桜の若木

櫟 真威

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私が彼と結婚して一ヶ月が経とうとしている。
お見合いだった。


従姉妹から余所行きの着物を借り、髪も頑張って結って臨んだ。
ちんどん屋さんか七五三か。
姉はからかう。

「こうでもしないとさ、あんたなんて結婚自体無理でしょ。
恋人もいたことないんだから」

五つ離れた姉は私の先行きをいつも心配してくれる。
白粉をあんまりはたかれるので目鼻が消えるのではないかと危惧したほどだ。
以前母から料理を教わっていた時も横からああでもないこうでもないとアドバイスをくれた。

「だってこの子ったら、三杯酢ってお酢を水で三倍に薄めるんだって思ってたのよ」

五歳の頃の過ちを成人しても云われ続けるのは、何の罰ゲームなのか。
姉は大蔵省のエリートと結婚し、世間から見ても順風満帆だ。
だから不出来な妹の行く末が心配なのだろう。
彼は銀行員、真面目な仕事ぶりから叔父経由でお話しが来た。
写真を見たとき、姉は絶句していた。
そんなに美丈夫様なのかと覗いたら、普通の男性だ。

「これは、熊ね」

熊。
お姉様、この方は人間に見えますが。

「本物が楽しみね」

そして姉は本人よりも豪奢な着物で見合いに付き添ってくれた。
彼が姉を好きになったらどうしよう、と本気で心配した。

兄と姉は母に似て、人目を引く容姿をしている。
日本人にしてはすらりと背が高く脚長だ。
私は父方の祖母に似ているらしく、目は二重でぎょろりとし、背が低い。
三人並ぶとどうしても私だけきょうだいに見えない。
器量が悪い分中身を磨けと、母からの躾は厳しかった。
だからこそ、と思う。
旦那様になる方に不自由させないように、妻の勤めをがんばると。

「やっぱり熊だったわね。
あんたに似合いよ」

帰り道、姉は一人で満足している。
そして彼はやはり、姉だけを見ていた。
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