左遷太守と不遜補佐 ―柳は青、花は赤―

佐竹梅子

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赤髪の花婿・14

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太守は即座に漣緋ならびに翠佳を、正式に呼び寄せるための触れを発した。
しかしそれが届けられるよりも早く、太守執務室の戸をひとりの娘が敲く。

「……翠佳」
「太守様……」

赤伯と翠佳は短く呼び合うと、しばらく視線を合わせていた。しんと流れる沈黙は一種の後悔をはらんでいた。

「……お分かり、なのね……」

口火を切ったのは翠佳だった。可憐な声はやけに冷静に響く。

「ほかに、方法はなかったのか?」
「方法、とは……なんなのでしょう。我が家の家系は代々太守に仕え……そして婿に迎えているのです。恋心も知らないままに、ただ家の習わしとして」

ひとりの乙女が、苦々しげに語るのは彼女を縛る鎖。その鎖はまるで目に見えるように重くて冷たい。

「わたくしも当然そうなるのだと、思っていました。だから、こうするしかなかったのです……」

翠佳は下げた固定布から腕を外すと、その包帯を解いて見せた。

そこには瑞々しく白い腕があった。

「太守様、青明様……ごめんなさい」

翠佳自らの告白により、青明の疑いは晴らされた。

彼女の家は偽りの大事を起こしたとして、補佐の資格を永代に渡って返還、そして政務への関与についても、翠佳以降三代は不許可とした。
しかし赤伯の執り成しにより、この都市での再起は許されたのだった。

 ◆ ◆ ◆

「……お湯、ありがとうございました」
「おう、お帰り」

寝台に腰かけ、燭台の灯りで書を読んでいた赤伯が顔を上げる。

いろいろな手続きで、青明が解放された頃には既に陽が落ちていた。
環境の悪い牢にいたこともあり、今夜ばかりは太守館に留まることに青明も同意した。

「鏡、お借りしてよろしいですか?」

泥や埃を落とし、湯気をまとう青明は髪を下ろしている。

「いま? まあいいけど」

備えられてはいるが、あまり使っていない鏡台を出してやり、燭台を持って赤伯も傍へ寄る。
青明はその前に座りながら、髪をまとめはじめた。

「あの……今更ですが、どうして今回のこと、すべてお分かりに?」
「簡単だろ。翠佳の腕についてた血は、羊のにおいがしたし」
(野生児……)
「ん? いま失礼なこと考えなかったか?」
「いいえ、なにも?」

さらりと受け流しながら髪を結い上げると、まとめた髪へ簪を差し込む。

「それに、青明がこれを使わないのが不自然だった」
「あっ……」

簪を抜かれて、まとめたばかりの髪が落ちていく。
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