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第十九章 レインボー・エンジェル
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「ミクさん」
ミクの笛を聞いた青年は、意を決したように口を開きました。
ミクは笛から口を離し、青年を見ました。
「この国……レジットの王妃になってくれませんか?」
「えっ?」
突然の意外な申し出に、ミクは目を丸くしました。
「実はレジットのミケイル国王は……
王妃を不慮の事故で亡くしてから、ずっと塞ぎこんでおられるのです。
さらに、隣の大国、スジャーラ国との仲も悪くなってしまい、今、レジットは正に存続の危機に瀕しています。
あなたなら……
その溢れんばかりの美貌を持つあなたなら、きっとミケイル国王も御見初めになる筈です。
そして、その笛……
『海の神』をも召喚できるかと思えるほどの音色を奏でるあなたなら、きっとこの国を救って下さる。
私はそう、信じています」
「ちょ、ちょっと待って。あなたは……誰なの?」
「申し遅れて、申し訳ございません。私はミケイル国王の甥、マルクです」
ミクはマルクを見つめました。
もう、どうなってもいい……
ミクは自暴自棄になっていました。
しかし、こんなところでレジット国王の甥に会い、王妃への誘いを受けた……
そんな数奇な運命を利用しない手はない。
それに、レジットほどの大国の王妃になった暁には、にっくきバリーニャを潰すことなんて、赤子の手を捻るよりも容易なことです。
ミクの脳裏を、再び黒い考えが覆いました。
ミクはマルクに、微笑みを向けました。
「素敵なお話を、ありがとう。私、是非、レジットの王妃になるわ」
「ありがとうございます。ただ……」
マルクは一つ、気掛かりなことを口にしました。
「ミケイル国王は、もう相当なお年で、恐らくは亡くなられたミクさんのお父様よりも年上かと存じます。その点は、よろしいですか?」
それは、ミクにとっては寧ろ好都合なことでした。
そんな年齢の国王の王妃になるということは、レジットの実権を握るに等しい……
レジットを意のままに操ることができるのですから。
ミクは、さらに美しく妖艶な微笑みを向けました。
「そんなこと、何の問題もないわ」
すると、マルクはホッとした顔をしました。
「ありがとうございます。それでは、早速、ミケイル国王にあなた様を紹介します」
マルクはミクの手を引いてミクを白馬に乗せ、レジットの王宮への道を走らせたのでした。
ミクの笛を聞いた青年は、意を決したように口を開きました。
ミクは笛から口を離し、青年を見ました。
「この国……レジットの王妃になってくれませんか?」
「えっ?」
突然の意外な申し出に、ミクは目を丸くしました。
「実はレジットのミケイル国王は……
王妃を不慮の事故で亡くしてから、ずっと塞ぎこんでおられるのです。
さらに、隣の大国、スジャーラ国との仲も悪くなってしまい、今、レジットは正に存続の危機に瀕しています。
あなたなら……
その溢れんばかりの美貌を持つあなたなら、きっとミケイル国王も御見初めになる筈です。
そして、その笛……
『海の神』をも召喚できるかと思えるほどの音色を奏でるあなたなら、きっとこの国を救って下さる。
私はそう、信じています」
「ちょ、ちょっと待って。あなたは……誰なの?」
「申し遅れて、申し訳ございません。私はミケイル国王の甥、マルクです」
ミクはマルクを見つめました。
もう、どうなってもいい……
ミクは自暴自棄になっていました。
しかし、こんなところでレジット国王の甥に会い、王妃への誘いを受けた……
そんな数奇な運命を利用しない手はない。
それに、レジットほどの大国の王妃になった暁には、にっくきバリーニャを潰すことなんて、赤子の手を捻るよりも容易なことです。
ミクの脳裏を、再び黒い考えが覆いました。
ミクはマルクに、微笑みを向けました。
「素敵なお話を、ありがとう。私、是非、レジットの王妃になるわ」
「ありがとうございます。ただ……」
マルクは一つ、気掛かりなことを口にしました。
「ミケイル国王は、もう相当なお年で、恐らくは亡くなられたミクさんのお父様よりも年上かと存じます。その点は、よろしいですか?」
それは、ミクにとっては寧ろ好都合なことでした。
そんな年齢の国王の王妃になるということは、レジットの実権を握るに等しい……
レジットを意のままに操ることができるのですから。
ミクは、さらに美しく妖艶な微笑みを向けました。
「そんなこと、何の問題もないわ」
すると、マルクはホッとした顔をしました。
「ありがとうございます。それでは、早速、ミケイル国王にあなた様を紹介します」
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