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1章
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しおりを挟む次の日、子どもたちは放課後になると、再びあの滝へ向かうことを決意した。医師から「近づくな」と言われたが、謎を解き明かしたい気持ちは抑えられなかった。
「川の水に何かがあるなら、それを確かめるしかないよね」
七海が真剣な顔で言う。
「でもさ、また何かあったらどうするの?」
陽菜は不安そうに眉をひそめる。
「そのときは、その医者に助けてもらえばいいだろ。俺たちだけじゃ何も変わらないし」
海斗が言うと、悠人も頷いた。
「滝で何が起きているのか、見ないと進めないからね」
颯太も少し怖がっていたが、みんなについていくことに決めた。
「僕、ちゃんと見るよ。怖くても!」
滝の近くに着くと、祭りの日とは違う静けさが漂っていた。川の音だけが響き、辺りには誰の姿も見当たらない。
「何も変わってないように見えるけど…」
七海が呟く。
「本当に川の水がおかしいのかな?」
陽菜が慎重に近づき、水面を覗き込む。
「普通に見えるけど…」
颯太が川に手を伸ばそうとすると、海斗が慌てて止めた。
「やめろ!触るな!」
「でもさ、水が原因なら、この水をどうやって調べるの?」
七海が腕を組みながら言うと、悠人が静かに提案した。
「僕たちでサンプルを取ってみるしかない。医者みたいにフラスコはないけど、空き瓶なら持ってきたよ」
悠人が持参した小さな瓶を川に入れ、水を少しだけすくった。その手つきは慎重で、みんなが息を飲んで見守った。
「これで何かわかるの?」
颯太が不安げに聞くと、悠人は瓶をしっかりと蓋を閉めながら言った。
「わからないけど、これを医者に見せるしかない。僕たちじゃ調べられないから」
「じゃあ、この瓶を持って帰って…」
陽菜が言いかけたとき、七海が急に顔を上げた。
「待って!誰か来る!」
茂みの向こうから足音が聞こえ、子どもたちは慌てて隠れた。しかし、その足音の主は意外な人物だった――あの医師だった。
「また君たちか」
医師は少し険しい顔で近づき、瓶を持っている悠人をじっと見つめた。
「何をしている?」
「川の水を…調べたくて…」
悠人は正直に答えた。
医師はしばらく黙っていたが、小さくため息をついて言った。
「危険だと言ったはずだ。それでも来たのか?」
「だって、みんなおかしくなってるんです!」
七海が声を上げた。
「先生も、お母さんも、あなたも原因を知ってるんでしょ?何で教えてくれないの?」
「まだ調査が終わっていないからだ」
医師は厳しい表情を崩さずに答えた。
「仮説が間違っている可能性もある。それを大人たちに伝えるわけにはいかないし、まして君たち子どもを危険にさらすわけにはいかないんだ」
「でも、私たちももう巻き込まれてるんです!」陽菜が訴えた。「みんな鼻血を出して、おかしなことを言い出して…これが何なのか知りたいんです!」
医師は再び黙り込み、滝の水面を見つめた。そして、やがて重々しい声で言った。
「まだ確証はないが、この水には普通ではない何かが含まれている可能性が高い。だから、この水に触れるのはやめなさい」
「でも、じゃあどうやって原因を調べるんですか?」
海斗が問い詰めると、医師は瓶を指さした。
「君たちが取ったこの水、私が調べる。それで何かわかるかもしれない」
医師は瓶を手に取り、子どもたちを見渡した。
「君たちには危険な場所に近づかないようにしてほしい。それが一番だ」
「でも、私たちだけじゃなくて、大人たちも変になってるんだよ!」
七海が食い下がる。
「わかっている。それでも、島全体を守るためには、まず原因を突き止めなければならないんだ」
医師はそう言って静かに立ち去ろうとした。
しかし、海斗はその背中を見送りながら呟いた。
「俺たちは何もしないで待ってろってことかよ…」
七海も拳を握りしめた。
「絶対に見つけてやる。私たちだって、島のことを知る権利があるんだから!」
子どもたちは医師の言葉を受け止めながらも、諦めることはなかった。
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