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15.我が輩は石である。世界を考察する石である。
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たまたま冒険者という人種が通りかかった。
ただ、それだけであった。
我が輩は石である。名前など有るはずが無い。
我が輩が河川の近くの石であったからか、水を飲みに来る動物を見掛けることは多々ある。
それが魔獣だろうが怪物だろうが大差が無い。
二足歩行に人間だけは、やはり特殊な存在に見えてしまうのは、何故であろうか?
万物には魂がある。
我が輩の存在を思考するに、この定義は崩しようが無い。
だが、石という物体である我が輩からみれば、人も動物も魔物も、等しく「生き物」である。
人間が特別に映る理由にはならないはずなのだ。
今回の思考は、異世界の生物について、である。
『異世界テンプレート』。
不思議な話だが、異世界の話など昭和の時代からいくらでもあったと記憶している。
群雄割拠の異世界王道ファンタジーから、ロボットみたいなものを召喚する異世界話もあった。
単純にまだ観ぬ世界をそれぞれの想像力で夢想し、生み出し、作品に昇華した。
いつの間にか、「死んだら異世界」というテンプレートが非常に多くなった。
別段、このテンプレートは『現実世界で元気に暮らしていた少年が異世界に召喚された』でも問題無いように思うが、このときはターゲットが”元気な少年層”だったからであろう。
詰まるところ、”今の社会に不平不満を抱きながらも何も出来ず社会の歯車として生きていくし無い貧困層”がターゲットとした場合、前述したキャラクターの方が思い入れが強くなる、と思われているのだ。
諸子諸兄諸君。勘違いするな。
死んでも待っているのは地獄だ。
もとい。それは我が輩のケースだけであった。
さて、近年の異世界ファンタジーでは、生まれ変わるか、転移するか、現実が異世界に浸食されるか、というテンプレートが決定されてしまった。
定番であるが、ファンタジーであろうが、SFであろうが、「ここはそういう世界です」と言われた言葉に、賢明な粗探しは必要なのだろうか?
物語として破綻した行動はともかくも、世界観は「はい、わかりました」で済ませてしまって良いだろうに。
木こりが一人出てきて、魔法で木を切り倒すだけで、異世界であると理解できる。
わざわざ「異世界!」と宣言する必要も「生まれ変わった!」と宣言するのもどうかと思う。
「私たち、俺たち、入れ替わってる!」は物語の台詞だから受け入れやすかったのかと考察する。
所詮、物語など、人間が夢想するのが「異世界」だ。
有るはずも無い世界に、一から十まで有るはずも無い定義を求めるのは、愚の骨頂。
あら探しは、すなわち、我が輩と同レベルということである。
ようこそ、地獄へ。
もとい。
異世界には、必ず人間以外の種族が存在する。
これはギリシャ神話や北欧神話等で語られた種族がほぼ全てであろう。
0から1を生み出すより、神話やゲームの敵のキャラクター、なじみのある種族を提案する方が説明の手間が省ける。
制作側の都合ということだ。
しかしながら。
仮に、我が輩の存在する世界ではどうなのだろうか?
生物の進化の歴史は、この世界にも無ければいけない。
そうでなければ、ある日突然全ての生物が生み出されたことになってしまう。
そう。
『ある日突然、生まれて』いなければ、現在の状況は説明が付かなくなるのである。
生物の進化とは環境に合わせるものだ。
ほぼ同一な環境、例えば森の中で、人間に属する存在だけが、人間としての進化を遂げるとは考えにくいのだ。
例えるなら、山の中ならば獣のような人間に進化するなら分かるが、知性と理性で生活するエルフのような存在が別に現れることなど、考えにくいのである。
この世界は、全てが魂に基づく地獄である、と定義している。
そして、我が輩のこの世界の命は、ある日突然始まったのである。
もし石として生まれ変わったのだとすれば、宇宙開闢の記憶が無ければいけないはず、と既に考察した。
それが、気付けば石、である。
となれば、この世界の始まりを推察していくと、まず器があり、次に魂が入ったのではないか?
これは先だって考えていたことであるが、まず、世界を生み出した創造神がいる、と定義する。
この創造神が世界を構築する器を生み出す。
それは大地であり、山であり、海であり、森であり、砂漠であり、石である。
次に生物の器を生み出す。
ドラゴンであったり、オークであったり、スライムであったり、人間であったり。
この器に、魂を移し込む。
魂魄が揃い、世界は魂の循環を持って動き出し、魂の宿った自然からは精霊が生み出され、生物はその種の生存本能と共に動き出す。
こうして、この世界は、世界として巡り始めた。
この推察が正解と仮定した場合、様々な種族が独自の生活を始めていることは当然と考えられる。
自分のもった肉体に即した生き方をするのは当たり前であるからだ。
そして、この考察が正しければ、我が輩をこの地獄に落としたのは、この世界を生み出した創造神であろう。
神よ、どうか目の前に現れろ。
石の中にも五分の魂というのを見せつけてやる。
見せるだけで何が出来るでも無い。
我が輩は石である。名前など有るわけが無い。
ただ、それだけであった。
我が輩は石である。名前など有るはずが無い。
我が輩が河川の近くの石であったからか、水を飲みに来る動物を見掛けることは多々ある。
それが魔獣だろうが怪物だろうが大差が無い。
二足歩行に人間だけは、やはり特殊な存在に見えてしまうのは、何故であろうか?
万物には魂がある。
我が輩の存在を思考するに、この定義は崩しようが無い。
だが、石という物体である我が輩からみれば、人も動物も魔物も、等しく「生き物」である。
人間が特別に映る理由にはならないはずなのだ。
今回の思考は、異世界の生物について、である。
『異世界テンプレート』。
不思議な話だが、異世界の話など昭和の時代からいくらでもあったと記憶している。
群雄割拠の異世界王道ファンタジーから、ロボットみたいなものを召喚する異世界話もあった。
単純にまだ観ぬ世界をそれぞれの想像力で夢想し、生み出し、作品に昇華した。
いつの間にか、「死んだら異世界」というテンプレートが非常に多くなった。
別段、このテンプレートは『現実世界で元気に暮らしていた少年が異世界に召喚された』でも問題無いように思うが、このときはターゲットが”元気な少年層”だったからであろう。
詰まるところ、”今の社会に不平不満を抱きながらも何も出来ず社会の歯車として生きていくし無い貧困層”がターゲットとした場合、前述したキャラクターの方が思い入れが強くなる、と思われているのだ。
諸子諸兄諸君。勘違いするな。
死んでも待っているのは地獄だ。
もとい。それは我が輩のケースだけであった。
さて、近年の異世界ファンタジーでは、生まれ変わるか、転移するか、現実が異世界に浸食されるか、というテンプレートが決定されてしまった。
定番であるが、ファンタジーであろうが、SFであろうが、「ここはそういう世界です」と言われた言葉に、賢明な粗探しは必要なのだろうか?
物語として破綻した行動はともかくも、世界観は「はい、わかりました」で済ませてしまって良いだろうに。
木こりが一人出てきて、魔法で木を切り倒すだけで、異世界であると理解できる。
わざわざ「異世界!」と宣言する必要も「生まれ変わった!」と宣言するのもどうかと思う。
「私たち、俺たち、入れ替わってる!」は物語の台詞だから受け入れやすかったのかと考察する。
所詮、物語など、人間が夢想するのが「異世界」だ。
有るはずも無い世界に、一から十まで有るはずも無い定義を求めるのは、愚の骨頂。
あら探しは、すなわち、我が輩と同レベルということである。
ようこそ、地獄へ。
もとい。
異世界には、必ず人間以外の種族が存在する。
これはギリシャ神話や北欧神話等で語られた種族がほぼ全てであろう。
0から1を生み出すより、神話やゲームの敵のキャラクター、なじみのある種族を提案する方が説明の手間が省ける。
制作側の都合ということだ。
しかしながら。
仮に、我が輩の存在する世界ではどうなのだろうか?
生物の進化の歴史は、この世界にも無ければいけない。
そうでなければ、ある日突然全ての生物が生み出されたことになってしまう。
そう。
『ある日突然、生まれて』いなければ、現在の状況は説明が付かなくなるのである。
生物の進化とは環境に合わせるものだ。
ほぼ同一な環境、例えば森の中で、人間に属する存在だけが、人間としての進化を遂げるとは考えにくいのだ。
例えるなら、山の中ならば獣のような人間に進化するなら分かるが、知性と理性で生活するエルフのような存在が別に現れることなど、考えにくいのである。
この世界は、全てが魂に基づく地獄である、と定義している。
そして、我が輩のこの世界の命は、ある日突然始まったのである。
もし石として生まれ変わったのだとすれば、宇宙開闢の記憶が無ければいけないはず、と既に考察した。
それが、気付けば石、である。
となれば、この世界の始まりを推察していくと、まず器があり、次に魂が入ったのではないか?
これは先だって考えていたことであるが、まず、世界を生み出した創造神がいる、と定義する。
この創造神が世界を構築する器を生み出す。
それは大地であり、山であり、海であり、森であり、砂漠であり、石である。
次に生物の器を生み出す。
ドラゴンであったり、オークであったり、スライムであったり、人間であったり。
この器に、魂を移し込む。
魂魄が揃い、世界は魂の循環を持って動き出し、魂の宿った自然からは精霊が生み出され、生物はその種の生存本能と共に動き出す。
こうして、この世界は、世界として巡り始めた。
この推察が正解と仮定した場合、様々な種族が独自の生活を始めていることは当然と考えられる。
自分のもった肉体に即した生き方をするのは当たり前であるからだ。
そして、この考察が正しければ、我が輩をこの地獄に落としたのは、この世界を生み出した創造神であろう。
神よ、どうか目の前に現れろ。
石の中にも五分の魂というのを見せつけてやる。
見せるだけで何が出来るでも無い。
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