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VSミーシャ・センチュリオン
しおりを挟む《こちら重巡洋艦サンファイア、沿岸砲台を砲撃により破壊せり! 上陸部隊は所定11:30に上陸開始されたし》
アクエリアス岩壁上に設置された大砲を、王国海軍の艦隊はその主砲でもって攻撃していた。
飛翔魔法を使った魔導士の正確な弾着観測により、市街やコロシアムに流れ弾を出さずにネロスフィアを圧倒していたのだ。
「感謝するサンファイア、各揚陸艇は発進開始せよ。魔導士による上陸支援も怠るな」
オーバーロード作戦を指揮するのは、王国海軍の強襲揚陸艦レッドフォートレス。
司令部機能の他、大量の兵力を投射する能力を持った、魔法王国ストラトスフィアが誇る巨艦だ。
「作戦は予定通りですね。あとは空挺部隊がコロシアムで耐えている友軍と合流できれば......」
レッドフォートレスの艦橋要員が、航跡で海を染める揚陸艇群を見ながら呟く。
「ああ、だが――――」
レッドフォートレスの艦長は、いぶかしげに顎を撫でた。
「連中の目的がどうもハッキリせん。引き続き警戒を厳とし、万が一に備えよ」
「はっ!」
艦橋からアクエリアスを見れば、強い閃光が何度も発生していた。
――――誰かがあそこで戦っているのか......。
◇◇
「『ヘルファイア』!!」
大通りが灼熱の火炎に飲み込まれる、波のようなそれを高架橋に飛び移ることで回避したわたしは、水上列車用のレール上で剣を構え直した。
「くッ!」
さすがに強い、ミーシャの実力は先の魔導士2人を優に超えてる! けど――――負けるわけにはいかない!!
「はああぁぁぁ――――――――――――ッ!!!!」
レールに上がったミーシャへ再び距離を詰め、炎剣相手に猛烈な連撃を仕掛ける。
――――まだ足りない! もっと速くッ!! 動けッ動けッ動けッ!!
その身を焦がしてでも剣を振るうんだ!!
激しい応酬、剣舞のような打ち合いが水上都市にこだます。
ミーシャのガードが崩れた瞬間、わたしは左手に魔力を集中させた。
「『レイドスパーク』!!」
シルカ戦で得た上位攻撃魔法、膨大な電撃を至近距離で放つが、しかしミーシャも同様に炎で防壁を展開した。
1メートル未満で互いの魔法がせめぎ合う。
「なぜこんなことをするの!?」
「なぜ? わたしたちを緩衝材にしか思わない自治政府、迫害者である人間と魔王軍へ思い知らせてやるんだ! ここにある"兵器"を使って!!」
雷炎が弾け、再びつばぜり合いに移行した。
「わたしたちは、この地に眠る古代王国の戦略兵器を復活させる!! 迫害主義者どもを震え上がらせてやるんだ!!」
ミーシャの持つ炎剣が、感情に呼応するように一層燃え上がった。
「日なたで身を振れない民族もこの世にはいるッ! 1000人の他人が幸せになって、大切な1人が涙を呑むのなら! わたしはその1000人から幸せを奪うッ!!」
「あなたの正義は理解できる! でもわたしはそれを受け入れられないッ!!」
「なぜだ!! 肝心の人が幸せになれないなら意味がないじゃないッ!! またお前ら国はそうやって少数の者たちを切り捨てるのか!!!」
距離を取ったミーシャが剣を橋に突き刺す。
「あまねく光焔を甘受せん! 主は灼熱の矢を授けられよ!」
間違いない、クロエの『マジックブレイカー』ですら完全には防げなかった魔法。
だけど逃亡など選択になかった、ネロスフィアを引き付けてくれている中佐たち、なによりクロエに合わせる顔がない!
「吹き飛べッ!!」
豪炎でできた矢が引かれる。
よく見るんだ、全神経を集中して、放たれる瞬間を!
「――――『フレイム・ストラトスアロー』!!!」
一気に前進、残された魔力を全て左手に集中し、全身全霊の『レイドスパーク』を高架橋へ叩き付けた。
「なにッ!?」
崩れる足場、穿たれた矢の射線から爆発で弾むように空中へ逃れたわたしは、こちらを見上げるミーシャへ飛び掛かった。
「はああッ!!」
炎剣を弾くと、ミーシャの喉元へ剣先を突き付ける。
「これで終わりよ、あなたが列車で戦った黒髪の騎士の場所を教えて!」
だが、彼女は不気味に微笑むと、紅目でわたしを見た。
「一歩遅かったわね――――」
直後、かなり大きな揺れがアクエリアスを襲った。
戦闘に巻き込まれて破損した建物なんかは次々と崩れ、わたしの立つ高架橋にもいくつかヒビが入る。
10秒ほどして揺れが収まると、街の上空には1つの眩しく光る球体が浮遊していたのだ。
その大きさはかなりのもので、コロシアム会場に匹敵していた。
「ルナクリスタルの調達と囮、ご苦労だった。約束どおり『エーテルスフィア』を起動したぞ」
奥底から冷えるような声、ミーシャの後方に、美しい銀髪の男が立っていたのだ。
知っている、わたしの記憶があの日を、1年前に全てを決定づけた男を思い出させた。
『――――言った通りだティナ・クロムウェル。まだ12歳の上、クラスレベル20程度の下級冒険者にダンジョンへ挑む資格など無い』
シルカ、アリアと同じわたしがいた元パーティーのリーダー。
時間と努力を奪い去り、ゴミのように掃き捨てた男――――
「1年ぶりね......"ベルクート"リーダー」
どうせ使い捨てたヤツの顔なんて覚えていないのだろう、ミーシャの後ろから歩いてきたベルクートはさらに続けた。
「ミーシャ、君の目的はあのエーテルスフィアの魔導砲で、亜人自治政府や人間、魔王軍を根こそぎ吹っ飛ばす――――っという"脅し"がしたかったんだろう?」
「そうよ、わかってるんだったら早く声明を出して。わたしが死んでも、それさえできればアラル村の現状を変えられる」
脅し......、もしかして実行するつもりはないってこと?
もしそうなら早く軍に伝えないと、でもなんでベルクートはわたしの前で――――
「つまらないなあ」
瞬間、ミーシャの細身を背中から大柄のナイフが貫いた。
「かはっ......!?」
ミーシャの可憐な顔が苦痛に歪み、真っ赤な血が彼女の上着やホットパンツを染めていった。
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