40 / 40
40.依頼
しおりを挟む
すぐそばに冒険者ギルドの建物があるのはありがたい。鎧を着て街中を闊歩する時ほどではないものの、今度は逆に軽装すぎて若干浮いている。
街の外に出る依頼は最近はあまり受けていない。遠いし、道に迷うからだ。街の中にモンスターがいるはずもないので、街の内部での依頼は──迷い猫を探すだとかその類のものを除いて──賞金首を捕まえることだ。
モンスターは易々と屠るのに、人間を殺すのにはどうにも良心の呵責で殺せないだとか、単純に組織されていて面倒だとかで受ける冒険者は少ない。その分、請け負う数少ない冒険者はかなり稼いでいると思う。俺にとって人間が異種族だからかもしれないが、モンスターを殺すのも人間を殺すのも抵抗はない。後始末が面倒なだけだ。
かくいう俺もその1人。セバルドの街ではほとんど俺達だけで街の凶悪犯罪者を殲滅してしまった。
王都には、ボードを埋め尽くすどころかはみだしそうなくらい大量の手配書が貼り付けてあった。いくら俺でもこの数を1日でこなすのは流石に……いけるかどうかは別として、これ以上目立つのは避けたい。それは手遅れか。
と、手配書の新しさや賞金などを見てあれこれと考え込んでいたのだったが。
その間、エイブラハムさんが「うんうん」だとか「そうきたか……」だとか深く頷きながら無駄に相槌を打ってくる。いつの間に俺の仲間に加わったんだか。
手配書に手を伸ばしかけると大げさな反応を寄越すため、無意識に俺の動きは止まる。
「そうだよな、これだけ沢山あると、中々決め辛いよな!」
理由はそれだけじゃないが。何も返さずに、手配書で最も新しいものを取る。
「おっと、そうきたか! 連続切りつけ犯を選ぶとは腕がなるなぁ」
「え、まさか依頼にも付いて来るんですか……?」
「ん? そうだぞ。まあ安心しろ。報酬は要求しないから」
なぜだかやる気に満ち溢れた顔を向けられ、困惑しかない。突然やって来てついて来るとか、タニアさんとやっていること変わらなくないか?
前触れがなさすぎて、俺の動向を確認するためではないかと勘ぐってしまう。実際そうなのかもしれない。そんなに怪しいことはしていない。
この賞金首には都合のよろしいことに手掛かりの証拠となる物が残されていたらしい。切りつけ犯なら職業で犯罪者やっているわけでもなさそうだしな。他の賞金稼ぎの人は推理とかやっていたりするみたいだけど……俺に思考能力を求めるな。クエレブレの透視がなくても、魔法で片をつけてみせよう。
「これがその手掛かり、と」
「はい。切りつけられた人が相手のマントをちぎり取ったものです。ありふれたマントですから、個人の特定は難しいかもしれません……」
おずおずと手渡された布きれは、なんの変哲もない素材と色だった。確かに、これ単体で……となると余程嗅覚でも鋭くなければ厳しいだろうな。
受付の人がやや怯え気味である。そういえば昨日滅茶苦茶不機嫌になってたんだった。
問題ないと答え、俺は布きれに簡単な魔法をかけた。
元あるべき場所に戻す魔法。布地に単に元に戻すだけだと、糸くずになったり紡ぐ前の羊毛になったりする。布切れがマントのところに戻るように、と命じる。ぼろ布はふわりと浮き上がって冒険者ギルドの扉へと向かう。
「ん? 今何をやった? というかお前は魔力使えないんじゃ……」
「最近急に使えるようになったんですよ」
エイブラハムさんは訝しげな顔をして首を捻っている。なるほど、タニアさんから知らされていないとみた。なら、俺を監視しているという線は薄いか。俺の警戒を解かせようとするための演技だということも考えられるものの、疑心暗鬼になっていてもしょうがない。強者はいかなる妨害だろうと歯牙にもかけないのが正解だ。
俺は風に舞うかのようにふわりふわりと宙を浮かんで移動する布きれの後を追った。その俺にエイブラハムさんもついて来る。いや、付いてこなくていいが。
街の外に出る依頼は最近はあまり受けていない。遠いし、道に迷うからだ。街の中にモンスターがいるはずもないので、街の内部での依頼は──迷い猫を探すだとかその類のものを除いて──賞金首を捕まえることだ。
モンスターは易々と屠るのに、人間を殺すのにはどうにも良心の呵責で殺せないだとか、単純に組織されていて面倒だとかで受ける冒険者は少ない。その分、請け負う数少ない冒険者はかなり稼いでいると思う。俺にとって人間が異種族だからかもしれないが、モンスターを殺すのも人間を殺すのも抵抗はない。後始末が面倒なだけだ。
かくいう俺もその1人。セバルドの街ではほとんど俺達だけで街の凶悪犯罪者を殲滅してしまった。
王都には、ボードを埋め尽くすどころかはみだしそうなくらい大量の手配書が貼り付けてあった。いくら俺でもこの数を1日でこなすのは流石に……いけるかどうかは別として、これ以上目立つのは避けたい。それは手遅れか。
と、手配書の新しさや賞金などを見てあれこれと考え込んでいたのだったが。
その間、エイブラハムさんが「うんうん」だとか「そうきたか……」だとか深く頷きながら無駄に相槌を打ってくる。いつの間に俺の仲間に加わったんだか。
手配書に手を伸ばしかけると大げさな反応を寄越すため、無意識に俺の動きは止まる。
「そうだよな、これだけ沢山あると、中々決め辛いよな!」
理由はそれだけじゃないが。何も返さずに、手配書で最も新しいものを取る。
「おっと、そうきたか! 連続切りつけ犯を選ぶとは腕がなるなぁ」
「え、まさか依頼にも付いて来るんですか……?」
「ん? そうだぞ。まあ安心しろ。報酬は要求しないから」
なぜだかやる気に満ち溢れた顔を向けられ、困惑しかない。突然やって来てついて来るとか、タニアさんとやっていること変わらなくないか?
前触れがなさすぎて、俺の動向を確認するためではないかと勘ぐってしまう。実際そうなのかもしれない。そんなに怪しいことはしていない。
この賞金首には都合のよろしいことに手掛かりの証拠となる物が残されていたらしい。切りつけ犯なら職業で犯罪者やっているわけでもなさそうだしな。他の賞金稼ぎの人は推理とかやっていたりするみたいだけど……俺に思考能力を求めるな。クエレブレの透視がなくても、魔法で片をつけてみせよう。
「これがその手掛かり、と」
「はい。切りつけられた人が相手のマントをちぎり取ったものです。ありふれたマントですから、個人の特定は難しいかもしれません……」
おずおずと手渡された布きれは、なんの変哲もない素材と色だった。確かに、これ単体で……となると余程嗅覚でも鋭くなければ厳しいだろうな。
受付の人がやや怯え気味である。そういえば昨日滅茶苦茶不機嫌になってたんだった。
問題ないと答え、俺は布きれに簡単な魔法をかけた。
元あるべき場所に戻す魔法。布地に単に元に戻すだけだと、糸くずになったり紡ぐ前の羊毛になったりする。布切れがマントのところに戻るように、と命じる。ぼろ布はふわりと浮き上がって冒険者ギルドの扉へと向かう。
「ん? 今何をやった? というかお前は魔力使えないんじゃ……」
「最近急に使えるようになったんですよ」
エイブラハムさんは訝しげな顔をして首を捻っている。なるほど、タニアさんから知らされていないとみた。なら、俺を監視しているという線は薄いか。俺の警戒を解かせようとするための演技だということも考えられるものの、疑心暗鬼になっていてもしょうがない。強者はいかなる妨害だろうと歯牙にもかけないのが正解だ。
俺は風に舞うかのようにふわりふわりと宙を浮かんで移動する布きれの後を追った。その俺にエイブラハムさんもついて来る。いや、付いてこなくていいが。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる