沈みゆく赤い島

ねむたん

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1章

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 次の日、子どもたちは再び集まり、これまでに起きた異変について話し合っていた。七海の提案で、島外から来た医師の跡をつけ、その正体や目的を突き止めようということになった。

「先生も、お母さんも、なんか変だったよね…」

 陽菜が不安げに言うと、海斗が腕を組んで答えた。

「大人たちは何も教えてくれないけど、あの医者なら何か知ってるかもしれない」

「でも、見つかったら怒られない?」

 颯太が少し怯えた声で言うと、七海が手を振って笑った。

「平気だよ!私たちだって探偵みたいにやればいいんだから!」

 子どもたちは島のあちこちを歩き回り、医師の姿を探した。そして夕方、港近くの倉庫でリュックを背負い、何かの資料を見ている医師を発見した。

「いた!」

 七海が声を潜めて指を差した。

「尾行するぞ。静かにな」

 海斗が小声で指示を出し、5人は物陰から医師の動きを観察した。

 しかし、すぐに医師は気配に気づいたのか、振り返って子どもたちの方を見た。

「君たち、そこにいるのはわかってるよ。出ておいで」

 その声に、子どもたちは驚いたが、隠れ続けることはできず、仕方なく姿を現した。

「何をしてるんだい?私のことをつけてたのか?」

 医師は少し鋭い目つきで尋ねた。

 七海が一歩前に出て言い返す。

「だって、先生もお母さんも変なんだもん!あなた、何か知ってるでしょ?」

「私が知っていることを話す前に、まず君たちの話を聞かせてほしい。何が起きているんだい?」

 医師は落ち着いた声で問いかけた。


 子どもたちはこれまでに起きたことを順番に話し始めた。先生が突然鼻血を出して妄言を吐いたこと、颯太も同じようなことがあったこと、そして陽菜と陽菜の母親も同じ症状を見せたこと。

「…それで、みんな鼻血が出て、その後は何も覚えてないんです」

 陽菜が最後に言うと、医師は顔をしかめ、額に手を当てた。

「君たちも川に入ったのか?」

 医師が静かに尋ねた。

「えっ…川?」

 海斗が聞き返す。

「滝があるあの川だよ。祭りの日に禊をしたと言っていたね。あのとき、みんな川の中に入ったのかい?」

 子どもたちは顔を見合わせ、七海が答えた。

「うん…全員入ったよ。だって禊ってそういうものだって言われてたから」

 その答えを聞いた医師は、しばらく黙り込んだ。そして小さくため息をつき、言った。

「…やはり、そうか」

「何が『そうか』なんですか?」

 七海が身を乗り出して問い詰めるが、医師はゆっくりと首を振った。

「まだ調査をしている段階だから、はっきりしたことは言えない。でも、あの川の水に何かしらの異常がある可能性が高い」

「川の水…?」

 悠人が呟いた。

「君たちが禊をした後、先生や大人たちにも同じ症状が現れているということは、何かが水を通じて広がっているのかもしれない。でも、それが何なのか、まだ突き止められていないんだ」

「じゃあ、大人たちも原因を知らないの?」

 海斗が尋ねると、医師は静かに頷いた。

「そうだ。私も呼ばれたばかりで、まだ原因を探っている最中だ。島の人々は異変に気づいているが、誰も何が起きているのかわかっていない」

「…でも、みんな変になっちゃってるのに?」

 陽菜が不安そうに聞くと、医師は少し険しい表情で答えた。

「それが、この状況の厄介なところだ。何が引き金になっているのか、完全に解明するには時間がかかる。それまでは、君たちも川や滝には近づかないように」

「そんな…でも、私たちだって何かしたい!」

 七海が抗議するように言うと、医師は少し考えた後、子どもたちをじっと見つめた。

「今のところ、君たちにできることは、自分たちの体調をよく観察することだ。もしまた誰かが異変を感じたら、すぐに教えてほしい。いいね?」

 子どもたちは不満そうだったが、仕方なく頷いた。

 医師が立ち去った後、子どもたちは再び滝の方を見つめた。

「川の水が原因なんて、本当にそんなことあるのかな…」

 陽菜が呟くと、悠人が静かに頷いた。

「でも、どうすればいいの?」

 颯太が不安そうに尋ねると、海斗が拳を握りしめた。

「俺たちでちゃんと調べるしかない。もう一度、あの川に行こう」

 その言葉に、全員が無言で頷いた。滝と川、そして島に広がる異変――全ての答えがそこにあるように思えたのだ。
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