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第二章 旅立ち編

第47話 実力差

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【ルーシー視点】

 イーグリア王都帰還、出発の日が来た。

 前回わたし達とあさひが出会ったところまでこの人数を、【テレポート】で連れて行ってくれると聞いた。

 この人数を【テレポート】なんて聞いた事がない。
 最も難易度の高い時空間魔法を使いこなすなんて………あさひは魔力も莫大に持っているのね。本当に何者なの………

「ではいきますね【テレポート】」


 無事全員着いたようだ。確かにこの辺りは見覚えがある。
 そして、あさひは大量の魔力を消費して辛そうだ。
 すかさずステラお姉様があさひを支えている。

「大丈夫ですか。あさひ様」

「ありがとうございます。かなり消費したみたいで少し休憩させてください。【魔力自然回復】で少しすれば動けると思います。」

「これだけの人数をテレポートさせるなんて……」
 ミケネとカレンは驚いている。

「さすがあさひ様です~」
 サーシャ…あんた……

 あさひは本当に一体どれだけ凄いの?
 この前の手合せも全然本気出していなかった。
 わたしはあさひから目が離せなくなっている。チラチラ見てしまう。

 少し休憩した後、あさひはもう大丈夫とのことで移動を始める。

 ステラ姉様が先頭で進み始める。

 物凄いスピードで走っていく。私もなんとか付いて行こうとする。

「はあっ、はあっ」

 速い。とてもついて行けない。

 ステラ姉様はかなりスピードを抑えているようだ。
 さっきまでバテていたあさひもケロっとしている。
 ミケネ、カレン、フーカはなんとかついて行ってる。
 わたしとサーシャにこのスピードは無理だ。

「ご、ごめんなさい。無理。スピードについて行けないわ。はぁ、はぁ」

 わたしはギブアップした。完全にバテた。ずっと全速力で走っているようなものだ。

 他のみんなも止まった。

「そうですか。では休憩を取りましょう。今後は時間がかかりますが歩きましょう」

 ステラお姉様はわたしを責める事はなく、新たな提案をしてくれた。く、悔しい……完全に足を引っ張ってしまっている。

 するとあさひが何かをやりだした。

 あれは何を?無詠唱で土の壁を作り始めた。
 えっ?あれはアースウォール!なんて早さで壁を作っていくの?しかもかなり厚い壁。

 あっという間に、わたし達を囲む壁を作り上げた。

「ルーシー、この中なら安全だから、安心して休んで。周囲は【気配感知】で警戒しておくから」

「あ、ありがとう」
 もう、レベルの違いがありすぎてわたしはただただあさひの凄さに驚いた。

 他の皆もキラキラした目であさひを見ている。
 あさひ信者の信仰心がどんどん上がっていくのがよくわかる………

 それにしてもほとんど魔物と出会わない。わたし達が移動した時はあんなに襲われたのに………
 あっ!ステラお姉様とあさひに警戒して魔物が近寄ってこないんだ。

 ステラお姉様とあさひはわたし達とはレベルが違いすぎるのね。

 わたしはちょっと色々な魔法が使えるからと天狗になっていた。体力を上げるような訓練なんてほとんどしてこなかった。
 わたしは思い知らされた。どれだけ狭い世界で生きてきたの………

 王都に帰ったら、わたしは一からやり直す。心からそう思えた。ステラお姉様、あさひと出会うことができたのはこれからのわたしの人生にとってとてつもなく大きい。

 この出会いに心から感謝した。



【あさひ視点】

 んー、ステラさんはかなりスピードを抑えて走っていた。全員の体力に差がありすぎる。とくにルーシーとサーシャはキツそうだ。

 これからはステラさんの言う通り。ゆっくりだけど警戒しながら確実に進むしかないな。

 30分ほど休憩して俺たちはまた進み始めた。

 走るのは厳しそうなので、少し早歩きぐらいのペースで向かう。

 時々魔物は出てきたが、ステラさんと俺でサクサク倒して進む。
 倒した魔物は全てストレージにしまっていった。

 いつか街で売ることができるだろうか?結構な量の魔物の死体が貯まっている。魔石の量も大量だろう。
 これで俺はニート生活を脱却することができるのだろうか。

 最初の頃はルーシー達は色々驚いていたが、驚き疲れたのだろう。それ以後は無口でついてきていた。

 俺はステラさんとユヅキに念話をする。

(ステラさん、このペースだと森を抜けるのにどのくらいかかりそうですか?)

(あ、あさひ様、はい。このペースですと10日以上はかかるかと思います)

 突然の念話でステラさんは驚いていた。

(そうですか。一つ提案があるんですが)

(なんでしょうか?)

(ルーシー達みんなには家で待っていてもらって、俺とステラさんで森を抜けませんか?それなら5日間ぐらいで森を抜けられませんか?森を抜けて一番近くの町の近くまで行って魔法陣を設置して、ルーシー達を迎えに行くのはどうでしょうか?)

(あさひ様!それは良いお考えです。そうしましょう!)

 この時ステラは嬉しかった。進むペースが遅いのは仕方ないと思っていた。でも何よりも、森を抜けるまでの僅かな時間ではあるが、またあさひと二人で旅ができるからだった。

 あさひもこの方法ならまたステラと二人で旅ができるし、森を抜ける日数を大幅に減らせると考えていた。


 俺とステラさんはルーシー達にこの事を提案した。悔しそうにしていたが、大幅に到着日数を減らせるという事で了承してくれた。

 俺は魔法陣を設置して、魔力の回復を待ち、【テレポート】で全員で戻った。魔力の消費が激しすぎた為、その日はベッドで寝て翌朝からまたステラさんと出発した。

 ルーシー達は少しでも強くなれるように、俺達が戻るまで訓練をして待っていると言っていた。


 こうして俺とステラさんの二人旅はまた始まった。


「ステラさん、またよろしくお願いします」

「くすくすくす、またあさひ様と二人になりましたね」
 ステラさんは嬉しそうだった。

「はい、俺もステラさんと二人は安心して落ち着きます」
『ダーリンよかったね♪』
 ああ、俺も嬉しかった。

「では行きましょう!」

「はい」

 俺達は以前の二人のペースで進み始めた。

「ステラさんもう少し速くても大丈夫です」

「あさひ様、本当に成長されましたね。ではペースを上げます」

 俺とステラさんは凄い速さで森を駆け抜けた。
 魔物との遭遇はほとんど無かった。いや、あったけど魔物を素通りした。魔物もこのペースには全く着いて来れないようだ。

 そして、日が暮れた。
 俺達は野営の準備をしていた。

 本当はここに魔法陣を設置して家に戻れるが、俺は提案しなかった。ステラさんと二人の時間を大切にしたかったからだ。
 俺はステラさんのご主人様を探す旅をしている。

 もしもご主人様が見つかったら?

 俺はステラさんとお別れしなくてはいけない。

 20年以上ご主人様を待ち続けているステラさん。ご主人様が見つかれば俺は去るべきだ。

 そんなことはずっと先のような気がしていたのだが、もしかしたらすぐかもしれないと思うようになった。

 ルーシーが王都に迎えにきた。神託があった。何かが起きる気がする。つまり、ステラさんとのお別れが近いのかもしれない。

 俺はステラさんに自分の思いを伝えておこうと思った。ユヅキは俺の気持ちがわかっていてくれている。

 食事をしてテントに入る。
 また、ステラさんと二人で雑魚寝だ。
 ドキドキする。


 俺はステラさんに話を切り出した。
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