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Merry Christmas 2018!竜夜
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もうすっかり暗くなった中、イルミネーションや電灯が明るく街を照らしだしていた。そんな中、俺の背後に迫る足音。
「りゅーうーやーくーん!!」
「うぉわっ!?」
紗奈とのデート帰りに止まってお喋りしていると、後ろから俺の名前を呼ぶ声と背中に重さが一気にのしかかってきた。目の前で驚きの表情を示す紗奈にどうすれば良いか分からず、背中に乗る誰かを下ろして振り向く。
そこにいたのは、知らない女の子だった。
「えっ…と…?」
「久しぶり、竜夜くん!やっと会えた!楽しみにしてたんだよ」
相手は俺が竜夜であることを分かっているようで、腕にくっついてくる。彼女が目の前にいるというのに気付いているのかいないのか、遠慮のない女の子だ。俺が誰だか分かってないせいで、邪険に扱いにくいというのもあるのだろうか。
俺が戸惑って怪訝そうな顔をしていると、女の子は腕を少しだけ緩めて、首を傾げた。
「あれ?もしかして竜夜くん、和音が誰だか分かってない?」
俺が申し訳なさそうに頷くと、自分のことを和音と呼ぶその女の子は頬を膨らませた。
「もう、竜夜くんってば忘れん坊!和音は栗ノ木 和音だよ!竜夜くん、従姉妹の名前も忘れたの?」
「えっ!?和音!?」
俺の記憶の中にある従姉妹は、3歳年下で、いつも咳をして布団から離れられないような女の子だった。白い肌と弱々しい声が印象的な静かな女の子と、目の前の活発そうな無遠慮な女の子が結びつかない。
「ごめん…昔と全然雰囲気が違うから気付かなかった…」
「しょうがないなぁ、竜夜くんはっ!」
俺の言い訳をポジティブに受け取ったのか、和音は機嫌を良くしてまた腕を組んでくる。俺は少し抵抗して、腕を解いた。和音は眉間にシワを寄せて、あからさまに不満を顔に出す。
「俺、彼女いるから…腕組むのは、勘弁な」
そう言って、俺はオレンジ髪の彼女を見る。眼鏡の奥の瞳を呆然とさせながら、俺たちの会話を見守る紗奈。俺たちは、紗奈が嫌がるのであまり腕を組んだり手を繋いだりしたことはない。何の躊躇いもなく他人にやられるのは紗奈にとっても気分は良くないだろう。
「えっ…竜夜くん彼女いるの?何で?和音は?」
「何でって…」
「わ、和音…竜夜くんに会いに来たのに…竜夜くんの恋人になるために…お医者さんも説得して来たのに…」
和音がちらっと後ろを向くと、スーツ姿の女性が現れた。その姿には見覚えがあり、和音に昔から付いていた医者だった。和音と会ったのは10年くらい前だが、その時の記憶とほぼ見た目の変わらない女性だった。
「久しぶり、竜夜くん。元気そうで安心したよ。和音が騒いでるけど、気にしなくて大丈夫」
「ちょっと、和音は気にされないと大丈夫じゃないんだけどっ!やーだーっ竜夜くんは和音の恋人なのっ!」
和音は14歳になるはずだが、子供っぽい言動が目立つ女の子だった。注意したのに俺にくっつくのをやめない。正直苦手なタイプの女の子だ。医者の女性に無理やり離されて、やっと俺から離れた。
「ていうかっ彼女って誰!?」
「えっ…と…」
紗奈しか近くにはいないのだが、周りが見えていないのだろうか。目線で紗奈に訴えると、紗奈は表情を曇らせて口を開いた。
「私が竜夜の彼女の…今入 紗奈です」
「えっ!?」
この子が、という表情を隠しもしない和音。その姿は、たまにある告白を断った後のやり取りを想起させた。
『彼女を見せてください。本当にいるのなら、諦めます』
断る口実として「彼女がいる」と言っていると思われることがあるのだ。約束通り紗奈を紹介したり写真を見せると、今の和音のような顔をする。
俺の自慢の彼女だし、大切な彼女に向かってあんな表情をされるのは、正直いい気はしない。
「本当に?本当に和音より竜夜くんのこと好き?じゃあ証拠見せてよ」
年上にタメ口な上、変なことを言い出す和音。わがままを通そうとする和音に、怒ろうとする。
しかし紗奈は俺の手を取って、静かに指先に口付けをした。
「…え?それが証拠?」
「…指先へのキスは“貴方を愛しています”って意味もあるんだよ」
そう呟いて紗奈は顔を真っ赤にしてスタスタ歩き出してしまった。
「ま、待っ…」
不意打ちすぎる。俺の耳が熱を帯びる。寒さのせいだけではない。紗奈の声が耳に響いて、熱を増す。
「…ごめん、和音。また今度な。この後も送って行けないので、宜しくお願いします」
俺は深くお辞儀をして、紗奈を追いかける。呆然とする和音を構うことなど出来ず、紗奈の隣に並ぶ。
「紗奈っ」
「…忘れて」
「え?」
「忘れてって言ってんのばか竜夜!!!」
暗闇の中でも分かるほど顔を赤くした紗奈。照れが混ざった怒り方。見たことのある怒り方に、紗奈の今の気分を想像する。
「…もしかして、ヤキモチ妬いてた?」
かあぁっと、更に真っ赤になる紗奈。図星のようだ。
「…ねぇ紗奈」
「…何」
「俺も愛してるよ」
「…っば、か…」
紗奈はマフラーに顔を埋めて、顔をあまり見せてくれなくなった。やがてポケットにしまった右手を出して、俺のコートの裾を掴んだ。
「?…何?」
「別に…」
紗奈が目を逸らしながら手を離そうとするので、俺はとっさにその手を取った。紗奈はマフラーから目だけを出しながら、じっと俺を見つめた。
「…それで良いんだよ、ばか」
照れ隠しに、ばか、と言ってくる紗奈。久しぶりに握った手が、熱を帯びていくのが分かった。
「りゅーうーやーくーん!!」
「うぉわっ!?」
紗奈とのデート帰りに止まってお喋りしていると、後ろから俺の名前を呼ぶ声と背中に重さが一気にのしかかってきた。目の前で驚きの表情を示す紗奈にどうすれば良いか分からず、背中に乗る誰かを下ろして振り向く。
そこにいたのは、知らない女の子だった。
「えっ…と…?」
「久しぶり、竜夜くん!やっと会えた!楽しみにしてたんだよ」
相手は俺が竜夜であることを分かっているようで、腕にくっついてくる。彼女が目の前にいるというのに気付いているのかいないのか、遠慮のない女の子だ。俺が誰だか分かってないせいで、邪険に扱いにくいというのもあるのだろうか。
俺が戸惑って怪訝そうな顔をしていると、女の子は腕を少しだけ緩めて、首を傾げた。
「あれ?もしかして竜夜くん、和音が誰だか分かってない?」
俺が申し訳なさそうに頷くと、自分のことを和音と呼ぶその女の子は頬を膨らませた。
「もう、竜夜くんってば忘れん坊!和音は栗ノ木 和音だよ!竜夜くん、従姉妹の名前も忘れたの?」
「えっ!?和音!?」
俺の記憶の中にある従姉妹は、3歳年下で、いつも咳をして布団から離れられないような女の子だった。白い肌と弱々しい声が印象的な静かな女の子と、目の前の活発そうな無遠慮な女の子が結びつかない。
「ごめん…昔と全然雰囲気が違うから気付かなかった…」
「しょうがないなぁ、竜夜くんはっ!」
俺の言い訳をポジティブに受け取ったのか、和音は機嫌を良くしてまた腕を組んでくる。俺は少し抵抗して、腕を解いた。和音は眉間にシワを寄せて、あからさまに不満を顔に出す。
「俺、彼女いるから…腕組むのは、勘弁な」
そう言って、俺はオレンジ髪の彼女を見る。眼鏡の奥の瞳を呆然とさせながら、俺たちの会話を見守る紗奈。俺たちは、紗奈が嫌がるのであまり腕を組んだり手を繋いだりしたことはない。何の躊躇いもなく他人にやられるのは紗奈にとっても気分は良くないだろう。
「えっ…竜夜くん彼女いるの?何で?和音は?」
「何でって…」
「わ、和音…竜夜くんに会いに来たのに…竜夜くんの恋人になるために…お医者さんも説得して来たのに…」
和音がちらっと後ろを向くと、スーツ姿の女性が現れた。その姿には見覚えがあり、和音に昔から付いていた医者だった。和音と会ったのは10年くらい前だが、その時の記憶とほぼ見た目の変わらない女性だった。
「久しぶり、竜夜くん。元気そうで安心したよ。和音が騒いでるけど、気にしなくて大丈夫」
「ちょっと、和音は気にされないと大丈夫じゃないんだけどっ!やーだーっ竜夜くんは和音の恋人なのっ!」
和音は14歳になるはずだが、子供っぽい言動が目立つ女の子だった。注意したのに俺にくっつくのをやめない。正直苦手なタイプの女の子だ。医者の女性に無理やり離されて、やっと俺から離れた。
「ていうかっ彼女って誰!?」
「えっ…と…」
紗奈しか近くにはいないのだが、周りが見えていないのだろうか。目線で紗奈に訴えると、紗奈は表情を曇らせて口を開いた。
「私が竜夜の彼女の…今入 紗奈です」
「えっ!?」
この子が、という表情を隠しもしない和音。その姿は、たまにある告白を断った後のやり取りを想起させた。
『彼女を見せてください。本当にいるのなら、諦めます』
断る口実として「彼女がいる」と言っていると思われることがあるのだ。約束通り紗奈を紹介したり写真を見せると、今の和音のような顔をする。
俺の自慢の彼女だし、大切な彼女に向かってあんな表情をされるのは、正直いい気はしない。
「本当に?本当に和音より竜夜くんのこと好き?じゃあ証拠見せてよ」
年上にタメ口な上、変なことを言い出す和音。わがままを通そうとする和音に、怒ろうとする。
しかし紗奈は俺の手を取って、静かに指先に口付けをした。
「…え?それが証拠?」
「…指先へのキスは“貴方を愛しています”って意味もあるんだよ」
そう呟いて紗奈は顔を真っ赤にしてスタスタ歩き出してしまった。
「ま、待っ…」
不意打ちすぎる。俺の耳が熱を帯びる。寒さのせいだけではない。紗奈の声が耳に響いて、熱を増す。
「…ごめん、和音。また今度な。この後も送って行けないので、宜しくお願いします」
俺は深くお辞儀をして、紗奈を追いかける。呆然とする和音を構うことなど出来ず、紗奈の隣に並ぶ。
「紗奈っ」
「…忘れて」
「え?」
「忘れてって言ってんのばか竜夜!!!」
暗闇の中でも分かるほど顔を赤くした紗奈。照れが混ざった怒り方。見たことのある怒り方に、紗奈の今の気分を想像する。
「…もしかして、ヤキモチ妬いてた?」
かあぁっと、更に真っ赤になる紗奈。図星のようだ。
「…ねぇ紗奈」
「…何」
「俺も愛してるよ」
「…っば、か…」
紗奈はマフラーに顔を埋めて、顔をあまり見せてくれなくなった。やがてポケットにしまった右手を出して、俺のコートの裾を掴んだ。
「?…何?」
「別に…」
紗奈が目を逸らしながら手を離そうとするので、俺はとっさにその手を取った。紗奈はマフラーから目だけを出しながら、じっと俺を見つめた。
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