FREEDOM〜自由の世界へ〜

第十八章 ポセイドン

２

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 （もう、私……どうなってもいいわ）


ミクは悲しみに満ちた瞳で海を眺めていました。

この世で一番愛する人を失った……
それは、単なる肉親への愛ではありませんでした。
ミクにとってミュルスは、父であると同時に最愛の男性だったのです。

 堪え難い悲しみがもたらす喪失感……
それは、ミクの心にポッカリと、海よりも深い穴を開けていたのでした。


 （海…私、昔からこの海が好きだったな……）

ミクは寄せては返す海に一歩ずつ足を踏み入れました。
 青、緑、黄色……色とりどりの魚達がミクのもとへ寄ってきます。

 透明に青く澄んだ海……
それは、ミクの子供の頃……母親のマリンナと共に海へ来て遊んでいた純真な心を想い起こさせるようで。

 膝まで海に浸かったミクは無意識のうちに目を瞑り、笛に口をつけていました。


 （ねぇ、ミク。『海』は、何よりも大きい『希望』を持ってるのよ）


 生きる希望を失ったミクの脳内で、幼い頃のマリンナの声が再生されました。

その時のミクの奏でる美しいほどの悲しみを秘めた旋律は、奥に底知れぬ喪失感を秘めており……
全てを吸い込むかと思われるほどの憂いを帯びてその海に響き渡ります。


ミクの首元で、サファイヤのネックレスが海よりも澄んだ光を放ち、輝きました。