桜の若木

櫟 真威

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灯りを落とすと窓からの僅かな月光しか光源がない。
それでも彼の顔がわかるのは、記憶の補正というものかもしれない。

浴衣の裾をはだけさせ、足を恥ずかしい格好で広げなくてはならない苦行には、やはり慣れない。
痛みが和らいできたのが幸いだ。
熱いもので身体の中心を貫かれる瞬間、おかしな声が出てしまう。
突き上げられる度に身体が揺れ、息が乱れる。
一度その振動で枕から頭が落ちたことがある。
それからは彼は頭を抱えるように抱き込んでから突き上げるようになった。
石鹸の香りがする。
男の人が頭も石鹸で洗うと、結婚してから知った。
シャンプーやリンスがないなと不思議に感じ、聞いてみたのだ。
私がよそ事を考えているのを知られてしまったのか、彼が少し乱暴に突き出した。

「ふぁっ」

また変な声が出てしまった。

「いくぞ」

最後に差し掛かると、彼はいつも教えてくれる。
心の準備ができるように、との配慮なのだろう。
初心者には先行きがわからないので、これはありがたい。
吐精した彼は私に覆い被さったまま息を整える。
汗が滴っている。
なんとなくその汗を浴衣の袖で拭うと、彼は少し笑って額に唇を落としてくれた。
儀式はそれで終わり、彼は汗を流すために浴室へいく。
私は寝返りを打つ。
乱れた浴衣を直す。
彼は、私を気に入ってくれているだろうか。



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