FREEDOM〜自由の世界へ〜

第十九章 レインボー・エンジェル

９

＊



 「ウィリアム…僕、まだ何か実感がないんだ…」

 「それは君だけじゃないさ。」



 刑務所が高波に襲われてから一週間が過ぎた頃、カイルの葬式がひっそりと執り行われました。
 刑務所にいた囚人や刑務官の遺体が次々と発見される中、カイルともうひとりの刑務官だけは遺体が発見されませんでした。
 彼らの遺体は、よほど遠くに運ばれたか、深くに沈んでしまったのだろうと皆が推測しました。



 「カイル……」

リクは、からっぽの墓に花を手向けます。
 参列したのは、リク達の他には、数人の使用人しかいません。



 「カイル…絞首刑になるよりはマシだよな。
でも、もっと君の笛が聴きたかったよ。」

ウィリアムもリクと同じように、花を手向けました。



 ＊



 「ミク…来なかったね。」

 「そうだな。カイルの葬儀にも出ないとは…ミクの奴、一体、どこにいるんだろうな。」

 葬儀の帰り道、ウィリアムとリクは、いつものように会話を交わしました。
あの日…高波が起きた日以来、皆で手分けをしてミクを探しましたが、いまだ、ミクはみつかりません。
 手掛かりひとつ、みつかってはいないのです。



もしかしたら、ポセイドンを召喚したミク自体も、海の藻屑と消えたのではないかと言う者もいますが、まだ何もわからない状態でした。