6 / 40
6.毒のモンスターと宿屋の魔王
しおりを挟む
「うーん、どういう依頼がいいと思う? さっきは賞金稼ぎって言ってみたけどなんかこの依頼カードは古そうだし……」
「このドクヘドラー討伐はどうだ。1体あたり金貨3枚もらえるみたいだけど」
「報酬は高いけど…………解毒剤が必要でしょ。心配ね」
俺達は、意気揚々と掲示板の前に立ったのに中々依頼が決まらず時間を無為に過ごしていた。村のものに比べて依頼の種類が多く、よりどりみどりというのが理由だ。
陽が出ている間に宿を取らないといけないのでそうのんびりはしていられないのだが。
ドクヘドラー討伐が却下され、俺はまた別の依頼を探し始める。ドクヘドラーとは、話を聞く限りべたべたした有毒の蒸気を放つ軟体モンスターであるらしい。推奨ランクは赤だ。
そもそも、魔王に毒は効くのだろうか。勇者パーティーには毒使いがいなかったからわからなかった。
「あ、これなんかは? コボルド討伐50匹。銀貨10枚」
「いいかもしれない」
コボルドはゴブリンと同じような知能の低い人型のモンスターだ。なるほど、毒の軟体モンスターに比べれば安全に倒せるだろう。
いいかもしれないとは言ったが、俺の興味は完全にドクヘドラーの方へ向いていた。
報酬が高いというのもあるが、毒というのが興味深い。俺に毒は効くのか、ドロドロしているのに打撃は通じるのか、などなど。
アレーナはそんな俺の様子にすぐに気付いたらしい。
「もしかしてシェミハザ様、ドクヘドラーの依頼を受注したいと思ってるのかな」
「実のところそうだ」
アレーナはドクヘドラーとコボルドの依頼を見比べ、それから俺の方を見た。
「強いのはわかってるんだけど、こんなに顔の良い男を溶解毒のあるモンスターの所に送るのは不安になっちゃう」
「毒に触れないで倒せばいいだけだ。冒険者でやっていくならこういうのも少なくないだろうし、危険ならなおさらアレーナがついて来る必要は……」
「道、迷わずに帰れるなら一人でも大丈夫なんだけどね」
「ごめん。やっぱりコボルドの方にする」
顔が崩壊するほどに毒を食らうことはさすがにないだろうと思うが、行き帰りで道に迷わないのはそれよりも遥かに難易度が高い。地図は不正確だし。アレーナには世話になりっぱなしなので、あんまり我儘を言ってはいけないだろう。出した意見を引っ込めた。
「いいよ。アタシもついていく。解毒剤だけは買っていってもいいでしょ?」
予想外の言葉に、俺は驚いて顔を上げる。
ええ。本当にいいのか。
アレーナも顔が良いんだから、自分のことを大事にしてほしい。
そう伝えたら、思いっきり赤面していた。
なぜだ。事実を言っただけなのに。
受付で解毒剤を購入すると、ドクヘドラー討伐に向かう前に宿屋を探すことにする。
ちなみに解毒剤は1本につき銀貨2枚だった。高い。安価なものではなく、万一溶けても跡が残らない良質なものであるらしい。
セバルドの街の宿屋がある区画にやって来た。
宿屋がなんなのかすらもぼんやりとしか分からないが、要するに金を支払って宿泊できる施設らしい。少し本で読んだことはある。
宿屋の前に出ている立て看板の料金表を読み、吟味しながら区画を通っていく。
「連泊したいんだよね。連泊すると少し割引になるところがいい」
アレーナと俺は道を行ったり来たりして料金と施設の両面で検討を重ね、ここだという宿屋をやっと決めた。もう日が傾きかけている。ドクヘドラー討伐は明日だな。
「すみません、宿泊したいんですが」
建て付けの悪い開けっ放しの扉をくぐり、宿屋のカウンターへ声をかける。
昼寝をしていたらしい宿屋のカウンターの青年は、欠伸を噛み殺しながら、間延びした喋りで宿泊の受付をした。
「はい。おふたりですねー? 部屋数はいくつですかー?」
俺は部屋二つ、一つでもせめてベッドは別と言おうと思ったが、その前にアレーナが早口で言い切った。
「部屋は一つのダブルベッドで」
「わかりましたー。一泊分が銀貨1枚ですー。お手洗いは裏庭、洗顔とかは中庭の井戸を自由に使ってくださいねー」
ダブルベッドは気まずいだろう。
アレーナにはいろいろ世話になっているし、俺が嫌なわけでもないからいいんだけど。
2階の1番端が泊まる部屋で、俺はかがみながら狭い階段を登っていった。軋む廊下を進み、扉のついた部屋に入る。
部屋は廊下から考えると意外に広く、小さな窓が1つ付いていた。木の鎧戸を開ければさっきの通りが上から見下ろせる。
内装は思った通りシンプルで、2人用とみられるベッドの他には武器スタンドと小さな椅子くらいしかなかった。
睡眠欲の権化である俺は大鎌と荷物をベッド横の壁に立て掛けると、すぐにベッドに潜り込んだ。どうせ今日は予定もない。寝よう。
質素なベッドだが、地面や馬車よりはずっと快適だ。快適さで早くも眠くなり、俺は瞼を閉じた。
明日はドクヘドラーを討伐しに行こう。
いろいろ買ったりしていたら金欠でカツカツでもあるので、それも討伐することで解消したい。
ほとんど眠りに落ちた頃、何やら体温の高い動物のようなものが隣に入ってくる感触がある。
暖かい。
「このドクヘドラー討伐はどうだ。1体あたり金貨3枚もらえるみたいだけど」
「報酬は高いけど…………解毒剤が必要でしょ。心配ね」
俺達は、意気揚々と掲示板の前に立ったのに中々依頼が決まらず時間を無為に過ごしていた。村のものに比べて依頼の種類が多く、よりどりみどりというのが理由だ。
陽が出ている間に宿を取らないといけないのでそうのんびりはしていられないのだが。
ドクヘドラー討伐が却下され、俺はまた別の依頼を探し始める。ドクヘドラーとは、話を聞く限りべたべたした有毒の蒸気を放つ軟体モンスターであるらしい。推奨ランクは赤だ。
そもそも、魔王に毒は効くのだろうか。勇者パーティーには毒使いがいなかったからわからなかった。
「あ、これなんかは? コボルド討伐50匹。銀貨10枚」
「いいかもしれない」
コボルドはゴブリンと同じような知能の低い人型のモンスターだ。なるほど、毒の軟体モンスターに比べれば安全に倒せるだろう。
いいかもしれないとは言ったが、俺の興味は完全にドクヘドラーの方へ向いていた。
報酬が高いというのもあるが、毒というのが興味深い。俺に毒は効くのか、ドロドロしているのに打撃は通じるのか、などなど。
アレーナはそんな俺の様子にすぐに気付いたらしい。
「もしかしてシェミハザ様、ドクヘドラーの依頼を受注したいと思ってるのかな」
「実のところそうだ」
アレーナはドクヘドラーとコボルドの依頼を見比べ、それから俺の方を見た。
「強いのはわかってるんだけど、こんなに顔の良い男を溶解毒のあるモンスターの所に送るのは不安になっちゃう」
「毒に触れないで倒せばいいだけだ。冒険者でやっていくならこういうのも少なくないだろうし、危険ならなおさらアレーナがついて来る必要は……」
「道、迷わずに帰れるなら一人でも大丈夫なんだけどね」
「ごめん。やっぱりコボルドの方にする」
顔が崩壊するほどに毒を食らうことはさすがにないだろうと思うが、行き帰りで道に迷わないのはそれよりも遥かに難易度が高い。地図は不正確だし。アレーナには世話になりっぱなしなので、あんまり我儘を言ってはいけないだろう。出した意見を引っ込めた。
「いいよ。アタシもついていく。解毒剤だけは買っていってもいいでしょ?」
予想外の言葉に、俺は驚いて顔を上げる。
ええ。本当にいいのか。
アレーナも顔が良いんだから、自分のことを大事にしてほしい。
そう伝えたら、思いっきり赤面していた。
なぜだ。事実を言っただけなのに。
受付で解毒剤を購入すると、ドクヘドラー討伐に向かう前に宿屋を探すことにする。
ちなみに解毒剤は1本につき銀貨2枚だった。高い。安価なものではなく、万一溶けても跡が残らない良質なものであるらしい。
セバルドの街の宿屋がある区画にやって来た。
宿屋がなんなのかすらもぼんやりとしか分からないが、要するに金を支払って宿泊できる施設らしい。少し本で読んだことはある。
宿屋の前に出ている立て看板の料金表を読み、吟味しながら区画を通っていく。
「連泊したいんだよね。連泊すると少し割引になるところがいい」
アレーナと俺は道を行ったり来たりして料金と施設の両面で検討を重ね、ここだという宿屋をやっと決めた。もう日が傾きかけている。ドクヘドラー討伐は明日だな。
「すみません、宿泊したいんですが」
建て付けの悪い開けっ放しの扉をくぐり、宿屋のカウンターへ声をかける。
昼寝をしていたらしい宿屋のカウンターの青年は、欠伸を噛み殺しながら、間延びした喋りで宿泊の受付をした。
「はい。おふたりですねー? 部屋数はいくつですかー?」
俺は部屋二つ、一つでもせめてベッドは別と言おうと思ったが、その前にアレーナが早口で言い切った。
「部屋は一つのダブルベッドで」
「わかりましたー。一泊分が銀貨1枚ですー。お手洗いは裏庭、洗顔とかは中庭の井戸を自由に使ってくださいねー」
ダブルベッドは気まずいだろう。
アレーナにはいろいろ世話になっているし、俺が嫌なわけでもないからいいんだけど。
2階の1番端が泊まる部屋で、俺はかがみながら狭い階段を登っていった。軋む廊下を進み、扉のついた部屋に入る。
部屋は廊下から考えると意外に広く、小さな窓が1つ付いていた。木の鎧戸を開ければさっきの通りが上から見下ろせる。
内装は思った通りシンプルで、2人用とみられるベッドの他には武器スタンドと小さな椅子くらいしかなかった。
睡眠欲の権化である俺は大鎌と荷物をベッド横の壁に立て掛けると、すぐにベッドに潜り込んだ。どうせ今日は予定もない。寝よう。
質素なベッドだが、地面や馬車よりはずっと快適だ。快適さで早くも眠くなり、俺は瞼を閉じた。
明日はドクヘドラーを討伐しに行こう。
いろいろ買ったりしていたら金欠でカツカツでもあるので、それも討伐することで解消したい。
ほとんど眠りに落ちた頃、何やら体温の高い動物のようなものが隣に入ってくる感触がある。
暖かい。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる