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1月30日 お昼ご飯
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一通り見終えたため水族館を出て、近くのレストランを探す。近くにあった大きなショッピングモールに入り中を探索すると、学生向けの値段設定であるレストランもたくさん目に入って来た。
「何食べる?」
「うーん、お昼だし…あっパスタとか?」
「良いね。あ、あそこはどう?」
見慣れたチェーン店ではなく、あまり知らない名前の店を選んで示す。黒板風の看板には美味しそうなパスタやピザの写真がセンス良く貼り付けられており、その横には可愛らしい文字で説明書きがされていた。窓から見える店内はオレンジがかった明るい電球に照らされ、温かい雰囲気である。ポツポツと人が座っており、知る人ぞ知る店のように思えた。
「入ってみようか」
「そうだね」
開いたままのドアをくぐると、「いらっしゃいませ~」と明るい女性の声が聞こえて来た。
「お好きな席へどうぞ~」
フリルエプロンを付けた背の高い店員さんが、人懐っこい笑顔を浮かべながら声を掛けてくれる。彼女は食器を下げると、代わりにメニュー表と水を持って席に着いた私達の元へやって来た。
「ご注文がお決まりになりましたら、備え付けのベルでお呼びください~」
間延びした口調でにこにこと話す女性に、つられて笑顔を返す。メニューに視線を移すと、表の看板と同じような作りで一つ一つの料理について丁寧に書かれていた。
「凄いね。皆美味しそう」
「うん。何食べようかな」
悩んだ結果、私は海老のトマトクリームパスタとオレンジジュース、羅樹はミートソースパスタとぶどうジュースを頼んだ。先程の水族館やここに来るまでに見た店の話をしていると、あっという間に料理が運ばれて来た。
「ごゆっくりどうぞ~」
差し出されたお皿の上には、熱々のパスタが乗っていた。海老とブロッコリーがまばらに置かれており、彩りも鮮やかだ。
「「いただきます」」
何を言わずとも揃った声に、思わず笑ってしまう。フォークで一口分掬い取って口の中に運ぶと、ふわっとトマトの酸味が口の中に広がった。それはしつこさなど全く感じさせず、後を追うように広がったクリームの味が口内を包み込んでくれる。滑らかな口当たりで、いくらでも食べていられそうだ。ブロッコリーや海老も、ソースと絡み合いつつ素材本来の味は失っていない。絶妙な味の変化を楽しみつつ、食事を楽しむ。羅樹も口に合ったらしく、にこにこしながら食べている。
「美味しいね」
「うん!美味しい」
時折会話を交わしながら、ゆっくりと食べ進めていく。時間の進みが遅くなったかのように、ゆったりとした空間が広がっていた。それに甘えて、ジュースに口を付けながら小休憩を挟む。
「次はどこ行こうか?」
「うん?さっき言ってたお店、見て回るんじゃないの?」
「え?いいの?」
「いいよ。行こうか!」
羅樹が会計の準備を始めたので、私も頷いて店を出ることにした。とても雰囲気が良いお店だったので、また来たいと思う。
「ありがとうございました~」
店員さんに見送られて、店の外に出る。何から見ようかな、と思考を巡らせていると、羅樹に手を差し出された。
「え?」
「手。繋がないの?」
「つ、繋ぐ!」
慌てて手を握ると、羅樹はふふっと楽しそうに笑った。いや、どちらかというと嬉しそうに。
私も同じような顔をしているのかもしれない。恥ずかしくなって来たので、私は表情筋に力を入れることにした。
「何食べる?」
「うーん、お昼だし…あっパスタとか?」
「良いね。あ、あそこはどう?」
見慣れたチェーン店ではなく、あまり知らない名前の店を選んで示す。黒板風の看板には美味しそうなパスタやピザの写真がセンス良く貼り付けられており、その横には可愛らしい文字で説明書きがされていた。窓から見える店内はオレンジがかった明るい電球に照らされ、温かい雰囲気である。ポツポツと人が座っており、知る人ぞ知る店のように思えた。
「入ってみようか」
「そうだね」
開いたままのドアをくぐると、「いらっしゃいませ~」と明るい女性の声が聞こえて来た。
「お好きな席へどうぞ~」
フリルエプロンを付けた背の高い店員さんが、人懐っこい笑顔を浮かべながら声を掛けてくれる。彼女は食器を下げると、代わりにメニュー表と水を持って席に着いた私達の元へやって来た。
「ご注文がお決まりになりましたら、備え付けのベルでお呼びください~」
間延びした口調でにこにこと話す女性に、つられて笑顔を返す。メニューに視線を移すと、表の看板と同じような作りで一つ一つの料理について丁寧に書かれていた。
「凄いね。皆美味しそう」
「うん。何食べようかな」
悩んだ結果、私は海老のトマトクリームパスタとオレンジジュース、羅樹はミートソースパスタとぶどうジュースを頼んだ。先程の水族館やここに来るまでに見た店の話をしていると、あっという間に料理が運ばれて来た。
「ごゆっくりどうぞ~」
差し出されたお皿の上には、熱々のパスタが乗っていた。海老とブロッコリーがまばらに置かれており、彩りも鮮やかだ。
「「いただきます」」
何を言わずとも揃った声に、思わず笑ってしまう。フォークで一口分掬い取って口の中に運ぶと、ふわっとトマトの酸味が口の中に広がった。それはしつこさなど全く感じさせず、後を追うように広がったクリームの味が口内を包み込んでくれる。滑らかな口当たりで、いくらでも食べていられそうだ。ブロッコリーや海老も、ソースと絡み合いつつ素材本来の味は失っていない。絶妙な味の変化を楽しみつつ、食事を楽しむ。羅樹も口に合ったらしく、にこにこしながら食べている。
「美味しいね」
「うん!美味しい」
時折会話を交わしながら、ゆっくりと食べ進めていく。時間の進みが遅くなったかのように、ゆったりとした空間が広がっていた。それに甘えて、ジュースに口を付けながら小休憩を挟む。
「次はどこ行こうか?」
「うん?さっき言ってたお店、見て回るんじゃないの?」
「え?いいの?」
「いいよ。行こうか!」
羅樹が会計の準備を始めたので、私も頷いて店を出ることにした。とても雰囲気が良いお店だったので、また来たいと思う。
「ありがとうございました~」
店員さんに見送られて、店の外に出る。何から見ようかな、と思考を巡らせていると、羅樹に手を差し出された。
「え?」
「手。繋がないの?」
「つ、繋ぐ!」
慌てて手を握ると、羅樹はふふっと楽しそうに笑った。いや、どちらかというと嬉しそうに。
私も同じような顔をしているのかもしれない。恥ずかしくなって来たので、私は表情筋に力を入れることにした。
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