神様自学

天ノ谷 霙

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3月18日 花は咲く

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大事を取って今日もお休みだ。割と定期的に休んでいるので出席日数が心配になるところだが、一応は足りている、と思う。人ならざるモノを目に映したり、その影響で体調を崩しやすかったりという点でも面倒なのに、見えなくなっても体調を崩すとは厄介な体である。
「…ん」
眠いような眠くないようなといった様子だが、歯磨きして布団に潜ったらまた眠気が襲って来た。そういえば前に澪愛みおう家のせん様の元で力をたくさん使った時には、その後1週間眠り続けたことで回復した。それなら今回ももしかしたら、と淡い希望を抱く。体を襲う異常な眠気が、軒並み稲荷様に持って行かれた力を回復するためのものだったら。また眠気が通常に戻った時には、私の視界はまた人ならざるモノを映すのではないか。そう、考えてしまう。
きっと普通の人からしたら異常な考えだろう。モノによっては、見るだけで心身に異常を来たしかねないモノもいたような気がするし、この身に宿る力を求めて殺されかけたこともある。そんな相手とまた関わりたいなんて、おかしな願いだろう。
けれど、私にとってそういったモノとの出会いは少なくて。勿論命の危機に瀕した時は自分の力を呪いたくもなったけど、でも私は今、生きているから。終わり良ければ全て良しと思っているわけではないけれど、私はその恐怖や痛みで稲荷様や恋音こいねさん達との繋がりを消したくはないから。
私が"恋使コイツカイ"であったからこそ動けたことが、たくさんあるから。
きっと心の声が聞き取れなかったら動けなかった。分からなくて、誤解して、もしかしたら羅樹の言うような"ヒーロー"の私が嫌いになっていたかもしれない。間違えて、仲違いして、全部失っていたかもしれない。
心の声が聞こえる、なんて少しズルのような気もするけれど、私は最初から音が聞けて、むしろそれが聞こえないことの方が異常事態で。私はその部分も全部ひっくるめて"私"だから、その部分だけ嫌うことなんて出来ない。
あぁ、思考が"晴れ"て来た。追い詰めていた。怖くて、"嵐"の中心にいるような気がして、"雨"の気配から逃げた私を責めていた。そうして取り返しの付かなくなった世界に、忘れ物を"雪"の中に隠されたような気がして、動けなくなっていた。
花は、咲く。
私の心にも、雪が溶けて、雨が降って、空が晴れれば、いつだって花は咲いてくれる。
何度も呼び寄せた心の花。私の花はどんな形をしていたっけ。どんな色で、どんな香りで、どんな言葉を秘めていたっけ。
思い出せない。けれど確かに知っている。
あれは私が───。

夢現の中に、確かに咲いていたのだから。
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