神様自学

天ノ谷 霙

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3月15日 想いの交差

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何度目かのキスを終えて、やっと唇が離れる。息苦しさにじわりと浮かんだ涙を拭えば、羅樹の微笑みが視界いっぱいに広がった。反射的に顔を赤らめると、羅樹は嬉しそうに私の背に腕を回して来る。羅樹の胸に顔を埋める形になり、身じろぎをすることすら許されずに戸惑っていれば、穏やかな呼吸音が聞こえて来た。おずおずと顔を上げれば、羅樹の瞼が下りて空色の瞳は閉ざされている。睫毛が呼吸に合わせてふわふわと揺れ、息はゆったりと繰り返される。どうやら眠ってしまったらしい。体調が悪いのに変な話をして申し訳なかった、と1人反省するが、先程までの流れを思い出す度に唇に残る柔らかな感触が邪魔をして、余計に熱を帯びてしまう。まるで離さないとでもいうかのような腕の回し方といい、約束と称して奪われた唇といい、なんだかんだ羅樹に愛されていたのだなぁと今更ながらに考える。
私はずっと、羅樹は私が心配だから付き合ってくれているのだと思っていた。
告白自体が私のうっかりという予期せぬ出来事から始まったことも手伝い、そしてその直前に私が色々と自分についてを疎かにしたのもあり、羅樹は私から目を離せないから口出し出来る権利を欲しがったのだと思っていた。
それが少し違うのではないかと考え直した先でも、私は間違えていた。
羅樹はずっと昔、私が俗に言う神隠しに遭ったところを見てしまったことをトラウマに、私という存在が消える可能性について何度も恐怖を感じて来たのだ。私が体調を崩して倒れた際にかなり取り乱したのも、1週間目覚めなかった時に酷く狼狽したらしいことも、私が"消える"可能性が脳裏に強く浮かんだからだろう。
稲荷様と恋音こいねのように、最優先の食い違いが私と羅樹の溝だと思っていた。
けれど、違った。そうではなかった。

私と羅樹は、ずっと昔から両思いだったらしい。

考えるだけで顔が熱くなり暴れ回りたくなるが、ここでそんなことをしたら羅樹を起こすこと間違い無いので自制する。
そう、これはきっと自惚れではない。あまりに急な出来事で、あまりに急な自覚だったから理解が追いついていないけれど、私はきちんと羅樹に恋愛感情で想われていたようだ。
私を連れて行ってしまう"何か"への嫌悪。
"何か"よりも自分を選んでほしいという願い。
実際に選ばせないという決意。
「…わっ……かりにく……」
それが独占欲だなんて、好き故の想いだなんて、誰が気付けるというのだろう。私が心の声を聞けなければ、きっとまた混乱していた。この力も悪くないかもな、なんて数分前と意見が変わってしまう。
「…好き、だよ。羅樹」
呟くと同時に欠伸が出て来て、他にやることもなさそうな私は全てを投げ出して眠りについたのだった。
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