GO CRITICAL

久守 龍司

文字の大きさ
12 / 15

12.掃除

しおりを挟む
ギャルちゃんは約束していた時間から三分遅れて現れた。そんなこともあろうかと、所定の時間より早めに時刻を設定していた巫女は、とくに咎めずに仕事内容を伝える。

「兎にも角にも掃除かな。私もしょっちゅう掃除してるし」
「もっと楽しいのはないの?」
「掃除充分楽しいよ」
ギャルちゃんは作務衣を着ていること以外は爪先から頭までギャルだったが、それについても特に咎めない。

「巫女服着れると思ってたんだけど」
「掃除しかやることないから事務員さん以外今日はみんな作務衣です。諦めてくれ」

一方の巫女くんは浅葱色の袴の上から狩衣と立烏帽子を身につけている。女性神職の正装ではないが、これで通っているから気にしたことはないのだった。

「巫女くんっていうより神主くんだね」
「雑用好きだから巫女をやってるけど、実際神主だからね。まあとりあえず髪結んで。建物に掃除機とモップかけるのが仕事内容。仕事は午前で終わるけど、わからなかったら社務所の人に訊いて!」
慌ただしく丸投げすると、巫女くんはバタバタと駐車場の方へ向かっていった。


ギャルちゃんは社務所の奥に収納されている掃除機を引っ張り出すと、昨日花火で遊んだ一番上の四階から掃除機をかけ始めた。

飽きた。
型落ちして久しい掃除機のパックを入れ替えつつ、ギャルちゃんは一つ溜息を吐いた。

「今日は掃除だけかあ」

そういえば巫女くんもいつも掃除している。掃き掃除だったり、拭き掃除だったり。

宮司である叔父さんは奥さんと死別し、息子さんは海外に赴任中なのだから実質的な二番手は巫女くんの筈。それでも常に掃除ばかりしているのだから。掃除以外は御朱印を書いているかお賽銭を数えてるか地鎮祭に行っているか……あれ、結構多い。

「でもいっか。うち字汚いし」
午前までなのだからと気合を入れ直し、モップを持って室内の拭き掃除を再開して、そのまま正午になった。


「お疲れ様ー。昼食これから作るから、休んで待ってて!」
巫女くんは正午ちょうどに帰ってきた。狩衣と烏帽子は既に脱いで、小袖と袴の状態で厨房に立つ。ギャルちゃんは近くの席に座って、扇風機に顔を近付けながら水を飲んだ。

「どう。疲れた?」
「めっちゃ疲れたー! マジでヤバいね掃除。ダイエット? にはいいけど」
巫女くんはそうだろうとニヤニヤしながら鍋の中身をかき混ぜた。鍋の中身は朝作ったカレーで、温め直しているのだった。

自分とギャルちゃんの分をよそってテーブルにつき、食前の挨拶を唱えてカレーを食べる。


今度は巫女くんが作務衣姿、ギャルちゃんが巫女服姿になって作業した。ギャルちゃんは別に帰ってもいいのだが、境内を箒で掃くと言った。巫女くんは荒縄をゴミ袋に入れる作業をし、それが終わると先程のカレーの皿と鍋を洗った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

後宮なりきり夫婦録

石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」 「はあ……?」 雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。 あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。 空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。 かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。 影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。 サイトより転載になります。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...