265 / 812
指先 花火
しおりを挟む
「いっ…た…っ!?」
指先から赤い液体がぷつぷつと流れ出す。どうやら、今しがた開いた本の間のページにカッターの刃が挟まっていたらしい。カッターの刃先に私の指と同じ赤い液体が付いていた。
またか。
私はもうそんなことしか思わなかった。扇様の部屋にシクラメンの花を生けてから、ずっと似たような現象が起こっていた。今日で7日目。そろそろシクラメンの花を生け替えようかと考えていたため、油断した。
似たようなことは、経験がある。私のロッカーが荒らされていたり、更衣室にあるはずの私のバッグが水浸しになっていたり、同じように本の間にカッターの刃が挟まれていたり、だ。これらを経験したのは、今よりも精神的に幼かった時だった。私もムキになって他の人に冷たくしていた。片倉くんに髪を直して貰ったのもその時だった。認めたくはないけれど、あれから私も心を入れ替えて少しずつ他の使用人たちとも話すようになった。だから今は大丈夫だと思っていたのだけど、どうやらそうでもないらしい。1週間、この状況が続いていた。
そろそろ何とかしないとな、と思いながら、誰に相談するか考えるのも面倒だという思いがある。結局根本では変われていない。人に頼るのは面倒だと思ってしまう。
「…ん…花火さん」
「あっ」
急に名前を呼ばれて、我に返る。慌てて右手を服の後ろに隠し、呼ばれた方を向く。そこにいたのはキースだった。
「な、何です…?」
「ぼーっとしていらしたので…どうかされたのかと…」
「あ、ごめんなさい。何でもないですわ」
「そうですか?あ、えっと、お嬢様の新しいお召し物が到着したそうです。それを報告しに来ました」
「分かりました。私もすぐ行きますので、先に行っていて下さい」
「分かりました」
キースがお辞儀をして部屋から出て行く。ぱたん、と扉が閉まったのを見届けてからため息をつく。右手の指先から未だ流れ続ける血をハンカチで拭い、水道の方へ向かう。放っといたせいで、少し手の平まで垂れてきていた。このまま自然治癒が私としては望ましいが、血が固まりそうにないので仕方なく絆創膏を貼る。絆創膏を貼ると、お嬢様…扇様に心配されてしまうのが心苦しい。
その日は何も言われずに仕事を終え、帰宅した。扇様が気付いていなかったのかは分からないが、私は少しホッとした。帰宅途中、絆創膏を貼った指を見つめながら、どうしようかと考える。
明日は学校行くし、その間に考えよう。
私はそのままぼーっと電車に揺られて帰った。
指先から赤い液体がぷつぷつと流れ出す。どうやら、今しがた開いた本の間のページにカッターの刃が挟まっていたらしい。カッターの刃先に私の指と同じ赤い液体が付いていた。
またか。
私はもうそんなことしか思わなかった。扇様の部屋にシクラメンの花を生けてから、ずっと似たような現象が起こっていた。今日で7日目。そろそろシクラメンの花を生け替えようかと考えていたため、油断した。
似たようなことは、経験がある。私のロッカーが荒らされていたり、更衣室にあるはずの私のバッグが水浸しになっていたり、同じように本の間にカッターの刃が挟まれていたり、だ。これらを経験したのは、今よりも精神的に幼かった時だった。私もムキになって他の人に冷たくしていた。片倉くんに髪を直して貰ったのもその時だった。認めたくはないけれど、あれから私も心を入れ替えて少しずつ他の使用人たちとも話すようになった。だから今は大丈夫だと思っていたのだけど、どうやらそうでもないらしい。1週間、この状況が続いていた。
そろそろ何とかしないとな、と思いながら、誰に相談するか考えるのも面倒だという思いがある。結局根本では変われていない。人に頼るのは面倒だと思ってしまう。
「…ん…花火さん」
「あっ」
急に名前を呼ばれて、我に返る。慌てて右手を服の後ろに隠し、呼ばれた方を向く。そこにいたのはキースだった。
「な、何です…?」
「ぼーっとしていらしたので…どうかされたのかと…」
「あ、ごめんなさい。何でもないですわ」
「そうですか?あ、えっと、お嬢様の新しいお召し物が到着したそうです。それを報告しに来ました」
「分かりました。私もすぐ行きますので、先に行っていて下さい」
「分かりました」
キースがお辞儀をして部屋から出て行く。ぱたん、と扉が閉まったのを見届けてからため息をつく。右手の指先から未だ流れ続ける血をハンカチで拭い、水道の方へ向かう。放っといたせいで、少し手の平まで垂れてきていた。このまま自然治癒が私としては望ましいが、血が固まりそうにないので仕方なく絆創膏を貼る。絆創膏を貼ると、お嬢様…扇様に心配されてしまうのが心苦しい。
その日は何も言われずに仕事を終え、帰宅した。扇様が気付いていなかったのかは分からないが、私は少しホッとした。帰宅途中、絆創膏を貼った指を見つめながら、どうしようかと考える。
明日は学校行くし、その間に考えよう。
私はそのままぼーっと電車に揺られて帰った。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』
本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」
かつて、私は信じていた。
優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な──
そんな普通のお兄ちゃんを。
でも──
中学卒業の春、
帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、
私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった!
家では「戦利品だー!」と絶叫し、
年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、
さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!?
……ちがう。
こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない!
たとえ、世界中がオタクを称えたって、
私は、絶対に──
お兄ちゃんを“元に戻して”みせる!
これは、
ブラコン妹と
中二病オタク姫が、
一人の「兄」をめぐって
全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──!
そしていつしか、
誰も予想できなかった
本当の「大好き」のカタチを探す、
壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる