278 / 812
11月14日 着替え
しおりを挟む
「こんな格好でごめんなさいね」
扇様は、はだけた衣服を少し直した後でそう言った。私は目線に困り、目を泳がせながら「大丈夫です」と答えた。そしてふと、先程話していた紺様という名前が気になった。紺様。扇様の澪愛家と古くから付き合いがある鳳凰家の長男。紺様は確か私より2歳年上なので、扇様とは3歳差か。
「今日は、紺様がいらっしゃるのですか?」
私の言葉に、扇様は頬を赤らめた。薄い布で顔を覆おうとして、布が足りなくて困っている。その姿が何だか愛らしくて、私は微笑んだ。
「扇様は、紺様が本当にお好きなんですね」
ベッドに腰掛ける扇様の目の前の椅子に腰掛けながら、そう呟く。扇様は更に顔を赤くして、毛布に顔を埋めてしまった。ベッドの上には、ふわふわの毛布以外掛け布団のようなものはなかった。肌寒くなったこの時期でも、布一枚で眠っているようだ。風邪をひかないと良いが。
「…こ、紺様は本当に格好良いのよ…」
震える声で、そう話す扇様。リンゴみたいに真っ赤になった顔が、毛布の隙間から覗く。
「紺様のことを、私は昔から…」
コンコン、とノックの音が響く。扇様がしっかりした声で「はい」と返事した。
「お召し物をお持ちしました」
そこにあったのは、綺麗なワンピース。一見暖かそうに見えるが、ところどころが薄い生地で作られていて、熱いや暑いが苦手な扇様でも嫌がらずに着られるような服だった。
「…ありがとう」
「…お嬢様、何故そんなにお顔をお隠しになられているのです…?」
「こ、これは色々あったのよ!」
「ちょっと紺様についてお話ししていただけだよ」
私がサラッと事情を説明すると、扇様は慌てた。その様子を見た花火は、慣れているのか仕事モードを崩さなかった。
「あぁ…紺様なら、もうすぐこちらに着くそうですよ。早く着替えませんと、長い時間会えませんわ」
「わ、わかってるわよ」
女性とはいえ、着替えを堂々と見るのは罪悪感やら恥ずかしさがある。私はベッドから離れて、繋がっているもう一部屋の方へ行った。一応寝室と分かれているようで、私はそっちで大人しくしていることに決めた。
少し経って、着替え終えた扇様と花火が来た。扇様の黒髪と、ワンピースの色合いが絶妙だ。
「今日、紺様がいらっしゃるのに私もいて良いの?」
「大丈夫じゃないかしら…まぁ、最悪新しいメイドを雇おうと思って、とか言っとけば何とかなるわよ」
花火が適当に言う。そんな態度が珍しくて、私はつい笑ってしまった。花火が不思議そうに首を傾げていると、またノックの音が部屋に響いた。
扇様は、はだけた衣服を少し直した後でそう言った。私は目線に困り、目を泳がせながら「大丈夫です」と答えた。そしてふと、先程話していた紺様という名前が気になった。紺様。扇様の澪愛家と古くから付き合いがある鳳凰家の長男。紺様は確か私より2歳年上なので、扇様とは3歳差か。
「今日は、紺様がいらっしゃるのですか?」
私の言葉に、扇様は頬を赤らめた。薄い布で顔を覆おうとして、布が足りなくて困っている。その姿が何だか愛らしくて、私は微笑んだ。
「扇様は、紺様が本当にお好きなんですね」
ベッドに腰掛ける扇様の目の前の椅子に腰掛けながら、そう呟く。扇様は更に顔を赤くして、毛布に顔を埋めてしまった。ベッドの上には、ふわふわの毛布以外掛け布団のようなものはなかった。肌寒くなったこの時期でも、布一枚で眠っているようだ。風邪をひかないと良いが。
「…こ、紺様は本当に格好良いのよ…」
震える声で、そう話す扇様。リンゴみたいに真っ赤になった顔が、毛布の隙間から覗く。
「紺様のことを、私は昔から…」
コンコン、とノックの音が響く。扇様がしっかりした声で「はい」と返事した。
「お召し物をお持ちしました」
そこにあったのは、綺麗なワンピース。一見暖かそうに見えるが、ところどころが薄い生地で作られていて、熱いや暑いが苦手な扇様でも嫌がらずに着られるような服だった。
「…ありがとう」
「…お嬢様、何故そんなにお顔をお隠しになられているのです…?」
「こ、これは色々あったのよ!」
「ちょっと紺様についてお話ししていただけだよ」
私がサラッと事情を説明すると、扇様は慌てた。その様子を見た花火は、慣れているのか仕事モードを崩さなかった。
「あぁ…紺様なら、もうすぐこちらに着くそうですよ。早く着替えませんと、長い時間会えませんわ」
「わ、わかってるわよ」
女性とはいえ、着替えを堂々と見るのは罪悪感やら恥ずかしさがある。私はベッドから離れて、繋がっているもう一部屋の方へ行った。一応寝室と分かれているようで、私はそっちで大人しくしていることに決めた。
少し経って、着替え終えた扇様と花火が来た。扇様の黒髪と、ワンピースの色合いが絶妙だ。
「今日、紺様がいらっしゃるのに私もいて良いの?」
「大丈夫じゃないかしら…まぁ、最悪新しいメイドを雇おうと思って、とか言っとけば何とかなるわよ」
花火が適当に言う。そんな態度が珍しくて、私はつい笑ってしまった。花火が不思議そうに首を傾げていると、またノックの音が部屋に響いた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』
本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」
かつて、私は信じていた。
優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な──
そんな普通のお兄ちゃんを。
でも──
中学卒業の春、
帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、
私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった!
家では「戦利品だー!」と絶叫し、
年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、
さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!?
……ちがう。
こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない!
たとえ、世界中がオタクを称えたって、
私は、絶対に──
お兄ちゃんを“元に戻して”みせる!
これは、
ブラコン妹と
中二病オタク姫が、
一人の「兄」をめぐって
全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──!
そしていつしか、
誰も予想できなかった
本当の「大好き」のカタチを探す、
壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる