5 / 12
5
しおりを挟む
姉は家の中をざっと見て回り、必要なものを書き出していく。
板間のお勝手に居間の八畳、寝室にしている六畳と日当たりのよい四畳半。
猫の額の庭に物干し竿がある。
庭には前の住人が植えた桜の若木がある。
花をつけるかどうかはわからない。
塗れ縁から庭を眺めながら、家電も最新を買い揃えてやる、と豪気な発言をする。
私は新しいものに弱い。
「いいの、要らない」
「あればあったで便利よ。
近代文明に触れなさい」
「でも、使いこなせなかったら」
「そうしたらマサタケに教わればいいじゃない。
機械に強いわよ」
「え」
あまりに自然に、姉の口から彼の名が出た。
私は固まる。
姉もさすがにまずいという顔をした。
「し、知り合い、なの…?」
姉は頭に手をやり、美しくセットされた髪をくしゃりと揉んだ。
言葉を選んでいるようにも見える。
「昔、親しかったの」
室内が暗くなったような気がした。
私はその場にぺたりと座る。
「や、でも、今はあんたが妻なんだから、何も余計なこと考える必要はないのよ。
優しいんでしょう?」
親しい。
親しいって、どのくらい。
言葉は曖昧だ。
嫌な想像ばかりが膨らんでゆく。
「商店街に電気屋あったわね。
そこに頼んでおくから」
姉は来た時とは反対にそそくさと帰っていった。
板間のお勝手に居間の八畳、寝室にしている六畳と日当たりのよい四畳半。
猫の額の庭に物干し竿がある。
庭には前の住人が植えた桜の若木がある。
花をつけるかどうかはわからない。
塗れ縁から庭を眺めながら、家電も最新を買い揃えてやる、と豪気な発言をする。
私は新しいものに弱い。
「いいの、要らない」
「あればあったで便利よ。
近代文明に触れなさい」
「でも、使いこなせなかったら」
「そうしたらマサタケに教わればいいじゃない。
機械に強いわよ」
「え」
あまりに自然に、姉の口から彼の名が出た。
私は固まる。
姉もさすがにまずいという顔をした。
「し、知り合い、なの…?」
姉は頭に手をやり、美しくセットされた髪をくしゃりと揉んだ。
言葉を選んでいるようにも見える。
「昔、親しかったの」
室内が暗くなったような気がした。
私はその場にぺたりと座る。
「や、でも、今はあんたが妻なんだから、何も余計なこと考える必要はないのよ。
優しいんでしょう?」
親しい。
親しいって、どのくらい。
言葉は曖昧だ。
嫌な想像ばかりが膨らんでゆく。
「商店街に電気屋あったわね。
そこに頼んでおくから」
姉は来た時とは反対にそそくさと帰っていった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる