FREEDOM〜自由の世界へ〜

第十ニ章 陰謀

３

ミクが麗しい瞳を合わせると、ハンスの全身が火照り、熱くなりました。

 「ねぇ、ハンス。私……あなたしか信じられる人がいないの。私の言うことを聞いてくれたら、私…あなたのことがもっと好きになるわ」


ミクはそっとハンスに口付けをしました。

 「ミ……ミクさん」

 恍惚の出来事に、ハンスの目はトロンと力が抜けました。


 「ねぇ、ハンス。私の言う事……聞いてくれるわよね」


ミクが、全ての男を惑わす妖艶な瞳を向けた……

その瞬間、ハンスは完全にミクの虜になったのでした。




 海のほとり。
ミクの別荘のベッドの上に、ミクとハンスはいました。

 「ねぇ、ハンス。あの二人、きっと……先生達を言いくるめて、すぐに謹慎室から出て来ると思うの。
 私、先生も信用できない。
もしかしたら、あの二人と一緒になって私のことを悪者にするかも知れないわ」

 「そんな……酷いのは、あの二人。ミクさんは何も悪くないのに、どうして？」


 憧れのミクと二人、ベッドの上……
そんな状況にガチガチに固まりながらも、ハンスは恐る恐る尋ねました。


 「先生も……フルートの先生達も、いつも私の体をジロジロ見てた。
すっごくいやらしい目付きで……
私、いつも先生達の目に怯えてたわ。
ウィリアムには、私の全てを見せてしまった……
だから、あいつは『追想』の旋律で私の裸体の記憶を先生達に伝える代わりに、処分を免れる……
きっと、その取引をするわ」

 「何だって……」


ハンスには、信じられない言葉でした。

 真面目なハンスにとっては、先生達は誰よりも信頼する、絶対的存在。
 彼らがそんなことをするとは、到底思えませんでした。

ハンスがその時、微塵でも正常な感覚を持ち合わせていたならば、その言葉に疑いを持ったでしょう。

しかし、ハンスは完全にミクの虜になってしまっていたのです。


 「許せない。ウィリアムも、リクも、先生達も……」

ハンスの目に、最愛の女性を汚す者達に対する憎悪の炎がメラメラと燃えました。