1 / 1
罰ゲームという名のデート
しおりを挟む
隣町にレンタルビデオのショップが開店したと聞いたのは先週。
学生証の提示が必要らしいが未成年でも利用できるらしい。
詰襟に身を包んだ二人が訪れたのはその店の前。
「って、なんで記念すべき初利用がこんな用事なんだ」
イチは照れからか恥ずかしさからか顔を赤くして抗議している。
いつも冷静な、なんでもできますって顔をしているイチの、そんな顔を見るのはたまらなく嬉しい。
「でも負けたのは事実だしな。
負けたら罰ゲームってのも約束だしな」
俺が楽しそうに言うと、イチは唇を尖らせて黙った。
唯一、俺の勝てる競技。
将棋。
というか、ギリギリで勝てたので、次回からはわからない。
ルールを覚えると、こいつは早い。
「……ほんとに行かなきゃだめか」
「ああ、もちろん。
恥ずかしいからって、他のビデオで隠しながらってのはなしだ。
ちゃんと一本だけ借りてこい」
イチはしばらく躊躇っていたが、思い切ったように店へ入っていった。
借りてきたら俺の家で鑑賞会だ。
幸い両親は仕事でいない。
音量を気にするほどの都会でもない。
「…女の好みが一致してたら言うことないんだが」
不思議なことに、色恋についての話題は二人の間に上がったことはなかった。
なので、どんないやらしいやつを借りてくるか、期待半分、というところか。
「二人で何やってるのかと思ったら」
ガードレールに腰掛けてイチを待っていると、背後から柴田に声をかけられた。
こいつ、いつから聞いてた。
「真面目なイチイにとんでもないことさせるな。
ブッチャーにばれたらどうなるか」
「お前が口をつぐめばいいだけだよ。
何しにきた」
「俺だって観たい」
男の欲望はわかりやすい。
しかし、イチと二人きりと言うところに意味がある。
「お前は自分で借りろよ。
これは俺とイチの勝負だ」
「あのカーテンの向こう、なんて行く度胸ねぇよ。
イチイにもハードル高いだろうに」
「それ以上に約束を破れない真面目さがな」
店内からイチが出てきた。
ショップの青い袋を抱えている。
こちらへまっすぐ駆け寄ってくる。
俺は両手を広げてイチを受け止めようとして、青い袋を押しつけられた。
「やーもう勘弁。
ほんと恥ずかしいわ。
二度とやりたくねー」
「イチの好みはどんなんだ?」
俺が袋の口を少し広げると柴田が覗き込んでくる。
俺は隠そうとし、柴田は取り出そうとし、しばし二人で悶着する。
「あん○んまん……?」
「いい歳して子供アニメ、かなり勇気要るわ。
こういう度胸試しってのもあるんだな。
でもほんと恥ずかしいー」
羞恥ゆえの大声で大股で、イチは俺の家へ向かっている。
ビデオを見た俺と柴田が固まっているのに気づく様子はなかった。
「お前、イチイになんて言ったんだ?」
「恥ずかしいビデオ借りてこいって…」
どっとはらい。
学生証の提示が必要らしいが未成年でも利用できるらしい。
詰襟に身を包んだ二人が訪れたのはその店の前。
「って、なんで記念すべき初利用がこんな用事なんだ」
イチは照れからか恥ずかしさからか顔を赤くして抗議している。
いつも冷静な、なんでもできますって顔をしているイチの、そんな顔を見るのはたまらなく嬉しい。
「でも負けたのは事実だしな。
負けたら罰ゲームってのも約束だしな」
俺が楽しそうに言うと、イチは唇を尖らせて黙った。
唯一、俺の勝てる競技。
将棋。
というか、ギリギリで勝てたので、次回からはわからない。
ルールを覚えると、こいつは早い。
「……ほんとに行かなきゃだめか」
「ああ、もちろん。
恥ずかしいからって、他のビデオで隠しながらってのはなしだ。
ちゃんと一本だけ借りてこい」
イチはしばらく躊躇っていたが、思い切ったように店へ入っていった。
借りてきたら俺の家で鑑賞会だ。
幸い両親は仕事でいない。
音量を気にするほどの都会でもない。
「…女の好みが一致してたら言うことないんだが」
不思議なことに、色恋についての話題は二人の間に上がったことはなかった。
なので、どんないやらしいやつを借りてくるか、期待半分、というところか。
「二人で何やってるのかと思ったら」
ガードレールに腰掛けてイチを待っていると、背後から柴田に声をかけられた。
こいつ、いつから聞いてた。
「真面目なイチイにとんでもないことさせるな。
ブッチャーにばれたらどうなるか」
「お前が口をつぐめばいいだけだよ。
何しにきた」
「俺だって観たい」
男の欲望はわかりやすい。
しかし、イチと二人きりと言うところに意味がある。
「お前は自分で借りろよ。
これは俺とイチの勝負だ」
「あのカーテンの向こう、なんて行く度胸ねぇよ。
イチイにもハードル高いだろうに」
「それ以上に約束を破れない真面目さがな」
店内からイチが出てきた。
ショップの青い袋を抱えている。
こちらへまっすぐ駆け寄ってくる。
俺は両手を広げてイチを受け止めようとして、青い袋を押しつけられた。
「やーもう勘弁。
ほんと恥ずかしいわ。
二度とやりたくねー」
「イチの好みはどんなんだ?」
俺が袋の口を少し広げると柴田が覗き込んでくる。
俺は隠そうとし、柴田は取り出そうとし、しばし二人で悶着する。
「あん○んまん……?」
「いい歳して子供アニメ、かなり勇気要るわ。
こういう度胸試しってのもあるんだな。
でもほんと恥ずかしいー」
羞恥ゆえの大声で大股で、イチは俺の家へ向かっている。
ビデオを見た俺と柴田が固まっているのに気づく様子はなかった。
「お前、イチイになんて言ったんだ?」
「恥ずかしいビデオ借りてこいって…」
どっとはらい。
0
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
狂わせたのは君なのに
一寸光陰
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。
完結保証
番外編あり
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる