132 / 304
第十七章 真実を探しに
2
しおりを挟む
アリルはカイルに話しました。
ウィリアムとリクがミクを襲った事件のこと。
襲った二人は謹慎室に入れられたけれど、すぐに出てきたこと。
二人は放送部員のハンスを使って自分達を眠らせ、放送室を占拠して学校の皆の記憶を消す旋律を奏でたこと。
そして、二人に自白剤を飲ませて真実を聞こうとしたけれど……
二人を呼びに行ったハンスは、これらの事件に関する一切の記憶を失くしたこと。
「そうか……」
カイルは神妙な面持ちをしました。
(しかし、腑に落ちないな。
じゃあ、どうしてミクは隠すんだ)
カイルは釈然としませんでした。
仮に、話の通り、リクとウィリアムが全て悪いのだとしたら、彼らの行動……
全校生徒とハンスの記憶を消すという行為の辻褄は合います。
しかし、そうだとしたら、ミクには全く落ち度はない。
あそこまで頑なに、ミクがその出来事について隠そうとしたことが腑に落ちませんでした。
「その前……」
カイルは口を開きました。
「ウィリアムとリクがミクを襲う事件の前、何か変わったことはなかったか?」
放送部員達は顔を見合わせました。
「そう言えば……」
アリルが口を開きました。
「ウィリアムが、ミクの家に挨拶に行ってたな」
「ミクの家?」
アリルは頷きました。
「あの前、ウィリアムとミクは付き合ってて、ウィリアムがミクの家に挨拶に行くとかで」
「ふーん」
(家に挨拶にまで行ったウィリアムが、わざわざミクを襲うか?)
カイルはますます腑に落ちませんでした。
(ミクの家……そこに、真実を知る手掛かりがありそうだな)
カイルは、直感的に思いました。
「あ、ヤバい。もう遅刻する!」
放送部員達は慌てました。
「おぅ、早く行けよ。この件については、俺が何とかしとくからさ」
「カイル、ありがとう。頼りにしてるぜ!」
急いで学校への道に戻ろうとする放送部員達の背後で、カイルはそっと笛に口をつけました。
(こいつらが知ってることは……きっと厄介なことだからな)
奏でたのは『喪失』の旋律。
カイルほどの天才であれば、自分が体験したことでなくても、話を聞くだけでその件についての記憶を消すことができるのです。
カイルが背後から奏でた旋律によって、放送部員達は事件の記憶、そして自分達がカイルと会った記憶までも、綺麗に喪失したのでした。
ウィリアムとリクがミクを襲った事件のこと。
襲った二人は謹慎室に入れられたけれど、すぐに出てきたこと。
二人は放送部員のハンスを使って自分達を眠らせ、放送室を占拠して学校の皆の記憶を消す旋律を奏でたこと。
そして、二人に自白剤を飲ませて真実を聞こうとしたけれど……
二人を呼びに行ったハンスは、これらの事件に関する一切の記憶を失くしたこと。
「そうか……」
カイルは神妙な面持ちをしました。
(しかし、腑に落ちないな。
じゃあ、どうしてミクは隠すんだ)
カイルは釈然としませんでした。
仮に、話の通り、リクとウィリアムが全て悪いのだとしたら、彼らの行動……
全校生徒とハンスの記憶を消すという行為の辻褄は合います。
しかし、そうだとしたら、ミクには全く落ち度はない。
あそこまで頑なに、ミクがその出来事について隠そうとしたことが腑に落ちませんでした。
「その前……」
カイルは口を開きました。
「ウィリアムとリクがミクを襲う事件の前、何か変わったことはなかったか?」
放送部員達は顔を見合わせました。
「そう言えば……」
アリルが口を開きました。
「ウィリアムが、ミクの家に挨拶に行ってたな」
「ミクの家?」
アリルは頷きました。
「あの前、ウィリアムとミクは付き合ってて、ウィリアムがミクの家に挨拶に行くとかで」
「ふーん」
(家に挨拶にまで行ったウィリアムが、わざわざミクを襲うか?)
カイルはますます腑に落ちませんでした。
(ミクの家……そこに、真実を知る手掛かりがありそうだな)
カイルは、直感的に思いました。
「あ、ヤバい。もう遅刻する!」
放送部員達は慌てました。
「おぅ、早く行けよ。この件については、俺が何とかしとくからさ」
「カイル、ありがとう。頼りにしてるぜ!」
急いで学校への道に戻ろうとする放送部員達の背後で、カイルはそっと笛に口をつけました。
(こいつらが知ってることは……きっと厄介なことだからな)
奏でたのは『喪失』の旋律。
カイルほどの天才であれば、自分が体験したことでなくても、話を聞くだけでその件についての記憶を消すことができるのです。
カイルが背後から奏でた旋律によって、放送部員達は事件の記憶、そして自分達がカイルと会った記憶までも、綺麗に喪失したのでした。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる