神様自学

天ノ谷 霙

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空港の記憶 海斗

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俺がまだ小さい頃。具体的に言うと3、4歳の時。ほとんどの記憶はもう断片的にしか残っていないが、1番上の姉と別れた日のことははっきりと覚えていた。隣にいた2番目の姉、華陸はなむに手を握られて、ぼうっと立っていたのは空港。
「母さん、華陸、海斗…ごめんな」
そう言って父さんが俺を華陸と一緒に抱きしめた。父さんの後ろで、花凜姉ちゃんが困ったような表情をする。やがて俺と目が合い、寂しそうに笑った。
「嫌ですわ、お父さん。仕事の都合ですもの。花凜も自分の意思で付いていくと決めたわけですし」
母さんの声が、やけに耳についた。多分、この時俺は無意識に、花凛姉ちゃんと離れることに気付いていたんだと思う。だから父さんが俺たちを抱きしめる手を離した時、華陸から手を離して花凛姉ちゃんの方に飛び込んだ。仕事であまり遊べなかった父さんより、俺の話を聞いて褒めてくれる花凛姉ちゃんと離れる方が寂しかったからだ。
「海斗っ!」
「…姉ちゃん…」
花凛姉ちゃんの優しい声が、耳元で響く。抱きしめられながら、言葉に詰まった。俺は花凛姉ちゃんが寂しそうな表情をしてることに気付いていたから、何て言うのが正解なのか分からなくなった。華陸が後から俺を追いかけてきて、花凛姉ちゃんから俺を離した。泣きそうになるのを堪えていたら、花凛姉ちゃんがそっと俺の頭を撫でた。
「海斗、私は大丈夫だよ。いつか絶対帰ってくるから、それまで待ってて」
「…うん、おれ、待ってる」
「華陸も、海斗をよろしくね。お姉ちゃんがいなくても頑張れる?」
「うん、頑張るよ。私もお姉ちゃんだから」
「良い子だね、華陸。それじゃあ、そろそろ時間かな。お母さん、元気でね」
花凛姉ちゃんは父さんを引っ張って空港の奥に消えた。姿が見えなくなって、俺は泣き出した。我慢していたものが溢れ出てきた。花凛姉ちゃんの方が寂しいはずなのに笑っていたから、俺は我慢していたのだ。それでも、無理だった。そのまま笑い続けるのは無理だった。俺につられて、華陸も泣き出した。華陸は俺と2歳しか変わらない。花凛姉ちゃんは俺と4歳しか変わらないのに、凄く大人びて見えた。その後、母さんがそっと俺たちを抱きしめた。
「ほら、華陸と海斗が毎日笑って過ごしていれば、父さんと花凛が帰ってくるのはすぐよ。でも今日は泣きなさい。それで、明日からまた私に笑顔を見せてね」
その時の母さんの瞳が潤んでいたのを、よく覚えている。
これが、1番記憶に残っている昔のことだった。
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