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2月13日 お菓子作り
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昼食を終え、後片付けもするといよいよチョコ作りの開始である。オーブンレンジは一つしかないし、冷やすのに時間が掛かるものは早めに行っておきたい。色々と考えながら、とりあえずレシピを取り出す。
「私はチョコレートケーキを作ろうかな」
「私…は、桜がチョコ苦手、だから…クッキーにする」
「え?そうなの?」
聞き返すと、微かに頬を赤く染めたまま頷いた。そこで照れるということはやはり、とは思うが突っ込まないでおく。
「夕音の、ケーキなら炊飯器使うと上手くいくかも」
「炊飯器?」
「うん…あの、生地を入れて炊くと、ふんわり仕上がるから」
「なるほど。それならクッキー焼くのと被らないしいいかもね」
私はチョコを必要分刻むとボールに入れて溶かし、明は常温に戻しておいたバターを混ぜ、とそれぞれの作業に移った。甘い香りがキッチンを包む。
「んー…良い香り」
「そう、だね」
自然と頬が緩む。明を見ると、幸せそうな顔を浮かべていた。少しずつ表情筋が解れて来たのだろうか。明が何の懸念もなく表情を出せるようになる日が待ち遠しい。そんなことを考えながら生地のタネを混ぜ合わせる。カシャカシャと手際良く混ぜるのが大変であるが、美味しいものを作るために妥協はしない。明も生地を混ぜている。2人でカシャカシャ混ぜていると、お菓子作りをしている実感が湧いて来て、どちらからともなく笑った。
「お菓子作りって割と重労働だよね」
「ケーキ屋さんとか、大変そう」
「腱鞘炎になるって聞くよね。でもそのお陰で私達は美味しいものが食べられるわけで、ありがたみがわかるって感じかな」
明が頷き、同意を示してくれる。明の手元では既に生地が丸められていた。
「1時間くらい、寝かす」
「冷蔵庫の上の方空いてるから、入れちゃって良いよ」
「あり、がと」
私も生地を混ぜ終えたので、言われた通り炊飯器の中へ入れることにする。
「先にバターかマーガリンか、敷くと、綺麗に取れる」
「あ、確かに!ありがとう」
私はバターを炊飯器の表面に塗り、生地を注ぐ。夜ご飯の前にしっかり洗わなければ、米にチョコの香りが付いてしまいそうだな、とふと思った。
「スイッチ、オン~!」
炊飯のスイッチを押して、ピロリロと耳に心地良い音が鳴る。私も炊けるのを待つ間暇になってしまった。今まで使った器具を明と共に洗い、この後の工程に備える。デコレーションやラッピングなどは、乙女心が試される試練の時間だ。生クリームや粉砂糖、カラースプレーにアラザンなどを確認して暫しの休憩を取ることにした。
「私はチョコレートケーキを作ろうかな」
「私…は、桜がチョコ苦手、だから…クッキーにする」
「え?そうなの?」
聞き返すと、微かに頬を赤く染めたまま頷いた。そこで照れるということはやはり、とは思うが突っ込まないでおく。
「夕音の、ケーキなら炊飯器使うと上手くいくかも」
「炊飯器?」
「うん…あの、生地を入れて炊くと、ふんわり仕上がるから」
「なるほど。それならクッキー焼くのと被らないしいいかもね」
私はチョコを必要分刻むとボールに入れて溶かし、明は常温に戻しておいたバターを混ぜ、とそれぞれの作業に移った。甘い香りがキッチンを包む。
「んー…良い香り」
「そう、だね」
自然と頬が緩む。明を見ると、幸せそうな顔を浮かべていた。少しずつ表情筋が解れて来たのだろうか。明が何の懸念もなく表情を出せるようになる日が待ち遠しい。そんなことを考えながら生地のタネを混ぜ合わせる。カシャカシャと手際良く混ぜるのが大変であるが、美味しいものを作るために妥協はしない。明も生地を混ぜている。2人でカシャカシャ混ぜていると、お菓子作りをしている実感が湧いて来て、どちらからともなく笑った。
「お菓子作りって割と重労働だよね」
「ケーキ屋さんとか、大変そう」
「腱鞘炎になるって聞くよね。でもそのお陰で私達は美味しいものが食べられるわけで、ありがたみがわかるって感じかな」
明が頷き、同意を示してくれる。明の手元では既に生地が丸められていた。
「1時間くらい、寝かす」
「冷蔵庫の上の方空いてるから、入れちゃって良いよ」
「あり、がと」
私も生地を混ぜ終えたので、言われた通り炊飯器の中へ入れることにする。
「先にバターかマーガリンか、敷くと、綺麗に取れる」
「あ、確かに!ありがとう」
私はバターを炊飯器の表面に塗り、生地を注ぐ。夜ご飯の前にしっかり洗わなければ、米にチョコの香りが付いてしまいそうだな、とふと思った。
「スイッチ、オン~!」
炊飯のスイッチを押して、ピロリロと耳に心地良い音が鳴る。私も炊けるのを待つ間暇になってしまった。今まで使った器具を明と共に洗い、この後の工程に備える。デコレーションやラッピングなどは、乙女心が試される試練の時間だ。生クリームや粉砂糖、カラースプレーにアラザンなどを確認して暫しの休憩を取ることにした。
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