699 / 812
3月15日 想いの交差
しおりを挟む
何度目かのキスを終えて、やっと唇が離れる。息苦しさにじわりと浮かんだ涙を拭えば、羅樹の微笑みが視界いっぱいに広がった。反射的に顔を赤らめると、羅樹は嬉しそうに私の背に腕を回して来る。羅樹の胸に顔を埋める形になり、身じろぎをすることすら許されずに戸惑っていれば、穏やかな呼吸音が聞こえて来た。おずおずと顔を上げれば、羅樹の瞼が下りて空色の瞳は閉ざされている。睫毛が呼吸に合わせてふわふわと揺れ、息はゆったりと繰り返される。どうやら眠ってしまったらしい。体調が悪いのに変な話をして申し訳なかった、と1人反省するが、先程までの流れを思い出す度に唇に残る柔らかな感触が邪魔をして、余計に熱を帯びてしまう。まるで離さないとでもいうかのような腕の回し方といい、約束と称して奪われた唇といい、なんだかんだ羅樹に愛されていたのだなぁと今更ながらに考える。
私はずっと、羅樹は私が心配だから付き合ってくれているのだと思っていた。
告白自体が私のうっかりという予期せぬ出来事から始まったことも手伝い、そしてその直前に私が色々と自分についてを疎かにしたのもあり、羅樹は私から目を離せないから口出し出来る権利を欲しがったのだと思っていた。
それが少し違うのではないかと考え直した先でも、私は間違えていた。
羅樹はずっと昔、私が俗に言う神隠しに遭ったところを見てしまったことをトラウマに、私という存在が消える可能性について何度も恐怖を感じて来たのだ。私が体調を崩して倒れた際にかなり取り乱したのも、1週間目覚めなかった時に酷く狼狽したらしいことも、私が"消える"可能性が脳裏に強く浮かんだからだろう。
稲荷様と恋音のように、最優先の食い違いが私と羅樹の溝だと思っていた。
けれど、違った。そうではなかった。
私と羅樹は、ずっと昔から両思いだったらしい。
考えるだけで顔が熱くなり暴れ回りたくなるが、ここでそんなことをしたら羅樹を起こすこと間違い無いので自制する。
そう、これはきっと自惚れではない。あまりに急な出来事で、あまりに急な自覚だったから理解が追いついていないけれど、私はきちんと羅樹に恋愛感情で想われていたようだ。
私を連れて行ってしまう"何か"への嫌悪。
"何か"よりも自分を選んでほしいという願い。
実際に選ばせないという決意。
「…わっ……かりにく……」
それが独占欲だなんて、好き故の想いだなんて、誰が気付けるというのだろう。私が心の声を聞けなければ、きっとまた混乱していた。この力も悪くないかもな、なんて数分前と意見が変わってしまう。
「…好き、だよ。羅樹」
呟くと同時に欠伸が出て来て、他にやることもなさそうな私は全てを投げ出して眠りについたのだった。
私はずっと、羅樹は私が心配だから付き合ってくれているのだと思っていた。
告白自体が私のうっかりという予期せぬ出来事から始まったことも手伝い、そしてその直前に私が色々と自分についてを疎かにしたのもあり、羅樹は私から目を離せないから口出し出来る権利を欲しがったのだと思っていた。
それが少し違うのではないかと考え直した先でも、私は間違えていた。
羅樹はずっと昔、私が俗に言う神隠しに遭ったところを見てしまったことをトラウマに、私という存在が消える可能性について何度も恐怖を感じて来たのだ。私が体調を崩して倒れた際にかなり取り乱したのも、1週間目覚めなかった時に酷く狼狽したらしいことも、私が"消える"可能性が脳裏に強く浮かんだからだろう。
稲荷様と恋音のように、最優先の食い違いが私と羅樹の溝だと思っていた。
けれど、違った。そうではなかった。
私と羅樹は、ずっと昔から両思いだったらしい。
考えるだけで顔が熱くなり暴れ回りたくなるが、ここでそんなことをしたら羅樹を起こすこと間違い無いので自制する。
そう、これはきっと自惚れではない。あまりに急な出来事で、あまりに急な自覚だったから理解が追いついていないけれど、私はきちんと羅樹に恋愛感情で想われていたようだ。
私を連れて行ってしまう"何か"への嫌悪。
"何か"よりも自分を選んでほしいという願い。
実際に選ばせないという決意。
「…わっ……かりにく……」
それが独占欲だなんて、好き故の想いだなんて、誰が気付けるというのだろう。私が心の声を聞けなければ、きっとまた混乱していた。この力も悪くないかもな、なんて数分前と意見が変わってしまう。
「…好き、だよ。羅樹」
呟くと同時に欠伸が出て来て、他にやることもなさそうな私は全てを投げ出して眠りについたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる