広がっていた。
しかし、それでも異変の本当の原因はまだ見えない。島全体を包む不穏な空気は、ますます濃くなっていくようだった。
子どもたちはそれぞれの家で思った。
「本当に、この島に何が起きているのだろう…?」
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