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体育祭 午前種目
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「これから、第52回光輝高等学校体育祭を開式致します」
「準備体操…基準!」
そんな声が聞こえて、開会式は終了した。午前最初の競技はクラスから各2名を出して100m走。他校では無いという学校も少なく無いらしいが、私達の学校ではやる。私のクラスからは亜美と小野くんが選抜された。
「頑張れ」
「亜美、ファイトー!」
「小野くん、いっけー!」
様々な応援の声が聞こえて、盛り上がる。結果は亜美が3位、小野くんが2位だった。
次は障害物競走。4人が出る。最初の縄潜りと平均台を器用な林くん。粉の中に入っているマシュマロ探しで顔を真っ白にしているのは梶栗くん。紙に書かれたものを探すのは由芽さん。人間とは思えない跳躍で菓子パンを簡単にとる霙さん。一人一人が得意分野だったようで、圧勝していた。
その次は綱引き。これはクラスの半分が参加する。私は応援だったが、利羽や紗奈、深沙たちが一生懸命綱を引いていた。負けてしまったけれど、お互いの体操着が泥だらけになっているのを見て笑っていたので、あんまり落ち込んではいないようだった。男子は大海川くんや冬間くんが出ていた。相手が4組だったため、冬間家の双子対決となっていた。結果は兄、つまり富くんの勝利だった。綱引きで一気に点数を離されてしまった。
次は男子騎馬戦。これは2年生のみ行われる競技で、潮賀くん、北原くん、浅野くんたちが出ている。何故か潮賀くんがいつも付けているピンを女子のピンに変え、女の子っぽくしていた。そのおかげなのか相手は潮賀くんに乱暴なことはできないという認識が生まれたのか、王である潮賀くんの帽子は取られなかった。そのため勝利した。次は2年女子のタイヤ取り。仁義なき闘いが今、始まろうとしていた。
「いってきます」
「いってらー」
「無事、生還することを祈っている…!」
私の出場競技であるため、集合場所に行く。
「あれ?夕音?」
「あ、ら、羅樹!」
聞き慣れた声がしたので振り向くと、予想通り羅樹がいた。隣に鹿宮くんもいた。
「夕音、タイヤ取り出るの?応援してるね」
「ら、羅樹は敵でしょうがっ!」
「えー、でも夕音のことは応援するね」
「大丈夫だぞ、稲森さん。俺も霙とか明を応援しているから!」
爽やかな笑顔で鹿宮くんが言う。確かに鹿宮くんと冬間双子、霙さん、明は小学校の頃からの付き合いだとは聞いているけれど、こんな清々しい程はっきり言われてしまっては、何も言えない。私は渋々頷いて、少しだけ素直に、
「あ、…ありが、と」
と呟いた。
タイヤ取りはいつもは大人しい女子の本性が表れる。タイヤにしがみついて、引き摺られて、体育着を泥だらけにしても勝利のために身を尽くす少女たちの姿は鬼神にも似た何かがあった。
ギリギリの攻防戦の末、私達は勝利を収めた。そして、午前の部が終わった。
私が退場するときに、羅樹が嬉しそうに手を振っていたので、私もつられて笑顔になりながら手を振り返した。
「準備体操…基準!」
そんな声が聞こえて、開会式は終了した。午前最初の競技はクラスから各2名を出して100m走。他校では無いという学校も少なく無いらしいが、私達の学校ではやる。私のクラスからは亜美と小野くんが選抜された。
「頑張れ」
「亜美、ファイトー!」
「小野くん、いっけー!」
様々な応援の声が聞こえて、盛り上がる。結果は亜美が3位、小野くんが2位だった。
次は障害物競走。4人が出る。最初の縄潜りと平均台を器用な林くん。粉の中に入っているマシュマロ探しで顔を真っ白にしているのは梶栗くん。紙に書かれたものを探すのは由芽さん。人間とは思えない跳躍で菓子パンを簡単にとる霙さん。一人一人が得意分野だったようで、圧勝していた。
その次は綱引き。これはクラスの半分が参加する。私は応援だったが、利羽や紗奈、深沙たちが一生懸命綱を引いていた。負けてしまったけれど、お互いの体操着が泥だらけになっているのを見て笑っていたので、あんまり落ち込んではいないようだった。男子は大海川くんや冬間くんが出ていた。相手が4組だったため、冬間家の双子対決となっていた。結果は兄、つまり富くんの勝利だった。綱引きで一気に点数を離されてしまった。
次は男子騎馬戦。これは2年生のみ行われる競技で、潮賀くん、北原くん、浅野くんたちが出ている。何故か潮賀くんがいつも付けているピンを女子のピンに変え、女の子っぽくしていた。そのおかげなのか相手は潮賀くんに乱暴なことはできないという認識が生まれたのか、王である潮賀くんの帽子は取られなかった。そのため勝利した。次は2年女子のタイヤ取り。仁義なき闘いが今、始まろうとしていた。
「いってきます」
「いってらー」
「無事、生還することを祈っている…!」
私の出場競技であるため、集合場所に行く。
「あれ?夕音?」
「あ、ら、羅樹!」
聞き慣れた声がしたので振り向くと、予想通り羅樹がいた。隣に鹿宮くんもいた。
「夕音、タイヤ取り出るの?応援してるね」
「ら、羅樹は敵でしょうがっ!」
「えー、でも夕音のことは応援するね」
「大丈夫だぞ、稲森さん。俺も霙とか明を応援しているから!」
爽やかな笑顔で鹿宮くんが言う。確かに鹿宮くんと冬間双子、霙さん、明は小学校の頃からの付き合いだとは聞いているけれど、こんな清々しい程はっきり言われてしまっては、何も言えない。私は渋々頷いて、少しだけ素直に、
「あ、…ありが、と」
と呟いた。
タイヤ取りはいつもは大人しい女子の本性が表れる。タイヤにしがみついて、引き摺られて、体育着を泥だらけにしても勝利のために身を尽くす少女たちの姿は鬼神にも似た何かがあった。
ギリギリの攻防戦の末、私達は勝利を収めた。そして、午前の部が終わった。
私が退場するときに、羅樹が嬉しそうに手を振っていたので、私もつられて笑顔になりながら手を振り返した。
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