神様自学

天ノ谷 霙

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11月14日 着替え

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「こんな格好でごめんなさいね」
扇様は、はだけた衣服を少し直した後でそう言った。私は目線に困り、目を泳がせながら「大丈夫です」と答えた。そしてふと、先程話していた紺様という名前が気になった。紺様。扇様の澪愛みおう家と古くから付き合いがある鳳凰ほうおう家の長男。紺様は確か私より2歳年上なので、扇様とは3歳差か。
「今日は、紺様がいらっしゃるのですか?」
私の言葉に、扇様は頬を赤らめた。薄い布で顔を覆おうとして、布が足りなくて困っている。その姿が何だか愛らしくて、私は微笑んだ。
「扇様は、紺様が本当にお好きなんですね」
ベッドに腰掛ける扇様の目の前の椅子に腰掛けながら、そう呟く。扇様は更に顔を赤くして、毛布に顔を埋めてしまった。ベッドの上には、ふわふわの毛布以外掛け布団のようなものはなかった。肌寒くなったこの時期でも、布一枚で眠っているようだ。風邪をひかないと良いが。
「…こ、紺様は本当に格好良いのよ…」
震える声で、そう話す扇様。リンゴみたいに真っ赤になった顔が、毛布の隙間から覗く。
「紺様のことを、私は昔から…」
コンコン、とノックの音が響く。扇様がしっかりした声で「はい」と返事した。
「お召し物をお持ちしました」
そこにあったのは、綺麗なワンピース。一見暖かそうに見えるが、ところどころが薄い生地で作られていて、熱いや暑いが苦手な扇様でも嫌がらずに着られるような服だった。
「…ありがとう」
「…お嬢様、何故そんなにお顔をお隠しになられているのです…?」
「こ、これは色々あったのよ!」
「ちょっと紺様についてお話ししていただけだよ」
私がサラッと事情を説明すると、扇様は慌てた。その様子を見た花火は、慣れているのか仕事モードを崩さなかった。
「あぁ…紺様なら、もうすぐこちらに着くそうですよ。早く着替えませんと、長い時間会えませんわ」
「わ、わかってるわよ」
女性とはいえ、着替えを堂々と見るのは罪悪感やら恥ずかしさがある。私はベッドから離れて、繋がっているもう一部屋の方へ行った。一応寝室と分かれているようで、私はそっちで大人しくしていることに決めた。
少し経って、着替え終えた扇様と花火が来た。扇様の黒髪と、ワンピースの色合いが絶妙だ。
「今日、紺様がいらっしゃるのに私もいて良いの?」
「大丈夫じゃないかしら…まぁ、最悪新しいメイドを雇おうと思って、とか言っとけば何とかなるわよ」
花火が適当に言う。そんな態度が珍しくて、私はつい笑ってしまった。花火が不思議そうに首を傾げていると、またノックの音が部屋に響いた。
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