25 / 40
25.変節
しおりを挟む
────魔族に異端者が現れた。……いや、異端が寧ろよしとされる我らの中にあっては、単に異常者と言った方が適切か。魔王の1人ではあったが、2人目の魔帝であると自ら名乗り、星の秩序を完膚なきまでに叩き壊すと宣っている。神々に仇なすのは結構だが、目に余るようならば我々の手で処分するしかないだろう。
──奴は相互不干渉の取り決めを破り、吸血鬼の始祖を喰らったそうだ。それほどの力を喰らえば、肉体も精神もただでは済まないというのに。あらゆるものを一掃するという宣言のうちに、よもや己の存在さえも含まれているとは考え付かなんだ。どうやら、本当に自壊する腹積もりであるらしい。魂を砕き、再構成させようという魂胆か……自分が自分でなくなり、別のモノに成り果てようが構わない、と。
何故だ。
悪に堕ちる魔族など珍しくもなんともないが、自暴自棄になって理を外れるわけは何なのだ。一体何と戦おうとしているのか。神か、人か。それとも別のものか。考えが読めない。
──奴を封印することに成功した。
だが被害は甚大だ。魂を失った始祖は然程脅威に成り得なかったことは嬉しい誤算だったものの、奴に相当戦力を消耗させられた。いま魔族と竜の優位が覆され、人間の時代が到来しようとしている。
今後、私の責務はアザゼルとベルゼブブに任せ、私は辺境の地から同胞を見守ることとする。結局のところ、封印もすぐに破られてしまうだろうから。封印の最後の鍵は旧友に託したが、その旧友とは完全に決別してしまった。次会う時は間違いなく殺し合いだろう。
──世界がほつれていくのが見える。
全てが滅茶苦茶に置き換わり、書き変えられてしまう。奴の行使した魔法か?
違う。こんなものは奴の権能ではない。あれはただの破綻者、だがこの力は────
「わからん」
俺はパタンと日誌を閉じ、亜空間に収納した。何故手がかりがあると思ったんだ。
残念ながら記憶は呼び起こされなかったので、結局何ひとつ分からずじまいなのだが。
文章はそこで途切れていた。日誌なのか? これは。詩のようだ。ページの大半は白紙、インクの年代は魔力が使われていないので不明だが、かなり期間が離れているように見える。
気にはなるが、考え込んでも情報は出てこない。
この日誌で興味深いのは、最後の一文だ。
書き換えられるというのは、おおよそ俺の推測通りのことだろう。実際、今の俺の状態がそうじゃないか。
アザゼルという名前が出てきて助かった。冒険者ギルドからの情報提供に、たしかな意味を見出せる。また少し、何らかの手がかりが掴めるだろうから。
などと前向きに考えてみたものの、状況はちっとも良くなっていない。今度は名前すら偽物ときた。金目のものは手に入ったし、術を解くために来たから目的は達成したのだからそれでいいだろう。
光球で薄ぼんやりと照らされる地下室を後にし、地上へ出る。絡まり合った魔力の痕跡から魔法以外の術式を見つけ、そこに魔力を流すという力技で内部から破壊した。
特に魔力が戻った感覚はないし、記憶も出てこない。最後の鍵というのがきっと本命なのだろう。
特にもうこの城に用はない。俺の思い出があるのは、ここではなく村なのだから。
──奴は相互不干渉の取り決めを破り、吸血鬼の始祖を喰らったそうだ。それほどの力を喰らえば、肉体も精神もただでは済まないというのに。あらゆるものを一掃するという宣言のうちに、よもや己の存在さえも含まれているとは考え付かなんだ。どうやら、本当に自壊する腹積もりであるらしい。魂を砕き、再構成させようという魂胆か……自分が自分でなくなり、別のモノに成り果てようが構わない、と。
何故だ。
悪に堕ちる魔族など珍しくもなんともないが、自暴自棄になって理を外れるわけは何なのだ。一体何と戦おうとしているのか。神か、人か。それとも別のものか。考えが読めない。
──奴を封印することに成功した。
だが被害は甚大だ。魂を失った始祖は然程脅威に成り得なかったことは嬉しい誤算だったものの、奴に相当戦力を消耗させられた。いま魔族と竜の優位が覆され、人間の時代が到来しようとしている。
今後、私の責務はアザゼルとベルゼブブに任せ、私は辺境の地から同胞を見守ることとする。結局のところ、封印もすぐに破られてしまうだろうから。封印の最後の鍵は旧友に託したが、その旧友とは完全に決別してしまった。次会う時は間違いなく殺し合いだろう。
──世界がほつれていくのが見える。
全てが滅茶苦茶に置き換わり、書き変えられてしまう。奴の行使した魔法か?
違う。こんなものは奴の権能ではない。あれはただの破綻者、だがこの力は────
「わからん」
俺はパタンと日誌を閉じ、亜空間に収納した。何故手がかりがあると思ったんだ。
残念ながら記憶は呼び起こされなかったので、結局何ひとつ分からずじまいなのだが。
文章はそこで途切れていた。日誌なのか? これは。詩のようだ。ページの大半は白紙、インクの年代は魔力が使われていないので不明だが、かなり期間が離れているように見える。
気にはなるが、考え込んでも情報は出てこない。
この日誌で興味深いのは、最後の一文だ。
書き換えられるというのは、おおよそ俺の推測通りのことだろう。実際、今の俺の状態がそうじゃないか。
アザゼルという名前が出てきて助かった。冒険者ギルドからの情報提供に、たしかな意味を見出せる。また少し、何らかの手がかりが掴めるだろうから。
などと前向きに考えてみたものの、状況はちっとも良くなっていない。今度は名前すら偽物ときた。金目のものは手に入ったし、術を解くために来たから目的は達成したのだからそれでいいだろう。
光球で薄ぼんやりと照らされる地下室を後にし、地上へ出る。絡まり合った魔力の痕跡から魔法以外の術式を見つけ、そこに魔力を流すという力技で内部から破壊した。
特に魔力が戻った感覚はないし、記憶も出てこない。最後の鍵というのがきっと本命なのだろう。
特にもうこの城に用はない。俺の思い出があるのは、ここではなく村なのだから。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる