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体育祭 午後の部
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お弁当を食べ終わり、午後の準備が始まる。
「雪くん、コーンの準備とかライン引きしないとだから急いでっ」
クラスのドアの近くで焦る紗奈の声がした。そちらに目をやると、食べるのがあまり早くない冬間くんに話しかけていた。そういえば体育祭実施委員は4人いて、冬間くん、紗奈、霙さん、梶栗くんだった。霙さんや梶栗くんが全体に指示を出すのをやっていたので、あまり目立たなかったが2人もそうだったな、と考える。
「頑張れ」
私はひそかにそう呟いた。
午後の最初の種目は応援合戦。ひと学年につき9クラスもあるので3クラス同時で行う。私達は3組なので、学年の最後の組に入る。
最初の3クラス、1組、4組、7組が始まった。
「見て見て!富くんが踊ってる!」
「本当だ、これは弟も負けられないね」
「あ、鹿宮くんだ」
「あんなにフリフリの格好しているのに、爽やかだね」
「あれ、五十嵐くんじゃない?」
「あ、マジだ。よく気付いたね」
3組のメンバーは比較的4組と仲が良く、知っている人も多い。だから4組の人の名前が飛び交う。
知っている人を見つけていると、私達の番になった。私達はシャツに袴を模したガウチョパンツを着て、上から浴衣を羽織っている。あまりお金をかけないように、女子で浴衣をたくさんもっている人に借りた。ガウチョパンツも元々は男性の服装だったということをクラス全体に話し、男子に納得してもらってから服を決めた。浴衣とガウチョパンツがカラフルなので派手な印象だが、手に紅い蛇の目傘を持っているので引き締まった印象になる。私達はそれを持って舞うように踊る。魅せると同時に、自分たちでも色や浴衣の広がりが楽しめ次の種目の準備やら、仕事の確認やらをしていた。私の出場競技はもうないので、応援に専念する。次は三年生の全員出場種目、百足リレーだった。40人くらいのひとクラスを5チームに分けて、リレーをする。三年生はこれのために朝練をしているクラスもあった。たくさんぶつかって、仲違いを起こす競技だけど、この種目終了後が一番先輩方は輝いていた。
来年はいよいよ、私達の番、か。
そんなことを考えながら先輩方の競技を見ている。太陽が先輩方にスポットライトを当てているかのようにきらきらとしていた。
百足リレー終了のピストルが鳴ったと同時に、校舎から飾られていた国旗が一気に落下した。生徒達に怪我はなかったが、驚きによる悲鳴があちこちで聞こえた。
「竜夜!」
「おうよ!」
いつも言い争いばかりしているのに、こういう時だけは息ぴったりな霙さんと梶栗くんを見つけて、少しだけ冷静になれた。
だから、私は物陰に隠れて念じる。人間の姿じゃ何も出来ないかもしれない。だけど、恋使の姿なら?
私はそう考えた。そして、姿を変えた瞬間、稲荷様の姿が視界に入った。
「稲荷、様!」
「夕音、話は後じゃ。あいつが来ておる」
「あいつって…?」
「…夕音はまだ会ったことが無かったかの。あそこに座って、不気味に笑っている…神じゃ」
「神、様…?」
私は、さっきまで旗が結ばれていたあたりに座る影を見つけた。そこに座る男のような見た目の神様は、一見好青年のようだった。しかし、私と目が合うと意地悪そうな笑みを浮かべた。
「あいつを説得してくれぬか?わたしではあいつは動かない。ただ気を付けろ、あいつは悪知恵の神だ」
「…わかりました」
私はふわりと浮き、神の元へ向かう。嬉しそうに、楽しそうに、不気味に笑う神の元へと。
「雪くん、コーンの準備とかライン引きしないとだから急いでっ」
クラスのドアの近くで焦る紗奈の声がした。そちらに目をやると、食べるのがあまり早くない冬間くんに話しかけていた。そういえば体育祭実施委員は4人いて、冬間くん、紗奈、霙さん、梶栗くんだった。霙さんや梶栗くんが全体に指示を出すのをやっていたので、あまり目立たなかったが2人もそうだったな、と考える。
「頑張れ」
私はひそかにそう呟いた。
午後の最初の種目は応援合戦。ひと学年につき9クラスもあるので3クラス同時で行う。私達は3組なので、学年の最後の組に入る。
最初の3クラス、1組、4組、7組が始まった。
「見て見て!富くんが踊ってる!」
「本当だ、これは弟も負けられないね」
「あ、鹿宮くんだ」
「あんなにフリフリの格好しているのに、爽やかだね」
「あれ、五十嵐くんじゃない?」
「あ、マジだ。よく気付いたね」
3組のメンバーは比較的4組と仲が良く、知っている人も多い。だから4組の人の名前が飛び交う。
知っている人を見つけていると、私達の番になった。私達はシャツに袴を模したガウチョパンツを着て、上から浴衣を羽織っている。あまりお金をかけないように、女子で浴衣をたくさんもっている人に借りた。ガウチョパンツも元々は男性の服装だったということをクラス全体に話し、男子に納得してもらってから服を決めた。浴衣とガウチョパンツがカラフルなので派手な印象だが、手に紅い蛇の目傘を持っているので引き締まった印象になる。私達はそれを持って舞うように踊る。魅せると同時に、自分たちでも色や浴衣の広がりが楽しめ次の種目の準備やら、仕事の確認やらをしていた。私の出場競技はもうないので、応援に専念する。次は三年生の全員出場種目、百足リレーだった。40人くらいのひとクラスを5チームに分けて、リレーをする。三年生はこれのために朝練をしているクラスもあった。たくさんぶつかって、仲違いを起こす競技だけど、この種目終了後が一番先輩方は輝いていた。
来年はいよいよ、私達の番、か。
そんなことを考えながら先輩方の競技を見ている。太陽が先輩方にスポットライトを当てているかのようにきらきらとしていた。
百足リレー終了のピストルが鳴ったと同時に、校舎から飾られていた国旗が一気に落下した。生徒達に怪我はなかったが、驚きによる悲鳴があちこちで聞こえた。
「竜夜!」
「おうよ!」
いつも言い争いばかりしているのに、こういう時だけは息ぴったりな霙さんと梶栗くんを見つけて、少しだけ冷静になれた。
だから、私は物陰に隠れて念じる。人間の姿じゃ何も出来ないかもしれない。だけど、恋使の姿なら?
私はそう考えた。そして、姿を変えた瞬間、稲荷様の姿が視界に入った。
「稲荷、様!」
「夕音、話は後じゃ。あいつが来ておる」
「あいつって…?」
「…夕音はまだ会ったことが無かったかの。あそこに座って、不気味に笑っている…神じゃ」
「神、様…?」
私は、さっきまで旗が結ばれていたあたりに座る影を見つけた。そこに座る男のような見た目の神様は、一見好青年のようだった。しかし、私と目が合うと意地悪そうな笑みを浮かべた。
「あいつを説得してくれぬか?わたしではあいつは動かない。ただ気を付けろ、あいつは悪知恵の神だ」
「…わかりました」
私はふわりと浮き、神の元へ向かう。嬉しそうに、楽しそうに、不気味に笑う神の元へと。
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