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 僕・:蕪木雪緒(かぶらぎゆきお)の朝は少しだけ早い。

 瞬きを繰り返すことで目が覚めると、手探りでサイドボードに置いてあるスマホを取りアラームが鳴る前に止める。

2分前か…。

5時にセットしていたアラーム。
 それが鳴る前に起きる事が出来てホッと安堵する。

「んん~」

「!!」

 隣から聞こえた唸り声にドキッとして見ると、男らしい整った顔がこちらへと寝返りを打った所だった。

 起きて無いよね?

 僕は息を殺して様子を窺う。
 どうやら目は覚めてはおらず、まだ幸せな夢の中に居るみたいで安心した。
 アラームで早くに起こすのは可哀想だ。

 隣で寝ていたのは、カッコよくて可愛いくて愛しい僕の弟・:正国(まさくに)・・・まぁくんだ。
 
まぁくんは僕より3つ年下の弟で、高校3年生。
背だって僕より高いし体格だっていいのに、とっても甘えん坊なんだ。
 特に今は思春期で1番多感な年頃のせいなのか拍車が掛かっているみたいで、寂しいと言ってここ数日一緒に眠りたがっている。

でもそれも仕方ないんだ。

実をいうと、僕たちの家は父子家庭だ。
僕たちが小学生の頃、お母さんが病気で天国へ旅立ってしまった。
当時は本当に悲しくて悲しくて泣いていたけれど、気がついたら弟であるまぁくんの方が先に泣き止んで逆に僕を慰めてくれたんだ。
そのお陰で僕は前を向いて立ち上がることが出来たし、こうして今穏やかに過ごせている。

あの日から僕の心の安寧にまぁくんは必要不可欠になってしまい、立派な社会人として自立させなければという使命感に駆られて生きてきたんだ。

まぁくんの事は僕が絶対に育て上げてみせるよ!
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