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久守 龍司

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1.巫女くんと黒ギャルちゃん

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日本の、とある政令指定都市の某所。
閑静な住宅街の中に、一社の神社があった。
ちょっとした竹林に囲まれた境内に鳥居や社務所をはじめ、神楽殿やら手水舎やら境内社やら、色々な建物が詰め込まれている。
入り口の鳥居からちらりと見える居住空間は、何故かドイツ風のハーフティンバーだった。

境内では一人の巫女が箒がけをしていた。
富士額に沿って中央で分けられたぱっつんの前髪に、横の髪は所謂姫カットといわれる顎上で切り揃えたもので、後ろの髪は低い位置でポニーテールにしている。
切れ長の涼やかな目元をした和風美人といったふうの巫女だったが、よく見ると服装に違和感がある。
白と緋の配色は確かに巫女なのだが、筒袖、行燈袴、ブーツ姿なのだ。
少し変わった格好の彼女は誰かに気付いたように箒の手を止め、顔を上げた。

視線の先には、近年珍しい黒ギャルの少女が立っていた。
短いスカートと、足首丈の靴下から日焼けした生足を大胆に出して制服を着崩している。
化粧は濃いが、工程の一つ一つを丁寧にしていると見え、染めムラのないロングのブロンドと合わせても小綺麗な印象が強い。

黒ギャルの女子高生は巫女の方に笑顔で手を振りながら駆け寄り、巫女はそれに手を挙げて応えた。

「巫女くん! ドライブ行こっ」
「はいよーギャルちゃん。折角だから、お賽銭入れてってくれてもいいよ」
「今月バイトきつくって……ごめん!」
純粋な少女は手を合わせて謝るが、巫女の方は冗談だからきつくない時でも入れなくていい、と言って声を上げて笑った。

巫女が箒を立てかけ、どこかに行こうとすると、社務所から作務衣の人物が出てきた。
白髪混じりの短髪で、柔和そうな微笑みを浮かべる壮年の男性だ。
巫女は振り返って男性に声をかける。

「叔父さん、これからドライブ行ってくる。今日はお祓いとかないよね?」
「おお。ないぞ。まあ、いつものことだが、気をつけてな」
「絶対大丈夫……って言い切れないけど、安全運転を心がけてるよ。他人様の命預かってるんだから」

この神社の神主である叔父に挨拶をすると、二人は慣れた様子で地下駐車場への階段を降りて行った。

地下駐車場には、旧車を中心に多種多様な車が停まっていた。
その中の一台の前で巫女は立ち止まる。
白い車体をした1965年式の四人乗りコンバーチブルの運転席──アメリカ車なので左側だ──に座り、巫女はキーを差し込んで捻る。
昨今持て囃されているエコとは対極に位置する、大排気量の快音を奏でる八気筒。

車は頻繁に乗ってやらないと調子を崩す。
水曜日は決まってこの車だ。

水曜のドライブに、ばらばらの個性を持つ三人の女の子を乗せるようになったのは、元々は今隣に座る黒ギャルの女子高校生が言い出したからだった。
今ではそれがすっかり習慣化して、一人でドライブをしていた巫女の日常に良いスパイスをもたらしている。

(残りの二人を迎えにいかないとね)
古いポニーカーを公道に合流させると、巫女はハンドルを握り直した。
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